東京モーターショー2017
【東京モーターショー2017】スマートデバイスリンク(SDL)の日本市場向け機能やアプリ開発を促進する日本分科会設立。自動車メーカーなど10社が記者会見
日本市場向けのSDL機能を備えた車載器を2018年に発売
2017年10月27日 20:27
- 2017年10月25日 開幕
- 2017年10月27日 プレビューデー
- 2017年10月28日~11月5日 一般公開日
10月25日、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で「第45回東京モーターショー2017」が開幕した。27日はプレビューデー、28日~11月5日は一般公開日となる。
西4ホールの特設ステージで27日、スマートフォンとクルマをつなげるためのオープンソース「スマートデバイスリンク(SDL)」を管理する「スマートデバイスリンク コンソーシアム(SDLC)」の日本分科会設立発表会が開催された。
発表会ではスマートデバイスリンク コンソーシアム バイス・チェアマンの村田賢一氏が概要説明を行なった。
村田氏は「スマートデバイスリンク、SDLとは、クルマのシステムとスマートフォンに代表されるスマートデバイスを接続して、スマートデバイスに入っているアプリケーションを車載システムの画面やスイッチなどを使って安全に操作できるようにするシステムのことです。スマートデバイスからコンテンツデータを車載システムの画面に送って、画面上で押された位置などをアプリに返す。これによってリモートで安全に操作できるようになります」と冒頭で述べ、SDLの概要を解説。このほか、表示するときに各車のインテリアデザインに合わせられるよう、各種テンプレートを用意するという。
2016年11月にスタートしたSDLCでは、定期的に会合を開いて「SDLプロトコル」と呼ばれる通信プロトコルの標準化、SDLアプリケーションを開発するためのSDLの開発キットの提供などを行なっていると村田氏は解説。SDLCのメンバーはSDLを商品化、またはSDLの商品化を予定している自動車メーカーやティア1サプライヤー、SDL対応アプリの開発を予定している企業や開発者が対象となり、自動車メーカーとしては10月に日産自動車と三菱自動車工業が新たに加盟して全11社がメンバー企業になっているという。
また、日本のメーカーはSDLCに数多く加盟しており、日本市場向けのSDL機能を備えた車載器やアプリの配布などを2018年から開始する予定。この日本市場向けSDL機能を開発し、発展させていくことを目的としてSDLCの日本分科会が設立される運びになったという。このSDLC日本分科会には国内自動車メーカー9社に加え、車載機器を販売するパナソニック、アプリやサービスを提供するLINEをはじめ多数の企業が参加する見込みになっている。
このほか、発表会では日本分科会に参加する自動車メーカーなどの担当役員も登壇してそれぞれ挨拶を行なった。
トヨタ自動車 常務役員 山本圭司氏:「私たちトヨタ自動車は2015年にSDLの導入を決定し、それ以降、商品化に向けた開発を進めてきました。日本市場では2018年から販売店装着オプションとしてSDLに対応したマルチメディア車載機を商品化いたします。この商品ではLINE様から提供される『LINE MUSIC』をはじめ、さまざまなスマホのアプリが車内で使えるようになります。続いて2019年には新しい商品として工場装着のマルチメディア車載機を製品化いたします。この製品ではさまざまなナビゲーションアプリ、音声認識によるアプリ操作、LINE様から提供される『LINE Clova』などもクルマのなかで使えるようになります。トヨタのブースとKDDI様のブースでこの試作品を展示しておりますのでご覧いただければ幸いです」。
「本日ご列席の他社様からも、同様にSDLに対応したマルチメディア車載機が市場投入されることで、アプリの数もますます充実していくと期待しております。私たち自動車会社が一丸となり、さらには業界の枠を越え、クルマを運転するすべてのお客さまが安心・安全で、わくわくできるようなサービスを提供できるソリューションとしてSDLをみなさんと一緒に育てていきたいと思っております」。
日産自動車 本部長 藤巻大典氏:「お客さまは、PCやスマートフォンといったデバイスを、いつでもどこでも自由に使うということを望まれております。これはカーライフにおいても同様で、クルマとの繋がりというニーズもこれからますます高まっていくと考えております。自動車会社ではこれまで、クルマそのものの性能であったり商品性に重きを置いてきました。しかしながら、今後は商品価値はそのままに、プラスアルファの付加価値、これを言い替えればお客さま1人ひとりにご満足いただけるサービスをいかにご提供していくかが非常に大切になっていきます」。
「多くのお客さまにとって、1日のなかでクルマのなかで過ごす時間は5~10%という短い時間になります。お客さまは多くの時間をクルマの外で過ごし、スマートフォンをはじめとしたさまざまなデバイス、さまざまなサービスを活用しています。つまり、自動車会社だけでなく、それ以外のみなさまといかにコラボレーションしていけるかがますます重要になります。スマートデバイスリンク コンソーシアムの日本分科会というものは、自動車メーカーが一堂に会するというだけでなく、自動車業界以外のデバイスやサービスなどを提供している方々、そしてこれから提供をスタートしていこうという皆さんと一緒になり、人とクルマがシームレスにつながることで生み出す価値を一緒に考えていける大変素晴らしい枠組みだと考えております。この分科会のなかで、関係する皆さまとともに日本のお客さまにとって価値のあるサービスは何かということを検討していく所存です」。
マツダ 執行役員 工藤秀俊氏:「スマートフォンは、例えばこのようなスピーチの場でもさりげない“カンペ”も使えるなど、我々の生活のなかになくてはならないものになってきました。その一方で、運転中の操作による事故などが増えているという課題認識もありますので、まずはクルマのなかでスマートフォンが安心・安全に当たり前に使える環境を整えたうえで、クルマとスマートフォンを連携させることでお客さまのリアルワールドを広げる、新しい価値をお届けしたいと思っています」。
ダイハツ工業 専務執行役員 星加宏昌氏「このSDLの仕組みを活用し、我々がお客さまに便利に安心して、充実したサービスを例えば免許を取ったばかりの若いユーザーであったり、毎日忙しく働いているユーザーであったり、生活にクルマが欠かせない地方部のシニアユーザーであったりと、ダイハツのクルマを愛用していただいているすべての人に提供していきたいと考えております」。
「SDLのコンセプトである『みんなにコネクトサービスを』という精神は、ダイハツの考え方とまさにコネクトしております。もっと便利に、もっと安心な、もっと楽しい毎日をご提供できるよう、我々もSDLの普及と発展に貢献していく所存です」。
三菱自動車工業 執行役員 鳥居勲氏:「スマートフォンの普及により、いつでもどこでもネットワークにつながっていろいろな利便性を享受できる時代がやってきました。これはスマートフォンの技術向上が大いに役立っております。クルマのなかでも同じように、シームレスに使えることが要求されております。一方で我々自動車メーカーは、より安全でより快適な移動空間となる移動機器をこれまで提供してきました。これからもスマートフォンとの連携を含め、シームレスな環境をさらに利便性を高めて皆さまに提供し続けていくことを使命としております」。
スズキ 取締役技監 本田治氏:「スズキのクルマは小さなコンパクトということで、これまで“つながる”ということはあまりなかったのですが、気がついてみると、こういったコンパクトなクルマをご愛用いただいているお客さまこそ“普段からつながりたい”と言われる時代かと思います。また、ここまでお話をしてきた皆さんは『自動車、自動車』と口にしてきましたが、私どもは4輪だけでなく、わずかながら2輪もやらせていただいております。2輪こそライダーは1人で走っていますが、たくさんの人と連絡を取りながら、楽しく会話しながら走りたいと考える乗り物だと思います。その点で、我々が両方やっていることを生かして、少しでもコンソーシアムの皆さんのお役に立てればと思っております」。
ヤマハ発動機 取締役上席執行役員 島本誠氏:「我々は2輪の専業メーカーとして、モーターサイクルに乗っているお客さまも当然つながりたいということで、すでにスマートフォンを使ったナビゲーションであったり、音楽を聞いたりと、つながることをすでに始めているお客さまもいらっしゃると思います。ただ、残念ながらモーターサイクル業界は雨に濡れたり、スペースや振動の問題であったりといろいろな制約があって、4輪各社さんと比べるとハードの提供がかなり遅れていると認識しております」。
「そういったいろいろな難しさを解決する上でこのコンソーシアムに参加させていただき、いろいろなところで競争ではなく協調のところで、4輪メーカーさんのいろいろなノウハウも教えていただきながら我々の開発を進めていきたいと考えております。さらにいろいろなサプライヤーの皆さん、ソフトベンダーの皆さんにコンソーシアムに参加いただいて、この会がより強力な存在になることを願って、我々ヤマハ発動機としても微力を尽くして協力させていただきたいと考えております」。
川崎重工業 執行役員 堀内勇二氏:「このSDLで“つながる”というところは、川崎としてはどちらかと言えば苦手な分野になります。しかし、得られることに挑戦することを目的としてSDLCに加盟させていただくことにしております。スマートデバイスリンクを用いてモーターサイクルと周辺機器をつなげ、お客さまに利便性の高いアプリを提供したり、豊かなモーターサイクルライフを提供するといったことで、当社のライデオロジーという世界を広げていきたいと考えております。苦手な分野と言いましたが、2輪メーカーの一員としてSDLの普及と発展に務めてまいります」。
パナソニック 執行役員 上原宏敏氏:「このSDLに関して我々パナソニックは、すでに車載機としての製品を市場投入させていただいております。ご承知のように、私たちパナソニックは家電、住宅、オートモーティブ事業を大きな事業領域として進めております。その意味で、これらをつないでいく1つの技術としてSDLをとらえております。パナソニックとしては、これまで民生分野で培ってきた技術や経験をすべて投入してSDLコンソーシアムの成功に貢献していきたい。安心・安全でわくわくするモビリティライフを実現したいと思っています」。
LINE 取締役 舛田淳氏:「私どもLINEは月間7100万人のユーザーがおります。このユーザーはスマートフォンとスマートフォンのなかでコミュニケーションを育んでいただいておりますが、次に目指すところはスマートフォンの外の空間です。このチャレンジのため、私どもは新たに『LINE Clova』というAIエージェントを開発してこれに注力しております。このClovaが目指す領域として、家のなかやウェアラブル、そしてカーライフの3つが非常に重要であると私たちは考えています。このカーライフでLINEを使いやすくするため、コンソーシアムに参画しております」。
「SDLを普及させていくにあたり、重要になるのはキラーサービス、キラーコンテンツをどのように作っていくか。それは私たちだけではダメですし、メーカー様だけでもダメだと思っております。この両者が力を合わせながら、この先のカーライフを充実させていくため、私たちも盛り上げていきたいと考えております」。
【お詫びと訂正】記事初出時、LINE株式会社の月間ユーザー数の数値が間違っておりました。お詫びして訂正させていただきます。