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もてぎで航空自衛隊「F-2B戦闘機」がデモフライト 坂東代表は「ドリフトしてんじゃん」と

航空祭のない2020年におけるレアフライト

2機編隊でツインリンクもてぎ上空を飛ぶ航空自衛隊「F-2B戦闘機」。機体記号23-8113と33-8119が松島基地から飛来した

 SUPER GT第6戦もてぎの決勝日にあたる11月8日、決勝レース直前のオープニングセレモニーで航空自衛隊松島基地第4航空団第21飛行隊に所属する「F-2B戦闘機」が歓迎フライトを実施した。この歓迎フライトは例年実施されているもので、2020年もSUPER GTを運営するGTアソシエイションの依頼に航空自衛隊が応えることで実現したイベントになる。

 2020年のオープニングセレモニーに参加した機体は機体記号23-8113(113号機)と33-8119(119号機)の2機。宮城県にある松島基地から栃木県のツインリンクもてぎに飛来し、サーキット上空をフライパスしたほか旋回飛行を行なうなどの機動飛行を実施。サーキットに訪れた観客に迫力ある飛行を披露した。

 ある意味例年どおりとも言えるデモフライトとなるが、2020年は特別なデモフライトになっていた。

 航空自衛隊は地域振興や自衛隊広報の観点から例年自衛隊基地を数日開放し、デモフライトなどが伴う場合もある「航空祭」や「基地祭」を実施している。2020年度も多くの航空祭の開催が予定されていたが、3月以降コロナ禍が拡大するなか年内のすべての航空祭が中止となっている。

 基地での訓練を除き2020年度で航空自衛隊が一般観客の前でフライトを行なったのは、5月29日にブルーインパルスが東京上空で医療従事者などに敬意と感謝を示すために実施したもののみ。そういった意味で、ツインリンクもてぎも入場者数を制限していたとはいえ、当日訪れた観客にとっては貴重な機会であったことになる。

急減圧によって生ずるヴェイパーを主翼から出しながら飛行するF-2B。F-2やF-16はブレンデットウィングのためか、ヴェイパーを見かけることが多い気がする。激しい機動飛行をしているがゆえの現象
こちらは主翼正面の様子がよく分かるカット

 このようなフライトを実現できた背景には、例年GTアソシエイションがしっかり関係性を築いてきたことに加え、ツインリンクもてぎと松島基地の特別な結びつきもあるだろう。ツインリンクもてぎでは2003年のインディジャパン初開催時に松島基地にデモフライトを依頼。その年はブルーインパルスが参加している。

 その後も、MotoGPやインディジャパンなどのビッグイベントの際は、松島基地や茨城県の百里基地にデモフライトを依頼。松島基地のF-2やF-2B、百里基地のF-4EJやT-4などがフライトを行なってきた。また、ツインリンクもてぎは北関東に位置することから東北地方も集客地域として見ており、例年夏に開催される松島基地の航空祭にはもてぎエンジェルが秋のイベントプロモーションのために参加することがあるなど、多方面での交流が行なわれていた。

 インディジャパンは2011年を最後に開催されなくなって久しいが、この最後の年はツインリンクもてぎのオーバルコースである「スーパースピードウェイ」が東日本大震災によって被災。ロードコースを使って行なわれたのを覚えている人もいるだろう。インディジャパン最後の年の歓迎フライトは百里基地のF-4EJによって実施されたが、松島基地からの歓迎フライトにならなかったのは、松島基地が東日本大震災によって甚大な被害を受けており復興途上にあったから。

 ちなみに、今回デモフライトを行なった119号機は、その東日本大震災で津波被害に遭った機体で、後に三菱重工業やIHIによって修復が行なわれ復活した機体になる。

インディジャパン 300マイル決勝リポート(2010年9月19日決勝開催)

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/395474.html

日本で最後の開催となった「インディ・ジャパン・ファイナル」(2011年9月18日決勝開催)

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/479185.html

アフターバーナーを使った高G旋回に「ドリフトしてんじゃん」と坂東代表

アフターバーナーを使った高G旋回を披露するF-2B。搭載エンジンはIHIがGEのライセンスを受けて生産する「F110-IHI-129B」

 2機のF-2BによるデモフライトはGTアソシエイションの定例会見後のタイミングで実施。11時15分ごろから始まった。

 113号機と119号機の2機のF-2Bは、グランドスタンドと正対する会場正面から進入。最初の飛行は左旋回から始まった。歓迎飛行の後に会場アナウンサーのピエール北川氏から紹介を受けていたが、グランドスタンド屋上に航空自衛隊のスタッフにより無線基地局を開設。この基地局をショーセンター(演技の中心位置)として進入していたようだった。

 その後、最終コーナー方向から進入して360度水平旋回をするなど、ツインリンクもてぎ上空でハデなフライトを実施。とくに360度旋回時には、F-2Bに搭載されているエンジン「F110-IHI-129B」からアフターバーナー炎が美しく見え、ターボファンエンジンらしいやや低めの轟音を出しながらミリタリー推力以上のパワーによって高G旋回を行なっていた。

 このF-2B歓迎フライト時には、フライトを要請を行なったGTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏も定例会見を終えてピットビルの屋上に上がりデモを見学。高G旋回時にはF-2Bがテールスライドしながら旋回していることから、「ドリフトしてんじゃん!!」と楽しそうにフライトに見入っていた。

「ドリフトしてんじゃん!!」と、楽しそうにフライトを見守る坂東代表
グランドスタンド屋上に設置された臨時基地局。ここがショーセンターとなっていた
基地局に向かってピットビル屋上からあいさつするGTAスタッフ。左が坂東代表

 坂東代表はグランドスタッフ屋上の航空自衛隊臨時基地局スタッフが紹介された際には、ピットビル屋上から大きく手を振ってあいさつ。自身が航空自衛隊や防衛省に要望したフライトが無事に終わり、次の仕事へと向かっていった。

 コロナ禍により航空祭の行なわれなかった2020年、観客が戻りつつあるサーキット上空を元気づけるように飛んでいた2機のF-2Bは、とても印象的なものだった。

秋晴れの空の下、ホテルツインリンク上空を緩旋回する2機のF-2B

【お詫びと訂正】記事初出時、ツインリンクもてぎの所在地表記に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。