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ホンダ、従業員のアイデア・夢を実現する新事業創出プログラム「IGNITION」発のベンチャー企業「株式会社Ashirase」を設立
2021年6月14日 17:37
- 2021年6月11日 発表
視覚障がい者の外出をサポートするナビゲーションシステム「あしらせ」を開発
本田技研工業は6月11日、従業員が持つ独創的な技術・アイデア・デザインを形にし、社会課題の解決と新しい価値の創造につなげる新事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」の全社展開を開始したことを発表した。
同時に、IGNITION発のベンチャー企業第1号となる「株式会社Ashirase(あしらせ)」の設立を発表。Ashiraseは、視覚障がい者の歩行をサポートするシューズイン型のナビゲーションシステム「あしらせ」を開発しており、「視覚障がい者がより安全に、気持ちに余裕が持てるナビゲーション」をコンセプトに、目的地までより安全に移動でき、自立につながるプロダクトとして2022年度中の発売を目指していく。
シューズイン型のナビゲーションシステムとなる「あしらせ」は、靴の中に取り付ける立体型のモーションセンサー付き振動デバイスと、スマートフォンアプリで構成。アプリで移動ルートを設定し、靴の中に取り付けたデバイスが振動してナビゲーションを行なうというもの。
直進時は足の前方の振動子が振動、右左折地点が近づくと、右側あるいは左側の振動子が振動して方向を知らせる。進行方向を直感的に理解できるため、ルートを常に気にする必要がなくなり、より安全に、気持ちに余裕を持って歩行できるようになるとしている。
視覚障がい者は1人で外出する際、安全とルートの確認を繰り返し行なっているものの、情報取得は限られた感覚機能で行なうため、どうしても注意が行き届かずに「道に迷う」「不安全に陥る」などの課題が発生する場合があるという。また、これらの課題により「視力に問題がなく、自由に歩いていたときのことを思い出して悔しい」(ロービジョン、中途失明者)や、「道に迷ったとき、周囲の人に話しかけても無反応なことがあり、なぜ無反応なのか理由が分からず怖い」(全盲、中途失明者)といった心理的な課題にもつながっていることが、開発者によるヒアリングで見えてきたとしている。
なお、ロービジョン(よく見える方の目で、矯正視力が0.1を超えるが、0.5未満という定義)を含めた日本の視覚障がい者数は、2007年時点で164万人と推定されており、2030年には200万人近くまで増加するという予測がされている。
Ashirase 代表取締役 千野歩氏は、「身内の事故をきっかけに、視覚障がい者のより安全で自由な移動を実現したいと活動を始めました。『あしらせ』を開発し、ホンダの新事業創出プログラム『IGNITION』に挑戦して、今回(株)Ashiraseの起業に至りました。『あしらせ』の発売に向けて、これからたくさんの壁にぶつかることになると思いますが、1つひとつ乗り越え、視覚障がい者の自由な移動の実現に向けて、全力でチャレンジしていきます」とコメントしている。
さまざまな部門の従業員が持つ社会に役立つアイデアや夢を実現すべく取り組みを全社展開
IGNITIONは、2017年にホンダの研究開発を担う子会社である本田技術研究所で開始されたプログラム。開始以来、IGNITIONには多くの事業アイデアの応募があり、すでにホンダの事業と親和性が高い数点の提案は社内での事業化を目指して推進されているとのこと。
一方、ベンチャーを起業し、その特性を生かして取り組んだ方がより早く社会に価値を提供できる提案もあったため、2020年に「社内での事業化」に加え、「ベンチャーを起業して事業化を目指す」という方法をIGNITIONに追加。これにより、IGNITION発のベンチャー企業第1号となるAshiraseが設立された。
2021年4月からはIGNITIONの全社展開を始め、すべての従業員が新事業創出にチャレンジできるようになり、技術者だけでなく生産や営業、管理などさまざまな部門の従業員が持つアイデア・夢を実現することで、まだ世の中にないモノやコトを創造し、新しい風を起こしていくとしている。
なお、IGNITIONはベンチャーキャピタルと連携して実施しており、IGNITIONの最終審査では審査員として参画し、投資家としての厳しい目で審査されているという。また、IGNITIONの審査過程において、提案者はベンチャーキャピタルのアドバイスや支援が受けられるとのこと。
IGNITIONの特徴
・勤続年数や所属部門に関わらず、日本のホンダ正規従業員は誰でも応募可能
・最終審査を通過したアイデアは、社内で事業化、あるいは起業しベンチャーとして事業化
・事業化判断までの期間は6か月間を基本とし、期間中は専門スキルを持った社内人材によるタスクフォースチームが結成され、提案者をサポート
・審査過程において、ベンチャーキャピタルがアドバイスや支援を実施
・起業したベンチャーの独立性を担保するため、ホンダの出資比率は20%未満
本田技研工業 常務執行役員 IGNITION審査委員長 水野泰秀氏は「ホンダには独創的な技術やアイデアと、人の役に立ちたい、社会に貢献したい、という熱い想いを持つ従業員がたくさんいます。IGNITIONはそうした従業員の技術やアイデアを育て、形にし、新しい価値を創造して社会課題の解決に結びつけるプログラムです。そこに今回、起業という新たな挑戦の全社員向け展開を始めました。起業のハードルは非常に高いですが、このIGNITIONをきっかけに、ホンダのチャレンジングスピリットをさらに活性化し、既存事業の枠を超えて、世の中にないモノ・コトを創造し、新しい風を起こしていきます」とコメントしている。