東京モーターショー2017
【東京モーターショー2017】メルセデスAMG Project ONEは、F1エンジンと同じものを積んでいるのか?
「製造のやり方は違うが、テクノロジーとしてはF1と同じだ」
2017年10月28日 08:38
- 2017年10月25日 開幕
- 2017年10月27日 プレビューデー
- 2017年10月28日~11月5日 一般公開日
10月25日、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で「第45回東京モーターショー2017」が開幕した。27日はプレビューデー、28日~11月5日は一般公開日となる。
東2ホール EP01にあるメルセデス・ベンツブースではプレスカンファレンスの終了後、メルセデスAMG Project ONEについて、商品・マーケティング統括のエバ・ウィーゼ氏と開発責任者のレーネー・ウォルマン氏による解説、及びメディアからのインタビューに応える時間が設けられた。
まずは会場に置かれたメルセデスAMG Project ONEを見ながら、ウォークアラウンド方式で車両の説明が行なわれた。最初に対応したのはウィーゼ氏である。
最初はエンジンについて、「エンジンは小さく、V6の1.6リッターですが、それにプラスしてハイパーシステムが搭載されています。これにフロント駆動用のモーターが2基あって合計4基のモーターを積んでいますので,このクルマは4WDと言うことです。また、モーターを制御することでトルクベクタリングを行なえるようになっています」。
次はデザインについて「デザインはとてもクリアなものになっていると感じています。そして“魅力は機能に追随する”という私どもの理念に基づいた設計ができたと考えています。また、エアロダイナミクス面でもさまざまなアイデアが盛り込まれていまして、特徴的なところではルーフ部のあるエアインテーク。そしてその後ろのフィンによりエアフローが整えられ、リアには低重心のスポイラーも配置しています」と語った。
今回はドアを開けての公開はなかったが、ウィーゼ氏によると「インテリアもとてもクリーンなデザインになっています。インテリアはすべてドライバー中心に設計されています。ドライバーのためにエアコンやナビゲーションは搭載されていますがラグジュアリー的な要素はありません。こちらはレーシングカーなので運転に必要のないものは省かれています。また、インテリアに使用している材料も軽量なものとなっています。シートがその端的な例で、今回はシートを軽くしたかったので電動でリクライニングするような機能は思い切って省きました。そのかわり、ベストなドライビングポジションを取ることができる素晴らしいシートを取り付けております」とのことだ。なお、レースカーのようにシートは固定式で、ステアリングとペダル類を動かすことでポジションを調整するようになっているというだ。
さらにウィーゼ氏は「私たちがこのクルマで証明したかったものは、『きちんとしたインテリジェントテクノロジーがあれば、排気量は必ずしも大きくなくとも素晴らしいパフォーマンスを発揮することが可能なのだ』と示してみせることでした。なお、パワーについてはシステム合計で1000PS以上となっていて、静止状態から200km/hに達するまでにかかる時間は6秒台ととても速いものになっています。ただ、6秒いくつかという小数点を含めてのタイムの公開に関しては、この場では遠慮させてもらいます。さて、次に最高速で、これは350km/hとなっていますが、このクルマは直線をどれだけ速く走るかということが主たる目的ではなく、本当の意味での操作性の高さやドライビングの喜びが体感できるようなクルマの味つけになっているのです」と語った。
ここでメルセデスAMG Project ONEの開発責任者のレーネー・ウォルマン氏が登場する。ウォルマン氏は「私からは技術面やエアロダイナミクスについて説明させていただきます。まずはフロントフェンダーの上をご覧ください。ここは開閉できるようになっていて、タイヤハウス内に入る空気をここから抜くことでエアロダイナミクスを最適化する仕組みになっています。これはリアのスポイラーと合わせて機能します。メルセデスAMG Project ONEがよいバランスの空力を得ているのも、この2つの機能があるからです。私たちがクルマの設計をするときはドライビングの楽しさをもたらすという面だけでなく、ベストなパフォーマンスを引き出すということに着目し、それを柱に開発していきますので、この機能についてはとくに重要なものになっています」とのことだった。
次はエンジンについての説明だ。「搭載しているのは1.6リッターのV6エンジンです。ターボ化されていてブーストはとても高い数値になっています。従来、ターボエンジンにはターボラグがあるという問題がありましたが、このエンジンではタービンシャフトにモーターを接続することで、ターボチャージャーも電気的に操作してます。さらに『MGU-K』というモーターをクランクシャフトに直接つなぐ形で配置されていて、ターボエンジンをモーターで補っています。ちなみにMGU-Kの出力は120kW、MGU-Hは90kWになっています。また、各120kWの出力を持つモーターがフロントに2個付いています」と語られた。
そして「このクルマに盛り込んでいるすべてのテクノロジーはフォーミュラ1を発祥とするテクノロジーを応用したものです」と結んだ。
ウィーゼ氏とウォルマン氏へのグループインタビュー
今回は短い時間だが、クルマの説明をしてくれた両氏にインタビューする機会が設けられていたので、その内容も紹介しよう。
インタビューではやはり、メルセデスAMG Project ONEのエンジンに関連する質問が集中したのでそこから紹介しよう。
最初に回答したのはウィーゼ氏で「まずはハイブリッドを採用したことについてはとても意味があることで、パワフルで官能的な音を奏でるエンジンと、電気モーターならではの力強さを融合したのがハイブリッドの魅力です。そんなパワフルな面も持ちながら、電力だけで巡航できることが可能な面も重要なことだと思います。ジュネーブショーでは4リッターV8ツインターボと電気モーターを組み合わせたメルセデスAMG GT Conceptを発表させていただきましたように、これからハイブリッドのハイパフォーマンスカーが増えていくことについてなんの不思議もないと思っています」と語った。
続いてF1のエンジンとの共通性について。答えたのはウォルマン氏で「なんパーセントぐらいのものがF1用エンジンから引き継がれているか数字で申し上げるのは難しいです。ただ、純粋なレースエンジンとストリートカー用のエンジンでは製造のやり方は違ってきますので、言い方としては“製造のやり方は違うが、テクノロジーとしてはF1と同じだ”というふうにご説明します」とのことだった。
販売体制と高性能車には不可欠なメンテナンスについての質問にはウィーゼ氏が回答。「まず、メンテナンスについてですが、メンテナンスプログラムを用意させてもらっています。AMGにはこのような特殊なクルマであってもきちんと整備を行なえるディーラーネットワークがあります。販売に関してですが、購入したいと言っていただく方が多いので、マーケットごとの配分を考えているところです。そのためディーラー側がどなたにお譲りするのがいいか考えていくことになると思います」ということだった。