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工学院大学ソーラーチーム、“チーム史上もっともコンサバ”な新車両「Eagle」初公開

10月13日~20日の「2019ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」参戦

2019年6月27日 開催

 工学院大学の学生プロジェクト「工学院大学ソーラーチーム」は6月27日、世界最高峰のソーラーカーレース「2019ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」に参戦する新車両「Eagle」を初公開した。

 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジは、オーストラリア大陸を北のダーウィンから南のアデレードまで全長約3000kmを縦断する、2年に1度開催されるソーラーカーレースの世界大会。2019年は10月13日~20日に開催される。

 工学院大学ソーラーチームは、2017年の前回大会でチャレンジャークラス7位、2015年大会でクルーザークラス準優勝の実績を残した。チームにとって4度目の参戦となる今大会では、チーム設立10周年にして悲願の初優勝を目指すという。

 同日開催された記者発表会では、工学院大学 学長の佐藤光史氏、サポート企業を代表して帝人 モビリティ部門 部門長 帆高寿昌氏、チーム監督の濱根洋人(工学部 機械システム工学科 教授)氏がステージに登壇。

 工学院大学ソーラーチームは今年で設立10周年を迎え、世界大会出場を機に年々規模を拡大して、産学連携により約50のサポート企業から素材や技術の支援を受けるようになったことなど、学内のものづくりの施設を最大限に活用しながら、学生が自ら設計・製作を行ない5号機を完成させてきたことが紹介された。

工学院大学 学長の佐藤光史氏
サポート企業を代表して帝人 モビリティ部門 部門長 帆高寿昌氏
チーム監督の濱根洋人(工学部 機械システム工学科 教授)氏

ハイドロニューマチックのサスペンションを採用した新型車両Eagle

学生キャプテンの尾崎大典さん(先進工学部 機械理工学科4年)

 新車両のアンベールは学生キャプテンの尾崎大典さん(先進工学部 機械理工学科4年)が担当して、合わせて大会の見どころを紹介するプレゼンテーションを行なった。

 プレゼンテーションでは、2005年大会以降、太陽電池面積に制限がかけられるなどルール変更が行なわれている歴史や、歴代優勝チームの平均速度と採用する太陽電池の種類をもとにしたレース分析を紹介。

 2019年大会で優勝を狙うには、ソーラーパネルは2.64m 2 の宇宙用太陽電池(GaAsトリプルジャンクション)か4.00m 2 の単結晶シリコン太陽電池のどちらを選択するのか、またボディ形状は、コンパクトカタマラン(双胴船型)かモノハル(単胴体型)、あるいはオリジナルにするといった選択肢に絞られることが示された。

 会場でアンベールされた新車両Eagleは、1人乗り、4輪、単胴型で、ボディサイズは4995×966×973mm(全長×全幅×全高)、重量約150kg。ソーラーパネルは2.64m 2 の人工衛星用太陽電池(GaAs トリプルジャンクション)に反射防止技術を搭載。モーターはアモルファスと平角線を使用したホイルインモーターを採用し、オートクルージング機能も搭載している。

 サスペンションは、細長い車体、ピッチ振動を抑制して空力のよい姿勢を保ち、強風を受けてもタイヤをきちんと接地させて安定性を向上させることを目的に、ハイドロニューマチック・サスペンションが採用された。そのほかにも、サイドウィンカーカバーに、学内で開発された紫外線からプラスチックの劣化を防ぐ日本初の塗装技術が導入されている。

第5世代となる新型車両Eagleは、従来車両より低重心・安定化を果たし、質量は20%軽量化、空力は20%改善したという

 車両の開発においては“自然模倣”となる設計を行なったといい、車体先頭(ノーズ)は受ける風を車体後方へ綺麗に流すよう鷲(Eagle)のくちばしを模した形状を採用するなど、学生自らが開発・設計した多くのアイデアを取り入れて空気抵抗を改善。

 新車両の特徴を紹介するプレゼンテーションでは、オンリーワンにこだわったクルマを作り続けてきた工学院大学の歴史を振り返りながら、「チーム史上、もっともコンサバな形状です。しかし、勝利のために、多数の工夫を搭載しています」と、あくまで勝利にこだわった選択であったことを強調した。

チーム史上、もっともコンサバな形状です。しかし、勝利のために、多数の工夫を搭載しています
車両のコンセプトを示すスライド
会場に展示された2号機
会場に展示された3号機
会場に展示された4号機

 大会に向けて尾崎さんは「サポート企業の皆さまをはじめ、さまざまな方々のアドバイスにより、チームのミッションである独創的な“オンリーワン”の自信作となる新車両を完成させることが出来ました。私たち学生メンバーのアイデアと、最先端の技術を数多く搭載した工学院大学らしさの詰まったこのEagleで、大会に集まる世界各国のエンジニア達と技術を競い合い、チームの仲間達と全力でレースにチャレンジしたいと思っています。これからレースまでの準備もしっかり行ない、世界大会での優勝を目指します!」とコメント。

サポート企業などの採用技術を紹介

 また、チーム監督の濱根氏は「世界大会に挑戦する新車両の完成に伴い、改めて関係者の皆さまのさまざまなご支援に感謝申し上げます。学内の最新研究、航空宇宙の最新技術、そして約50のサポート企業の支援を受け完成した“オンリーワン”のドリームマシンで、学生たちの想いを世界に羽ばたかせます。次世代電気自動車、100年後の未来につながる人材育成と技術開発に貢献! 工学院大学ソーラーチームのスピリットを引き続き応援してください」とコメントした。

チームメンバーやサポート企業など関係者が集まってフォトセッション

 第5世代となる新型車両Eagleは、従来車両より低重心・安定化を果たし、質量は20%軽量化、空力は20%改善したといい、今後、7月13日~14日に国内テストコースでの試走を予定している。