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ホンダ F1テクニカルディレクター 田辺豊治氏、F1メキシコグランプリや来年のF1日本グランプリに向けて語る

ホンダ F1テクニカルディレクター 田辺豊治氏

 10月11日~13日の3日間にわたり、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で行なわれた「2019 FIA F1世界選手権 シリーズ第17戦 日本グランプリレース」。台風の接近に伴い12日(土)実施予定の予選が13日(日)になり、ワンデーのレースとして開催された。

 今シーズンすでに2勝を挙げているホンダのホームグランプリということで、ホンダエンジンを搭載するマックス・フェルスタッペン選手(33号車 アストンマーティン・レッドブル・レーシング)、アレクサンダー・アルボン選手(23号車 アストンマーティン・レッドブル・レーシング)、ダニール・クビアト選手(26号車 スクーデリア・トロロッソ・ホンダ)、ピエール・ガスリー選手(10号車 スクーデリア・トロロッソ・ホンダ)の活躍に期待が集まったが、結果は既報のようにアルボン選手が4位、ガスリー選手が8位に入賞。フェルスタッペン選手は1周目の接触によりリタイアとなってしまった。

 レース後、ホンダ F1テクニカルディレクター 田辺豊治氏が会見を行ない、日本グランプリ、今週開幕したメキシコグランプリ、そして来年の日本グランプリについての見解を語った。


──F1日本グランプリのレース展開について

田辺氏:台風で12日の走行がキャンセルということで、台風がいってしまえば13日はよい天気になるだろうということでしたが、快晴には恵まれしました。ただ、ちょっと風の強い1日だったかなと思います。予選のほうも風が心配されましたが行なわれ、それに続いて本戦という形で。風にあおられて予選早々にクラッシュするクルマとかありましたけど、ほぼ全車が予選で大きなトラブルもなく、そのまま午後は決勝レースということで、みなさまの前でレースができたのがよかったかなと思っています。

田辺氏:我々のほうですけど、フェルスタッペン選手が1周目の接触からかなり不具合、大きなダメージを受けてしまい、そのまま走り続けるにはまったく戦闘力のない状況になってしまったため、リタイアせざるを得なくなってしまったのが残念です。アルボン選手に関してはスタートでホイールスピン過大でポジションを落としたのですが、その後、力強いというかきちんと走りまして4位ということで、現在の我々の力は出せたかなという状態です。

田辺氏:トロロッソのクルマに関しては、クビアト選手がスタートでちょっとトラブルがあって遅れて、そのままなかなか前へ出られない状況と、チームプレイの中でああいうポジションで終了したのは残念でした。ガスリー選手が、土曜日のセッションがない中、予選、レースにうまくセットアップを合わせて8位入賞ということで。今年は4台完走、4台入賞と何度も言っているのですが、今日は3台完走、2台入賞と、マックス選手にとっては非常に残念なレース、ホンダにとってもホームレースで残念な形になりました。ですが、総じていうと、我々の実力の中の持てる力を出せたレースだったかなと思います。

──先ほど持てる力を出せたという話がありましたが、スタート直後のマックス選手とルクレール選手の接触がなければ、表彰台は立てたと思いますか?

田辺氏:そうですね。すべて“たられば”なのですが、おっしゃるようにできていれば素晴らしかったなと思います。

──今回のレースでは新型の燃料が話題になりました。レースペースを新型燃料で走って目的どおりのパワーは出せましたか? それとも足りなかったですか?

田辺氏:きちんとテストで得られた結果レベルの効果は認められました。相対的に言って、パフォーマンスとして、対2チームに対して十分かと言われると、燃料だけのせいではありませんが、一助にはなっていると。ただそれでも、まだまだ足りませんね、ということですね。

──予選がワンデーであったのですが、フェルスタッペン選手がパワーロスとか、ボタンが押せないとか。Q3でトップとちょっと差があったのですが、Q3はどういう状況だったのでしょうか?

田辺氏:ボタンの件は、チーム側のブーストボタンという言い方をすると、なんとなくパワーが上がるように感じますが、全然関係ないです。それが働かなかった。それともう1つ、「パワーダウン」と言って私もびっくりしたのですが、ちょっとデプロイが切れた形(あるシステムの動作がうまくいかなかった)になりまして、そこはセッティングし直しました。

──Q3に向けて?

田辺氏:Q3は問題なしです。ちょっとしたことでしたけど、若干タイムを失うような形だったのですが。Q3は問題なく設定しています。Q3のフェルスタッペン選手の走りに関していうと、2セット目に関して「クルマのバランスが急に変わった」というような話をしてました。それで思うようにタイムを伸ばせなかった。通常はQ3の2回目ではタイムを上げてくるのですが。上がらなかったのは、バランスがわるかったと。急に変わったのでタイムが上がらなかった。

──対フェラーリ、対メルセデスというところで、この数レースで変わってきたところはありますか?

田辺氏:夏休み明けからフェラーリが明らかにスピードを増しているのを感じています。メルセデスに関しては、今までどおり速くて、レース全体を通してのタイヤのデグラデーションを含めて、ストラテジを含めて非常に王者としての強さを維持しているなと思います。

──それに対して、レッドブル、ホンダに足りていない部分というのは。パワーもそうなのでしょうが。

田辺氏:足りてない部分。予選の速さと、レースの速さです。

──それを手に入れるためには、何が必要なのでしょうか?

田辺氏:PUのパフォーマンスアップと、車体パフォーマンス。パッケージとしてのパフォーマンスアップが必要と思っています。

──シーズン前半に2勝を挙げてよい流れになったように見えたのですが、シーズン後半になって少しまた変わってしまったという感じですか?

田辺氏:我々もオーストリアで結果を得られた。オーストリアでクルマがよくなったというところもあって、トップに追いついてきたなと。ただすべての条件がうまく重なって、それがうまく回ったときに優勝という形に結びつけられたのですが。そういう意味ではまだまだだと思っていました。前半戦も。

 後半戦になって夏休み明けから各社当然戦いはまだ半分というところで、アップデートを入れてきたなか、我々のアップデートがもともと届いていないところで彼らがアップデートを入れたというところで、そのギャップがもう1回開いてきたのかなと思っています。

──後ろからマクラーレン辺りが追いかけてきているのですが、怖くないですか?

田辺氏:マクラーレンに限らず、どこも開発を続けながらアップデートし続けていますので、みんな怖いですね。

──次戦のメキシコグランプリは日本と気候が違って燃焼に厳しいサーキットになるのですが、何か打つ手は考えられていますか?

田辺氏:メキシコは高地になり、空気が薄く、冷却性に難があるというか冷却に厳しいところなのですが、とくに燃焼を、空気が薄い分ターボの仕事が多くなるところに対しては、我々はキャリブレーションのほうをスペシャルで作って対応しています。毎年ですけど。

──それがあれば他社に対してアドバンテージとして働きますか?

田辺氏:いや、それは他社も同じことをやっていますので。ただ、どこまで余裕を見てターボを作っているとかで、多少変わってくると思うのですが、私たちにアドバンテージがあるかといわれると、我々としては判断できないですね。

──今年の日本グランプリは、台風などのキャンセル日もありながら、去年を上回る観客が来られているのですが、そのファンの方へ向けてのメッセージと、来年へ向けてどんなレースをして戻ってきたいと思っていますか?

田辺氏:金土日、みなさんにきちんと見ていただきたかったのですが、台風には勝てないということで、安全を見て、昨日(土曜日)は中止にしました。土曜日のない分、日曜日は予選・レースの1パックで楽しんでいただけたかなと。せっかく来ていただいて、多くの方から本当に「がんばってください」と声をかけていただいたのですが、その期待の高さ、その多くの期待に応えられなかったのは大変申し訳ないと思っています。

 これが、現在の我々の実力ということで、それに対して来年はというのは、当然もっと強くなって帰ってきたいと思っています。なので、来年もぜひみなさんに来ていただきたい。また、より多くの方に来ていただきたいなと思っています。


 田辺氏は会見の後、「来年の台風の予定は?」とぼそっとつぶやくなど、台風で1日キャンセルとなり、来場客にホンダのパフォーマンスをたくさん見てもらえなかったのが若干の心残りのようだった。

 日本グランプリの次戦となるメキシコグランプリは、田辺氏も述べているように高地で行なわれるグランプリとして知られており、田辺氏によるとターボの余裕、どれだけターボに余力があるかがポイントとなるようだ。

 メキシコグランプリは今週末行なわれ、北米での開催となるので時差の関係で予選は日本時間で27日(日)3時から、決勝は28日(月)4時10分からとなる。