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工学院、名工大、呉港高校が「ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」に向けて走行テスト

本番は10月13日~20日(現地時間)

2019年7月13日 開催

 工学院大学、名古屋工業大学、呉港高等学校のソーラーカーチームは7月14日、世界最高峰のソーラーカーレース「2019 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ(BWSC)」に向けて、栃木県にあるブリヂストンのテストコース「栃木プルービンググラウンド」において走行テストを実施した。

 ブリヂストン・ワールドソーラーチャレンジは、10月13日~20日(現地時間)にオーストラリアで開催されるソーラーカーレース。オーストラリア北部のダーウィンからスタートしてゴールとなる南部のアデレードまで、約3000kmを約5日間をかけて走破する。

 トップを争うチームなどは現地の法定速度(最高で130km/h)に合わせて連続して走行するため、参戦マシンには直進安定性や耐久性などが求められる。また、太陽光を動力源とするため1日の走行時間は8時から17時までとなっており、各チームのメンバーは夜は砂漠にテントを張って自給自足で過ごすという人間の耐久性も求められるレースとなる。

 ブリヂストンのテストコースで行なわれた走行会はレース本番に向けた事前テストとして、周回路を使用して車両の走行性能や耐久性の確認だけでなく、きちんと操舵ができるのかといった規定の運動性能の確認も行なわれた。

ブリヂストンは低燃費タイヤ「ECOPIA with ologic」を各チームに提供する

工学院大学

工学院大学の参戦車両「Eagle」

 工学院大学の参戦車両「Eagle」は、油圧サスペンションのハイドロニューマチックを採用するなど、従来モデルから安定性向上と低重心化を実現させたという。このソーラーカープロジェクトには総勢388名が関わっているといい、その中から体力や精神面などで選ばれた選抜メンバーが現地に入り、日本でのバックアップ体制も敷いてレースに挑む。

 この日行なわれたテスト走行では、車両の安全性や性能をチェックした後、レースを想定した高速での走行を繰り返してデータ収集するなど、順調にテストをこなしていた。

 チーム監督の濱根洋人氏は「この車両は勝つクルマとして考えていて、空力性能の向上を目的に表面積を減らしました。レース本番では人工衛星用の太陽電池を搭載しますが、シリコンは4m 2 、人工衛星用は2.64m 2 に制限されているので、小さくなったパネルに合わせて車体全体をデザインしています」と、マシンの特徴を話した。

 学生キャプテンの尾崎大典氏は「優勝を絶対に狙いたいです。チームが10周年を迎える節目の年なので、記念すべき大会で1番の成績を獲りたいという思いがあります」との意気込みを話した。

チーム監督の濱根洋人氏
学生キャプテンの尾崎大典氏
コクピット
サスペンションにハイドロニューマチックを採用

呉港高等学校

呉港高等学校の参戦車両

 呉港高等学校は高校生が参加するチームで、レースでは完走を目指している。双胴船タイプのマシンは、ダブルウィッシュボーン構造の板ばねを採用した薄型のサスペンションなど、前面投影面積を小さくすることにこだわったという。

 車両の製作では、ホームセンターに売っているような部材で仕上げたといい、ボディの成形に必要なスタイロホームの削り出しなど、生徒たちの手作りで作り上げてきたという。この日のテスト走行には学生の姿はなかったが、順調にテスト走行を繰り返していた。

 呉武田学園 理事長の武田信寛氏は「参戦は4回目で、2009年の時にクラス3位に入っています。前回大会は初めて完走を逃したので、今回は何が何でも完走しようという気持ちでそこにターゲットを絞って車両を開発しています。レースでは最小の人数で、自分たちのペースで走ろうと思っています。どうやってペースを守るかを議論しながら走らせていきたい」との意気込みを話した。

コクピット
ダブルウィッシュボーン構造の板バネを採用して前面投影面積を減らした
写真右端が呉武田学園 理事長の武田信寛氏

名古屋工業大学

名古屋工業大学の参戦車両

 名古屋工業大学は、約30名程度のチームで参戦。2015年から3回目の出場となる。レースでは人工衛星用のGaAs(ガリウムヒ素)系パネル、シリコン系パネルといった2種類の太陽電池が採用されているが、名工大ではシリコン系パネル使用するチームの中でトップ、全体でのトップ5入りを目指すという。

 チームマネージャーの磯合凌弥氏は「シリコンの発電効率25%に対して、GaAs系は30%くらいと、レギュレーションで発電量は制限されていますが、GaAs系を採用するマシンの方が小さく軽くなる傾向があり、そこの壁を超えるのが厳しいところ。私たちはシリコンのなかでの優勝を目指していき、ゆくゆくはシリコンでもGaAs系パネルに勝てるマシンに仕上げていきたい」との意気込みを話した。

トラブルに対応するためにピットでの作業が続いた
チームマネージャーの磯合凌弥氏

 ソーラーカーは走行音も少なく静かに走行するので遠目に見ると、その速度感を感じさせない。しかし、撮影のために乗用車に乗って参戦車両と一緒に並走すると、100km/h前後の速度域で走っていて、空気抵抗との戦いがあることを感じた。ソーラーカーは日本国内の公道を走行できないため、各チームにとって貴重なテストとなったようだ。