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100PSオーバーの電動スポーツバイク、Zero MotorCycles「SR/F」が日本デビュー

XEAMが扱う趣味性の高い電動モビリティに興味津々

2020年4月7日 開催

サーキットを走行するZero MotorCycles「SR/F」

 福岡県にあるスマートフォン、タブレットの総合アクセサリーメーカーであるMSソリューションズは、約3年前に「notte(ノッテ)」という電動スクーターを「XEAM(ジーム)」という電動バイクの自社ブランドにおいてオリジナル機種として販売を開始。その後、オリジナル機種にとらわれず、魅力あるモデルを独自に輸入して取り扱い車種を増やし、現在は電動バイクのセレクトブランドとして福岡市内に直営の電動バイク専門ショップを設けている。また、全国に217店(4月8日時点)のXEAM取り扱い店のネットワークを持っている。

 そのXEAMが新たに取り扱いを始めたのが、アメリカの電動バイクメーカーである「Zero MotorCycles(ゼロモーターサイクルズ)」製の「SR/F」という大型スポーツモデルと、中国の電動バイクブランドであり、ヨーロッパ、韓国、メキシコなど広い地域で販売されている「SUPER SOCO(スーパーソコ)」シリーズだ。

左が株式会社MSソリューションズの塩川正明氏。右はゲストライダーの岸本ヨシヒロ氏

 日本では電動バイクというと原付クラスのスクーターが多いので、電動バイク=日常使いの道具的な乗り物というイメージもあったりするが、SR/FやSUPER SOCOの各車は、趣味として電動モビリティに乗りたい人も満足できる2輪車という位置付けになっている。

 そんな両モデルの関係者向け試乗会が、4月7日に千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウェイにて開催されたので、その模様と用意されていた電動バイク各車の紹介をしていこう。

自分好みに動力性能をカスタマイズできるSR/F

MSソリューションズの電動バイクセレクトブランド「XEAM」で扱うZero MotorCycles製の大型電動バイク SR/F。販売予定価格は300万円(税別)

 アメリカの電動バイクメーカーであるZero MotorCyclesが発売するSR/F。市販電動バイクでは世界最高峰と言われるモデルで、日本の車両区分では大型二輪に属し、免許は大型二輪免許、もしくはAT限定大型二輪免許で乗車定員は2名。販売予定価格は300万円(税別)。

 主なスペックは以下のとおり。同社が開発したZF14.4リチウムイオンバッテリーは14.4kWhの能力を持ち、同じくオリジナル品のZF75-10モーターの最大出力は82kW(110PS)/5000rpm、最大トルクは190Nm(19.37kgfm)を発生する。最高速は200km/h、最大航続距離は259kmと発表されているが、これは条件のいい状態での値なので実際の走行では約150~200kmあたりと思っていいだろう。

 ZF14.4リチウムイオンバッテリーの充電は100V、200V(SAE J1772コネクター)に対応しているので、家庭での充電はもちろん、高速道路などに設置されている200V充電器も使用できる。充電時間は110~120V(レベル1)で8.5時間。208~240V(レベル2)では4.5時間と発表されている。

 なお、モーターやバッテリーを積む電動バイクではイメージ的に車重が重くなっていそうだが、大型ネイキッドバイクと同等の約220kgだ。

SR/FのバッテリーはZero MotorCyclesオリジナルのZF14.4というリチウムイオンバッテリーとなる。普通のバイクではエンジンが収まる部分に装着。スリムな設計なので車体幅もスリム
モーターもオリジナル。ZF75-10というモデルで最大出力は82kW(110PS)/5000rpm、最大トルクは190Nm(19.37kgfm)となっている
マスの集中化が図られた設計。約220kgの車重があるが取りまわしは意外とやりやすい。走ってもヒラヒラ感があるという
ZF14.4リチウムイオンバッテリーは100Vと200V(SAE J1772)の充電コネクターに対応
SAE J1772コネクター。SR/Fは急速充電に対応していない
充電中はメーターに状況を表示できる

 SR/Fの走行フィーリングについては、ゲストライダーとして参加していたMIRAI代表の岸本氏に伺った。岸本氏は国内ロードレースへの参戦を経て、イギリスで行なわれているマン島TTやアメリカのPPHC(パイクスピークインターナショナルヒルクライムレース)に自社で開発した電動バイクで挑戦するなど、日本を代表する電動バイクライダーである。

日本を代表する電動バイクライダーでもある岸本氏。国内ロードレースに参戦していたが「面白い乗り物を作りたい、乗りたい」という気持ちから電動バイクの世界に参入。その後、マン島TTやPPHCへの挑戦を行なっている。そうした挑戦を通じて海外の電動バイク業界ともつながりがある

 その岸本氏に、まず電動バイクの魅力を伺った。すると「一番の魅力はモーターならではのフィーリングです。内燃機とはまったく異なるトルク特性とトルクの太さを持ちつつ、スロットル操作に対する反応がすごくリニアです。これは例えると内燃機エンジンを積むレーサー、それもすごく洗練されたレーサーのようです。また、電動バイクにはミッションがありませんが、ATともDCTとも違うシームレスな加速感は、従来のバイクと違う新しい乗り物に乗っている感覚が味わえて面白いところです」とスポーツタイプの電動バイクの特徴を語った。

 SR/Fについては「デザインは見てのとおり、今風の洗練されたものでカッコいいと思います。出力は大きいのですが、モーターやバッテリー制御特性も洗練されているので、モードを切り替えることでモーターならではの速さを発揮するのはもちろん、タウンスピードでのんびり走ることもできます。今回はエコモード、レインモード、ストリートモード、スポーツモードを切り替えて走ってみましたが、モードごとに加速感だけでなく回生ブレーキの効きも変わるので、同じマシンに乗っていてもフィーリングは別モノになります。これは電動バイクならではの乗り味ですね」と語った。

 また、この走行モード群にはカスタムモードもあり、これは専用のスマートフォンアプリを使うことで出力特性やトラクション設定をライダーの好みに設定できるようになっている。

 アプリにはスロットル操作状況など含む走行ログを取る機能もあり、それを使えば走行後にログデータを見ながらより細かく自分仕様にセットアップできるので、出先で同じSR/Fに出合っても、同じ車種とは思えないほど異なる特性になっているということもありえる。これもSR/Fならではのことだ。

左スイッチボックスのスイッチ操作でモードの切替ができる。モードごとにメーターの表示が変わる。これはストリートモード
スポーツモード。SR/Fではボッシュ製のスタビリティコントローラーを搭載しているので、大トルクモーターであってもスタート時の不用意なウイリー、加速時のホイールスピンも抑えられている
これはエコモード。高速道路などを利用するロングツーリングで重宝する
レインモード。なお、走行モードとトラクションモードはそれぞれ別での設定が可能
カスタムモードと専用のスマートフォンアプリを使うことで出力特性やトラクション設定をライダーの好みに設定できる。現状表記は英語のみのようだ

 バイクの挙動については、「SR/Fは重量バランスをよくするためモーターを車体中心の低い位置に搭載していますが、ここにモーターを搭載するとリアスイングアームの支点であるピボットとモーターの軸部分がほぼ同軸になります。するとスイングアームの動きに対してベルト(SR/Fはベルトドライブ)の張りを強くできるので、モーターの出力がリニアにリアタイヤに伝わるようになります。加えて車体レイアウトから来るアンチスクワット効果があるので、安定したトラクションを掛けることができるのです。実際に袖ヶ浦フォレストレースウェイを走ったときもすべてのコーナーでスムーズに旋回することができました。それにモーターやバッテリーなどの重量物の搭載位置が集中化されているので、大柄な割にはクイックな動きができます。切り返しはとくに速いと思います」と解説をしてくれた。

サスペンションは前後ともショーワ製のフルアジャスタブル
モーターの軸とスイングアームのピボット位置がほぼ同じと言う部分もガソリンエンジン車にはない部分とのこと
ベルトドライブ式だ
SR/Fの駆動音
SR/Fの走行シーン。大型バイクながらヒラヒラ感があってコーナリングも得意という。スタビリティコントローラーにより、大トルクながら安心してスロットルを開けていける

 試乗会で用意されていたもう1つのブランドは、SUPER SOCOという中国メーカーの電動バイク。こちらは原付1種から軽2輪まで5車種用意されていた。ちなみに電動バイクにおいてのナンバー区分はモーターの定格出力ごとに分けられていて、原付1種が0.60kWまで、原付2種が1kW以下、軽2輪が1kW越えとなっているので、SUPER SOCOの各車もその区分けになっている。なお、SR/Fは届け出の段階で大型二輪免許(AT限定含む)にしているので該当免許がなければ乗れない。

 今回、Car WatchではSUPER SOCOの試乗をしていないので写真での紹介になるが、こちらのブランドはサイズ的にも価格的にも手の届きやすいところにあるものだし、スタイルもオートバイ的だ。それだけにオートバイ同様「趣味として乗る」ことにも違和感がないので、新しい趣味、人とは違う趣味を探している方はぜひ注目していただきたい。

軽2輪の「TCmax」

定格出力4.5kWのTCmax。軽2輪となる。予価は44万8000円(税別)でスポークホイール仕様もある。モーターはSUPER SOCO製でフレーム内に搭載し、ドライブベルトを介して駆動を伝える。体重75kgのライダーが45km/hで走行した際の航続距離は110km。バッテリーはリチウムイオンバッテリーで充電時間は8~9時間
TCmaxをはじめTCシリーズはダミータンク内にバッテリーが入る作り。電圧は100Vなので家庭用電源で充電できる。また、バッテリーは取り外せるので家の中に持ち込んでの充電も可能
TCmaxの細部

軽2輪の「CPX」

定格出力4kW、ビッグスクータータイプのCPX。こちらも軽2輪の区分。価格は1バッテリーモデルで42万8000円(税別)、2バッテリーモデルで49万8000円(税別)。シート下にリチウムイオンバッテリーを2個搭載でき、2バッテリー時は140km、1バッテリー時は70kmの航続距離となっている(体重90kgのライダーが45km/hで定地走行した場合)。モーターはSUPER SOCO製でFOCベクトルコントローラーを装備。最高速は90km/hとなっている
バッテリーは2個搭載できるが1個でも走るので、近場の移動時には空いたバッテリースペースを小物入れとして使える
右スイッチボックスにある「R」ボタンはリバーススイッチ。バック走行が可能なので、坂道の下り側向きにフロントから駐車した際でも脱出が容易。1~3の目盛りは走行モード切替スイッチ
大きめで視認性がいいディスプレイを装備
CPXの細部

原付2種の「TC」

定格出力1kWのTC。原付2種の区分となる。価格は1バッテリーモデルで29万8000円(税別)、2バッテリーモデルで39万8000円(税別)。最高速度は75km/hで、モーターはボッシュ製の17インチ高性能パワーモーターを採用。FOCベクトルコントローラーも装備する。モーターはリアホイールに組み込まれている。リチウムイオンバッテリーは2個搭載可能で、航続距離は2バッテリー時で110~120km、1バッテリーで55~60km(ともに75kgのライダーが45km/hで定地走行した場合)だ
TCmax TC、TSXにはパーキングスイッチも装備。ONにしておくと不用意にアクセルを開けても飛び出さないようになっている
TCの細部

原付2種の「TSX」

定格出力1kWのTSX。原付2種の区分となる。価格は1バッテリーモデルで29万8000円(税別)、2バッテリーモデルで39万8000円(税別)。こちらもボッシュ製の17インチ高性能パワーモーターとFOCベクトルコントローラーを搭載。最高速度は75km/hとなっている。航続距離はTCと同じく2バッテリー時で110~120km、1バッテリーで55~60km(ともに75kgのライダーが45km/hで定地走行した場合)だ。
TSXの細部

原付1種のスクータータイプ「CUX」

最後に紹介するのは定格出力0.6kWのCUX。価格は1バッテリーモデルで42万8000円(税別)、2バッテリーモデルで49万8000円(税別)。モーターはボッシュ製でFOCベクトルコントローラーを装備。区分は原付1種なのでクルマの免許があれば乗ることができる。リチウムイオンバッテリーを使用していて容量は60V30Ah。100Vの充電所要時間は8時間。最高速は65km/hまで出すことができる余力を持っている。また、車体がかなりスリムなので駐輪もしやすそうだ
CUXの細部