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クルマと連携するスマホアプリのコンテスト、グランプリは安全確認作業を点数化する「優良ドライバーチェッカー」
「クルマとスマホをなかよくする SDLアプリコンテスト2019」最終審査会・表彰式開催
2019年11月26日 14:49
- 2019年11月22日 開催
クルマと連携するスマホアプリのコンテスト「クルマとスマホをなかよくする SDLアプリコンテスト2019」の最終審査会が11月22日に開催され、グランプリなど上位作品が決定した。グランプリは「優良ドライバーチェッカー」で、メガネ型デバイスと連携して安全確認などを点数化するというアプリ。
コンテストはSDLアプリコンテスト実行委員会が主催し、国内自動車メーカー10社や関連企業などで構成するSDLコンソーシアム日本分科会と、ナビタイムジャパンが協力して実施。8月15日~10月31日まで作品を募集し、11月22日に選ばれた10作品からグランプリと特別賞が選ばれ、表彰式が行なわれた。
最終審査会では、最初にSDLコンソーシアム日本分科会の平川健司氏が、12月1日から“ながらスマホ”が厳罰化されることに触れ、「クルマの中でスマートフォンを使いたいというニーズを捉えていくためにもSDL」と、SDLに対する期待の大きさと重要性が示された。
SDLとは「スマートデバイスリンク」の略で、クルマとスマホを連携させるオープンソースの業界標準規格。ただし、SDLという名称やロゴがあってもすべてが対応するわけではなく、クルマ側から取り出せる情報やそれを活用するアプリ側の対応もそれぞれ異なる。
コンテストではSDL車載器による実際の利用のほか、エミュレータでの動作を説明する動画等の資料で応募することも可能で、実際に車載機がなくてもアプリの評価に影響しないというルールで行なわれる。アプリは4輪、2輪、個人向け、業務向けまでジャンルを問わず募集した。
この日の最終審査まで残ったアプリとその作者(グループ)は以下の10作品となる。
・「安全支援型MusicPlayer音助」:九州産業大学 理工学部 合志研究室&情報システム研究会
・「SDLratch(エスディーエルラッチ)」:Pizayanz H
・「お風呂にしますか?お風呂にしますか?それとも...お風呂?」:函館高専プロコン研究会
・「シェアレコ」:猿出没注意
・「SpiCar」:PatchWorks
・「とらっくらく!」:ブラック学生inホワイトラボ
・「ハッキング小峠」:チームBHB
・「道の駅合戦」:河野祥平
・「ミチログ」:チームK
・「優良ドライバーチェッカー」:開発わかばマーク
10作品すべてのプレゼンテーションが行なわれ、最終審査の後、グランプリ1作品と特別賞3作品が選ばれた。
グランプリは「優良ドライバーチェッカー」
「優良ドライバーチェッカー」は開発若葉マーク氏によるアプリ。話題となった「免許返納」「あおり運転」では自分の運転を知る必要があり、「優良ドライバーチェッカー」はリアルタイムでの運転診断と指導を通して、真の運転スキル維持と運転傾向の分析を目指したという。
システムはSDLによる車両情報の取得のほか、メガネ型ウェアラブルデバイス「JINS MEME」による視線、姿勢、まばたき情報を得ていることが特徴。例えば左折時はウインカーやブレーキ操作、左寄せといったところはSDLで取得し、サイドミラー確認、首を振って目視による巻き込み確認、左折中の歩行者確認はJINS MEMEによって取得する。また、まばたき情報から居眠り運転も確認する。
リアルタイムに運転診断をしていくアプリだが、指摘に際しては「助手席にいる妻から運転を注意されると険悪になる」とし、アプリなら円満な指摘となり、さらに鬼教官から癒やし教官まで3人の教官を選択できることもアピールした。
また、未来への構想としては車間距離やリアルタイムな感情分析であおり運転や事故の防止、さらに画像認証で標識や信号の色、歩行者の検知も検討。運転中、道路標識の内容の確認を促すクイズ形式への発展も可能とした。
運転のチェックは短期で判定するほか、過去の運転との比較などを行ない、中長期でユーザーの運転傾向を分析。SDLで運転スキルの底上げや交通事故の削減につなげたいとした。
走行に合わせた動作を子供がプログラムする「SDLratch(エスディーエルラッチ)」
コンテストでは3つの特別賞が選ばれ、キッズ賞としてPizayanz H氏の「SDLratch」が選ばれた。プログラム言語の「Scratch」とSDLを組み合わせたもので、子供にSDLratchを使ってプログラミングをさせ、ドライブして試す動画を紹介した。
動画では子供が動作を考えながらPC上でプログラミングし、それが終わるとすぐにスマホを持って大人の運転でドライブ。クルマの動きに合わせてプログラムした動作に合わせて画面上のネコが動く。そして家に戻り、プログラムをさらに発展させて再びドライブに出るというものになっている。
Pizayanz H氏はこれをクリエイティブ・ラーニング・スパイラルと指摘したほか、SDLratchはコンテストの副題になぞらえて「クルマとキッズもなかよくします」とした。
位置情報付きで音楽をシェアする「シェアレコ」
「ダンスもよかったで賞」を受賞した猿出没注意の「シェアレコ」は、位置情報付きで再生中の楽曲をマップに表示してシェアするアプリ。楽曲を位置情報付きでマップ上でシェアし、そこに接近すると自動で再生するというアプリだ。SDLでは画面表示とテキストスピーチ、Bluetoothの音楽再生とGPSによる位置情報を取得する。
「まわりのクルマで聴いている曲を知りたい、まわりの人と曲がシェアできたら楽しい」ということがきっかけで作ったアプリで、タイトル、アーティスト名、位置情報の登録となり、個人を特定することなく利用できる。また、曲自体もその都度音楽配信サービスから得るため、著作権等の問題もないとしている。
開発中の機能としてご当地や“聖地”といった場所でのレコメンドもあり、ビジネスとしての展開も考えられるとしている。
道路の評価を集める「ミチログ」
チームKの「ミチログ」は有給使ってイイネ賞を受賞した。会社の有志メンバーで構成されたチームKだが、今回の授賞式は登壇者が有給を使って参加したということから賞の名前になっている。
アプリは道の評価を付けるというもので、「急カーブや学生が多く危険」「景色がよい」などの評価を付けていく。ユーザーの手動評価だけでなく、SDLからはハンドル操作やアクセスが一定の道は運転しやすい、急ブレーキが多い道は危険な道などと、運転情報による自動評価を利用して道を評価する。
手動での評価方法についても、SDLを利用して画面上に大きな「いいね!」「わるいね!」のタッチ評価ボタンを表示させ、操作しやすくしている。
活用方法として、快適な道のナビゲーションや評価のわるい道を通る際に通知を出すといったことのほか、期間限定で「今怖いね!」などのボタンを出現させ、「今怖いね!」ならば怪奇現象が起こる道の情報を集めるなど、エンターテイメント性を持たせることも可能だとしている。
そのほかにも6作品がプレゼン
九州産業大学 理工学部 合志研究室&情報システム研究会の「安全支援型MusicPlayer音助」は、ペダルの踏み換え方で音楽再生に変化をもたせるアプリ。急いでアクセルを踏むと落ち着いた音楽、ゆっくりアクセルを踏むと運転が楽しくなる音楽を再生。駐車状態ではじっくり聴く曲を再生する。
函館高専プロコン研究会の「お風呂にしますか?お風呂にしますか?それとも...お風呂?」は、家で出迎えがある状況を1人暮らしで実現するためのアプリ。奥さんの出迎えや温かいご飯の用意は実現が難しいため、風呂の蛇口を制御するハードウェアをSDLで実現した。
動作はアプリ上で自宅を設定し、クルマで「今から帰るよ」ボタンを押して自宅の半径6km以内に入ると、お湯が出て浴槽にお湯をためるという動作をする。
PatchWorksの「SpiCar」は逆走や異常運転を検知するアプリ。1秒ごとにGPSからの位置情報から進行方向を計算し、逆走を検知して通知する。地図はOpenStreetMapを使うが、オフラインでも動作するようファイルサイズを1000分の1まで圧縮する独自形式に変換し、端末内部にMAPデータを搭載することが特徴。
逆走を検知すると画面上にアラートを出すほか、加速度から普段と違う運転を判別し、その場合もアラートを出す。逆走検知と異常運転通知の2つを検知したSMSで近親者に通知し、運転者自身の気づきと近親者による見守りを実現する。
ブラック学生inホワイトラボの「とらっくらく!」は、トラックを一元管理するシステムを低コストで実現するため、スマートウォッチの心拍センサで運転手の情報を収集していたが、SDLでブレーキ情報を取得。合図でブレーキペダルを踏む操作をさせ、反応時間を計測する。
その結果によって運転をやめさせたり、リラックスするまで待機させるなどの対策をとる。この診断テストをクリアしないでクルマを出発させると、さらにアラートを出す。
チームBHBの「ハッキング小峠」は2輪車向けのアプリ。カーブ情報を登録し、それに合わせた速度や傾きで走行すると得点が上がっていく。早すぎても遅すぎても高得点はとれない。
開発中の機能としては、グループをまとめて表示したり、グループ内にランキング表示したりする機能も予定している。
河野祥平氏の「道の駅合戦」は、道の駅を目的地にするアプリ。クルマメーカーごとの対抗とし、道の駅での購入金額が攻撃や防衛のポイントとなる。
チームで獲得した道の駅が攻撃された場合は通知アラートが出るが、急いで防衛に行くとスピード違反などの可能性があるため、交通法規遵守で走行するとブーストがかかる仕組みを持っている。購入金額はスマートフォンのカメラでレシートを読み取って判断する。
グランプリはダントツ評価
表彰式では、グランプリと特別賞に賞状と賞金などが贈られ、審査員からもアプリに対する講評が行なわれた。
グランプリの「優良ドライバーチェッカー」については、審査員長の東京大学大学院 情報学環教授 暦本純一氏が「審査員の中でもダントツの評価。運転のチェックや目のアイトラッキングは技術的に完成度が高く、応用例も期待が持てる。キャラクター設定も面白く、総合的に完成度が素晴らしいのでグランプリ」と絶賛。
特別賞の「SDLratch(エスディーエルラッチ)」は、ITジャーナリストの鈴木朋子氏が「2020年からプログラミグ必修化でプログラミングブームがきてる。プログラムで実際に物が動くのは楽しく、クルマという大きなものが連動することはプログラミングに興味を持てるいいきっかけになり、素敵なアプリと思った」と評価した。
「シェアレコ」についてはトヨタ自動車 ITS・コネクティッド統括部長の山本昭雄氏がコメントし、「いろいろなビジネスが広がることを評価した。クルマの中の情報を反映するとよくなると思う」と語った。
「ミチログ」は、AR三兄弟長男の川田十夢氏が「地図アプリやカーナビの会社さんが意外に取得できていない情報を蓄積できる可能性がある。蓄積すると重要なデータになり、それを含めて素晴らしい」とコメントした。
Raspberry Piによる安価な開発キットを用意
最終審査会・表彰式では会場を提供したナビタイムから、テレマティクス事業 事業責任者の田代和弘氏が会社の概要とSDLへの取り組みや「カーナビタイム」について紹介。SDLの将来については、スマホアプリで追加更新される機能をSDLでも利用できるようにするとしたほか、公共交通機関と組み合わせたラストワンライドでの活用も考えられるとした。
また、トヨタからはITS・コネクティッド統括部 コネクティッド戦略グループ 主幹の齋藤英志氏がSDL開発キットについて説明。これまでの高価だった開発キットに比べて手軽で安価なシングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」と、タッチパネル液晶を使ったSDLBOOTCAMPを紹介した。