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マツダ、電動化100%に向けスカイアクティブはマルチソリューションへ マイルドHEV 48V、EV、RE発電
2021年6月17日 20:14
- 2021年6月17日 発表
開発や生産に関する土台作りは完了
マツダは6月17日、「中期 技術・商品方針説明会」をオンラインで行なった。登壇したのは、同社 専務執行役員 研究開発・コスト革新統括 廣瀬一郎氏と、常務執行役員 R&D管理・商品戦略・技術研究所・カーボンニュートラル担当 小島岳二氏の2名。
冒頭で廣瀬氏は、2018年秋に技術説明会を実施して以降、技術の進捗に関する説明会を持てていなかったことから、今回の発表の場を設けたとあいさつ。また、新型コロナウイルス感染拡大や中期経営計画の見直しなど、経営環境も大きく変わるなか、「2050年に向けてのカーボンニュートラルへの挑戦や、2030年にはEVの生産比率をグローバルで25%を想定する公表をしているが、その後の変化も含めて説明する」とした。
今回の説明会は、2007年に発表した技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言」、さらに、2017年にアップデートを行なった「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」に基づいて行なわれるもので、廣瀬氏は「マツダは当時から地球環境を守るための施策であるマルチソリューションを掲げていて、ブレることなく進めてきた」と紹介した。
その実現のためにマツダでは技術革新とプロセス革新を積み上げていくことを資産とし、その資産を活かし次のブロックをさらに積み上げるという「ビルディングブロック構想」を築いてきた。「この積み上げてきた資産があるからこそ、2050年のカーボンニュートラルへの挑戦を宣言できた」と廣瀬氏は述べた。
また、これまでの振り返りとして、ベース技術を確立させて2012年からCX-5に投入し、この世代では、アイドリングストップ技術、減速エネルギー回生技術、モーター駆動技術など、電動化への基盤となる技術開発を進め、「スカイアクティブ テクノロジ フェイズ1」として6年間で9モデルの商品化を進めてきたと解説。このモノ造り革新により、短期間で異なる多様な商品を低投資で開発・生産できるシステムとプロセスを資産とするブロックを同時に積み上げられたという。
続けて、2018年発表の「MAZDA3」から「スカイアクティブ テクノロジ フェイズ2」へと移行し、EV化へ向けたマルチソリューションが可能なアーキテクチャへの進化を遂げたという。「MAZDA3」「CX-30」「MX-30」のスモール群では、48Vのマイルドハイブリッド、EV、ロータリーエンジンを発電機としたハイブリッド、プラグインハイブリッド化に対応できるシステムを構築。アラバマの工場で生産予定の「新型SUV」も、この(エンジン)横置き型のマルチソリューションアーキテクチャで準備を進めていると紹介した。
さらに、今期末に生産開始予定のラージ群では、(エンジン)縦置き型アーキテクチャに、48Vのマイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド、直列4気筒、直列6気筒のガソリンおよびディーゼルエンジンなどに対応可能なマルチソリューションアーキテクチャを開発。これにより「スカイアクティブ マルチソリューション スケーラブル アーキテクチャ」が完成するという。また、廣瀬氏はこのラージ商品群に関する技術説明と体験会を、2021年後半から2022年前半にかけて実施する意向であることも質疑応答で明かした。
水素エンジンについては、「マツダの技術資産として活用していきたい」
さらに「e-FUEL」や「バイオディーゼル」といった再生可能燃料や、水素燃料技術に関しても、これまでしっかりと積み上げてきたとし、技術資産として多種多様な技術や商品に活用できる状態あることを明言。生産工程に関しても、設備の汎用化を拡大させ、内燃機関搭載車とEVの混流生産を実現していることを紹介。もちろん、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、さらなる設備の汎用化の加速を進めていくとした。
水素技術の現状を問われた廣瀬氏は「一旦は棚入れしたものの、昨今のカーボンニュートラルへの動向で再注目されていることは周知していて、機会があれば今のビルディングブロック構想に取り入れ、マツダの技術資産として活用していきたい」とした。
このビルディングブロック構想で築いたスカイアクティブ マルチソリューション スケーラブル アーキテクチャを活用し、横置き型のスモール群と縦置き型のラージ群の商品化を進め、2025年までに、HEV(ハイブリッド)モデル5車種、PHEV(プラグインハイブリッド)モデル5車種、EVモデル3車種を、日本、欧州、米国、中国、アセアンを中心に順次導入すると名言。また、この中にはトヨタより供給を受けるハイブリッドシステムモデルも含まれるという。
ロータリーエンジンを発電機としたハイブリッドは、すでに2022年度にMX-30に搭載されると公表されているが、それ以外の展開についてはここでは明言されることはなかった。
そして2025年以降は「スカイアクティブ テクノロジ フェイズ3」へと移行し、新たな「EV専用スケーラブル アーキテクチャ」が登場する。すでに開発は進められていて、廣瀬氏は「もっとも重要なポイントは一括企画で構想を固めること」といい、ここで活躍するのがトヨタとデンソーと共にEVの基本構想に関する技術開発を共同で進めてきた「EV C.A. Spirit」でのモデルベース開発で構築した基盤技術となる。
マツダ、デンソー、トヨタの3社、EV共同開発の新会社「EV C.A. Spirit 株式会社」設立
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1083273.html
この基盤技術を活用し、さまざまなモデルの構想を練り、それをどのようなアーキテクチャ構想とフレキシブル生産システムで対応するのかといった構想検討を進めているとのことで、2025年ごろ~2030年にかけてこのアーキテクチャを活用した商品を複数モデルを順次導入したいと考えていると述べた。
マツダの考える安心・安全機構
続けて廣瀬氏は「MAZDA PROACTIVE SAFETY」の考え方に基づき、正しいドライビングポジション、ペダルレイアウト、良好な視界視認性など、基本安全技術の進化をベースブロックとして、人間の認知や判断をサポートする技術を次のブロックとして準備。安全と安心に関しても、ビルディングブロック構想を活用していることを紹介。さらにこの上には、人間中心の自動運転コンセプトである「Mazda Co-Pilot Concept」があり、いよいよこの技術を実際に提案できる段階にきたと実際のシステム作動動画を流した。
動画では「Mazda Co-Pilot Concept」を搭載した試作車が登場。システムが常にドライバーを見守っていて、突然意識を失った場合、直ぐにそれを感知して運転を交代。道路状況を見つつ、周囲を巻き込むことなく安全な路側帯へと車両を進めて停止。そこから緊急通報を行なうまでの一連の動作を紹介した。
このMazda Co-Pilotはバージョン「1.0」では高速道路では路肩に停止させ、一般道では同一車線での停止を可能とし、将来的にはバージョン「2.0」へと進化させ、一般道でも路肩に退避停止し、二次的な事故の防止も図れるようにするいう。廣瀬氏はこののMazda Co-Pilot Conceptの詳細な技術に関してもいずれ説明と体験会を行なうとしている。
また廣瀬氏は「自動車産業の枠を超え、コネクテッドの領域にも果敢に挑戦してきた」と語り、「MAZDA CONECT1」ではたくさんの学びを得られ、その反省に基づき「MAZDA CONECT2」へと進化させてきた流れを解説。異業種やコネクテッドサービスの先駆者と共同検討することで、現状では進化と成果を確認できるようになり、今後もよりマツダらしいMaaSへと進化させるとしている。
さらに、次世代向けの「電気電子アーキテクチャ(EEA=Electric Electronic Architecture)」の開発については、詳細はまだ説明できないと前置きしたうえで「これからの変化や要求される価値づくりをするうえで、とても重要なものなのであり、仲間とともに進めていきたいと考えている」と語り、Mazda Co-Pilot Conceptと同様に別途で技術解説の機会を設けると話した。
最後に廣瀬氏は、2007年以降ずっと大切にしてきた開発哲学「人間中心」を基礎とし、「地球」「社会」「人」の3本柱でサステイナブルな価値を提供していくと共に、どの領域においてもその中心にあるのは人であり、人の能力を最大限に発揮できることを支援できるクルマを提供し、サステイナブルな社会を実現していくことを宣言して締めくくった。
ロードスターの可能性は……
質疑応答で「ロードスター」の今後について問われると、廣瀬氏は「2030年までに100%電動化するといった中に入れている」と明言。また、小型スポーツカーの特徴を活かした電動化を最適に組み合わせて、ロードスターのDNAを磨いていくと宣言した。一方、小島氏は「今開発中のe-FUELやバイオ燃料によって、内燃機関でもカーボンニュートラルが達成できるような形にしたい」と述べ、未来のロードスターではなく既存のロードスターオーナーへ向けてのメッセージを残してくれた。