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東海大学、準優勝で終えた「2019 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」を報告
2019年11月1日 14:54
- 2019年10月31日 開催
東海大学は10月31日、準優勝したソーラーカーレース「2019 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」の報告会を東京都渋谷区の東海大学代々木キャンパスで開催。10月13日~20日に行なわれたレースの様子などが発表された。
2019 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジは、オーストラリア北部のダーウィンから南部のアデレードまでの3020kmを、太陽電池を電源としたソーラーカーで約5日間をかけて走破するレース。優勝はベルギーのルーベン大学で平均速度は86.6km/h。2位の東海大学は平均速度86.1km/hで時間にして12分ほど遅れたにとどまった。
東海大学は東海大学チャレンジセンター・ライトパワープロジェクトソーラーカーチームとして参加。レースカーは2019年型の「Tokai challenger」で、ボディは東レの炭素繊維トレカ「M40X」を使い、東レ・カーボンマジックがボディを製作した。サイズは4970×1200×1000mm(全長×全幅×全高)でホイールベース1700mm、トレッドは610mm。車両重量は推定140kg
過酷なレースで好成績をあげたことを称賛
報告会では東海大学副学長の梶井龍太郎氏が「今回はなかなか難しいのではないかと関係者が言っていまして、大学としてはプレッシャーをかけていたわけですが、最終的には準優勝。あともう一歩で優勝だったなあ」と準優勝をたたえた。
東海大学チャレンジセンターの活動については「大会で勝つということが目的ではなく、学生がプロジェクト活動を通して、人間の生きるチカラを学んでほしいという、そういう思いで作られたセンター。今回は大きなアクシデントがあったと聞いているが、それを乗り越えて、他チームが脱落していく中、最後まで勝ち残ったのは彼の強い気持ちが実を結んだのかなと思う」と述べた。
東レ 複合材料事業本部 トレカ事業部門産業材料事業部 産業材料販売第一課長の井上将人氏は「ソーラーカーは当社が最重要と位置づけているグリーン・イノベーションの好例でもあり、極限の追求の実例ということで炭素繊維素材の性能をフルに発揮できる場」と説明した。
2019年のクルマに採用したトレカM40Xという素材については「強度と弾性率を極限まで高めることを追求し、従来の炭素繊維と同等の弾性率を保ったまま強度を30%向上。このM40Xを使うことで軽量化に大きく貢献できた」とした。
タイトルスポンサーでもあるブリヂストンからは、ブランド戦略コミュニケーション本部 主任部員 牛窪寿夫氏が「前半は非常にハイスピード、しかし後半は、横転でリタイヤ、炎上してしまうクルマもあって過酷なレース。チャレンジャークラスでは27台出走して完走はたった11台」と振り返った。
供給するタイヤ「ECOPIA with ologic」については「今回の大会では32チームにタイヤを供給。東海大学では2015年から開発に協力いただき、さまざまな貴重なアドバイスをいただいた。今回の素晴らしい結果にわれわれのタイヤが少しでも貢献できたなら、非常に幸せ」と語った。
牛窪氏は今後について触れ「ワールド・ソーラー・チャレンジという、未来社会のクルマ造りに向けて学生エンジニアの方々の環境技術への挑戦を支援することは、まさにわれわれにとって非常に大切なプロジェクト」とし、「東海大学ソーラーカーチームをサポートし応援したい」とした。
低効率のシリコン太陽電池ながら2位。横風にも強い車体
レースの様子は、総監督の工学部電気電子工学科助教の佐川耕平氏と、学生代表で工学部動力機械工学科4年次の武藤創氏が行なった。
佐川氏は上位でゴールした車両の一覧を示し、まず太陽電池の違いを指摘した。上位のチームでは人工衛星などに使う高効率で高価な化合物半導体太陽電池を使っているが、東海大学は一般的に使われて入手しやすいシリコンの太陽電池を使っている。「シリコンは発電量が低く、使用面積も大きくなるため車体も大きくなる状況で参戦している」と不利な状況ながらの2位は「大きな結果」と強調した。
高効率な化合物半導体太陽電池を使うチームがある中、シリコン太陽電池を採用する理由は価格差5~6倍というコストのほか、化合物半導体太陽電池が軍事技術に転用可能な戦略物質のため、日本では入手できるものの限らた国でしか入手できないという事情から。誰でも安価に入手できる電池を活用してどこまでの順位を獲得できるか、という技術的チャレンジをしたためだという。
また、今回のレースは後半で横風に悩まされたチームが多く、転倒など大きな損傷を受けたチームもあった。東海大学のクルマは90km/h以上で走行しても安定していたとし、車体については「車体が大きくなる中、参加の全車体の中で4番目の軽さ。大きいにも関わらず18%の軽量化に成功している。横風にも強く、設計でも横風対策に取り組んだ」とした。
学生代表の武藤氏はレースの経過を報告。レースの本戦前にサーキットで走行順を決めて6番目からのスタート。予選では1位を狙っていないものの、レース中は追い抜きなどで走行順は早いほうが有利なため、よいポジションでのスタートだったと振り返った。
レース期間中は5日間が晴天で、雲が出るのも走行終了時刻の17時以降で「雲をかわすレース」だったとし、その一方でソーラーカーはキャノピー内の暑さも過酷で、走行後はフロアに3センチほどの汗の水たまりができるほどだったという。
横風に対する強さは武藤氏も指摘。4日目は強風で横転したクルマがあったことで、大会側から一時的に80km/hのスピード制限が行なわれたが、それまで東海大学のクルマは90km/hほどで安定して走行していたため、80km/h制限は残念だったとした。天候に関しては日本に待機したチームが雲の動きなどを計算して連絡してくる体制を整えたため、いいレース展開ができたとした。
また、レースの展開は6位からスタートしたが、安定して走行する中で上位チームが脱落、ぐんぐん上がって2位になった。
武藤氏は前回2017年に続いて2度目の学生代表。2017年に比べてチームの雰囲気はよくなり「限界を超えるようなレベルアップをした」とし、チームの雰囲気も準優勝を後押ししたと言う。