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愛知製鋼、FC向けステンレス鋼開発体制を強化 世界初の90MPa高圧水素ガス環境で回転曲げ疲労試験開始
2021年6月3日 06:00
- 2021年6月2日 発表
愛知製鋼は6月2日、FCV(燃料電池車)や水素ステーションの部品に必要なステンレス鋼の開発において、世界初となる90MPaの高圧水素ガス環境における回転曲げ疲労試験装置を開発して、試験評価を開始すると発表した。
同社では、関工場(岐阜県関市)内に4.5億円を投じて試験評価体制を確立、90MPaの高圧水素ガス環境において回転曲げ疲労試験評価を開始してステンレス鋼開発を強化する。
同社が新たに開発した装置は、従来型の試験装置と比較して高速の疲労試験評価が可能となり、長時間を要する疲労試験時間を10分の1以下に短縮することを実現させた。
具体的には、「マグネットドライブ」と呼ぶ磁力で動力を伝える機構を採用することで、試験容器内に設置された回転曲げ疲労試験機構に動力を伝えることに成功。ガスシール部を持たない構造で軸回転させることにより16.5Hzの高速回転を実現させた。
これにより、一般的に求められる1000万回の繰り返し疲労試験に、従来の試験装置では試験片1本あたり118日を要していたのに対して、新たな装置では従来の10分の1以下となる8日に短縮させた。
今後、同社では従来型の試験装置と新たに開発した回転曲げ疲労試験装置を併用することで、ステンレス鋼開発のスピードを飛躍的に向上させることができるとして、ステンレス鋼の開発体制を強化する。
同日開催されたオンライン説明会では、世界のFCVには70MPa高圧水素ガスタンクが搭載されていて、高圧水素ガスにさらされる鋼材には、その優れた耐高圧水素ガス脆化特性から、ステンレス鋼の適用が進んでいることが説明された。
同社においてもトヨタグループの特殊鋼メーカーとして、他社に先駆けて高圧水素用ステンレス鋼を開発して水素ステーションの高圧水素系機器やFCVの高圧水素系部品に供給してきたことが報告された。
新たな試験評価体制に、同社ステンレスカンパニー ステンレス事業統括部長 中川英樹氏は「試験の速度が上がり、試験にかかる期間を従来の10分の1以下にすることができた。お客さまの開発スピード合わせて鋼材開発ができ、FCVや水素ステーションで必要な材料をお客さまにお届けできる」との意気込みを述べた。