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日産、Z PROTOのポイントを解説する「デザイン ウォーク アラウンド」レポート

グローバルデザイン担当のアルフォンソ氏とグローバルデザイン本部の田井氏がクロストーク

2020年9月16日 開催

日産自動車株式会社 グローバルデザイン担当 専務執行役員 アルフォンソ・アルバイサ氏

 日産自動車は9月16日、神奈川県横浜市に期間限定で作られたブランド発信拠点「ニッサン パビリオン」のスタジオにて、新型フェアレディZ プロトタイプ 「Z PROTO」の「デザイン ウォーク アラウンド(Design Walk Around)」を、世界各地と中継を結びながら開催した。

 ここで登壇したのは、日産自動車のグローバルデザイン担当専務執行役員アルフォンソ・アルバイサ氏と、グローバルデザイン本部エグゼクティブ・デザイン・ダイレクターの田井悟氏。

 まずアルフォンソ氏は、新型フェアレディZ プロトタイプはシルエットをとても大事にしていて、長いボンネット、240Zのイメージをかもしだしているキャビン、流れ落ちるリアセクションもこだわりの1つであることを解説。

 また日本の「刀」をモチーフにした形状が、ルーフラインをアクセントづけていることも加えて紹介。さらにボディサイドにある絶妙なエッジと、リアフェンダーへの膨らみとボディラインが動きをうまく表現していると語った。

ボディサイドにあるエッジ部分を解説

 続けてアルフォンソ氏は「フロントはまさに240Zっぽいですよね、ヘッドライトだけでなく全体が。このボンネットフードとフェンダーが作り出す大きな四角いフロントグリルも240Zにそっくりで最高なんです」と自身も気に入っているポイントであることを紹介。また、ヘッドライトについては、240Zの特別バージョンで、レンズにカバーが付いたモデルを彷彿とさせ、このLEDの光は、レンズカバーに反射した光が描く輪をイメージしていると明かした。

 リアまわりに関しては、まさに自分が300ZXを大好きだったことを理解してもらえる部分だと強調。カプセルのような形状のLEDテールランプは、新たな技術を使っていることを紹介した。そしてリアフェンダーのふくらみが力強さも表現していて、新たなドライビングフィールを予感させるスタイリングに仕上がっていることもアピールした。

300ZXのテールランプのように横長の形状

 内装も240Zからの流れを踏襲しているが、メーターが遠くにあるのは近代的なデジタルメーターを採用しているからで、センターディスプレイもカーナビやオーディオなどインフォテイメント機能が備わり現代的になっている点も解説した。また、3連メーターはまさにスポーツカーのアイコンであり、ドライバーの視線の先の自然な位置に配置してあると解説した。

スポーティな内装

 さらにアルフォンソ氏は「これは田村氏がいつも主張していることですが、マニュアルトランスミッションによって、ドライバーとクルマは人馬一体を感じることができるのです。このホールド感のあるシートも重要で、乗り込むとまさにZに包まれて一体となっている感覚になりますよ」と、内装へのこだわりも語ってくれた。

 最後にボディカラーについても言及。240Zにはモダンなイエローが採用されていた。また、300ZXのイエローはパールが入っていたが、昔の塗装技術だとイエローの発色にパールがしっかり乗っていなかった。しかし、最新の塗装技術を使ったことで、色彩豊かなパールの乗ったイエローを実現したと、Z PROTOのボディカラーへのこだわりも明かした。

歴代Zの伝統を継承しながら、進化することで革新を遂げるデザイン

日産自動車株式会社 グローバルデザイン本部 エグゼクティブ・デザイン・ダイレクター 田井悟氏

 田井氏は「アルフォンソ氏が予定の時間を押してほとんど解説しちゃったから、もう話すポイントが残っていないです」と前置きしつつデザインの始まりから語ってくれた。

 最初に“Zらしさを作れ”という大号令から始まったとのことで、最終段階でいくつかのデザインが残ったが、最終的にこのデザインを選んだ一番のポイントは、ボンネットフードよりもテールが下がっているということ。これがいわゆる“Zらしさ”だと決めてから、柔らかさや硬さなど、どのくらいのバランスが今の時代のZらしさをモダンに表現できるか考えてきたという。

 田井氏は「考え方として“最初の240Z(S30)に戻った”という言い方もできるが、今の時代のモダンさは、他の車種(アリアなど)のデザインもバランスも加味しながら、S30をオマージュとして大事なポイントは残しながら進化させた結果がこの形なんです」と教えてくれた。Z PROTOは常に作りながら進化して、300ZXのようなテールランプや240Zのヘッドライトなども、あくまで途中で進化してきた結果だという。

ルーフと窓の間にあるシルバーが刀を連想させる

 さらに田井氏は「もっともバランスで考えたところは、ボディサイドにあるシャープなライン。上の面と下の面を切り分けています。こういったのは昔はやらなかったけれど、ドアハンドルから柔らかいボリュームでリアフェンダーができていて、その後ろにLEDでしか表現できない今の時代のデザイン。この辺りをどこまで丸く作るか、どの辺りをシャープに作るか、ランプはどのくらい薄くするかなど、とても苦労した」と苦労秘話を明かしてくれた。

 続けて田井氏は「フェンダーの高さや、フェンダーとボンネットのつながりの“丸み”がボンネットの長さを強調してくれるんです。こういったバランスも大変だった。ロングボンネットフードに見えて、豊かでシャープさがあってというのを、日々チューニングしながら作ってきた」と語る。

絶妙な凹凸やラインが融合しているボンネットフード

 ここで再びアルフォンソ氏が「30年前にカリフォルニアから初めて日本に来た時、田井さんがまだ若い頃、300ZXのデザインをしていたのですが、それを見たとき、そのシンプルさに衝撃を受けました」と自身とZ、自身と田井氏との出会いのエピソードを教えてくれた。

 それを聞いた田井氏は「300ZXの最初の開発の段階から携わっていて、あれはZを革新させようとしたモデルだったと思うんです。Zって意外とジオメトリックにできていて、正面から見ると真っ直ぐな線があって、そこにランプがある。すべて曲線をつなぐというクルマではなく、ジオメトリックなものと柔らかさを共存させる作り方なんです。Z PROTOも革新という意味合いでは同じ考え方ではありますね」と、歴代Zの伝統を継承しながらも、進化することで革新させたいという想いが込められているという。

出会いは30年前の300ZXの時代だったという2人

 ボンネットの中心のバルジとその前で、意識的に線を折って作り、サイドも同様に“折るところは折る”“つなぐところはつなぐ”と意識して全体をデザインしたと、デザインのテクニカルな話についても田井氏は語ってくれた。

 インテリアについては、もともと実用的でスポーティだったのでそれを踏襲し、ハイライトとしてメーターをデジタルにしつつも、タコメーターを映し出し、レッドゾーンに入ると赤い帯が表示されるなど、最近のレーシングカーのような表現方法を取り入れている。また、ステアリングも伝統的な3本スポークだが、処理的には現代の技法を取り込み、スイッチやナビも同様に現代の技術を生かしているという。

 最後にアルフォンソ氏が田井氏に「どの部分が一番好き?」と聞くと「後ろ斜め45度からのリアビューかな。スーッと落ちていくお尻。それと力強いフェンダー、刀のルーフなど、たくさんの要素がひと目で見られるこの角度が好きですねぇ」と締めくくった。