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BMW、初の高速電動アシスト自転車「i ビジョン AMBY」発表

2021年9月6日(現地時間) 発表

BMW初の高速電動アシスト自転車「i ビジョン AMBY」

ペダルを漕ぐことで健康も維持できるモデル

 BMWは9月6日(現地時間)、都市生活者のための初の高速ペデレック(=電動アシスト自転車)となる「i ビジョン(Vision) AMBY」をミュンヘンモーターショー「IAA MOBILITY 2021」にて発表した。外見はe-BIKEのようなi ビジョン AMBYは、都市とその周辺地域における個人モビリティに関するビジョンを提示するコンセプトモビリティの1つ。

 BMWグループは、ミュンヘンモーターショー「IAA MOBILITY 2021」にて、「サステイナビリティ」という1つの傘の下で、極めて幅広いモビリティ・ニーズに包括的に対応するサステイナブルな思考を原動力とした、2輪と4輪の多彩なモビリティ・ミックスを提案している。

BMWの「i ビジョン AMBY」とBMW Motorradの「ビジョン AMBY」

BMWのi ビジョン AMBY(左)とBMW Motorradのビジョン AMBY(右)

 AMBYは「アダプティブ・モビリティ」の意味で、BMWのi ビジョン AMBYとBMW Motorradのビジョン AMBYは、2輪でのアダプティブ・アーバン・モビリティの基本的な考え方を異なる方法で解釈した2台。共に道路の種類に応じて3段階の速度設定が可能な電気駆動システムを搭載していて、サイクルトラックでは最高速25km/h、都心の道路では最高速45km/h、複数車線の道路や都市部以外では最高速60km/hのスピードを可能としている。

 ただし、高速走行時には、保険プレートとそれに対応する免許証が必要となるほか、高速ペデレックのi ビジョン AMBYのユーザーは、電気駆動システムの支援を受けるために常にペダルを踏む必要があるが、BMW Motorradのビジョン AMBYは、スロットルグリップで加速するタイプとなっている。

 走行モードの切り替えは、ビジョン・ビークル「AMBY」とリンクしたスマートフォンのアプリを使用するが、手動でモードを選択することも可能なほか、ジオフェンシング技術による位置情報や道路の種類の自動認識、それに伴う最高速度の自動調整も可能となっている。

 現在はi ビジョン AMBYのようなモジュラー・スピード・コンセプトを採用した車両に対する法的枠組みがないため、このモビリティの開発を行なうことで法律の導入を促せるとし、BMWグループは今後数年間で都市における自動車の走れる領域が減少しても、都市でのモビリティに関する一部であり続けたいとしている。

BMWのi ビジョン AMBY

 BMWグループ・デザイン・コンセプション副社長Werner Haumayr氏は「いたるところで、既成のカテゴリーが吹き飛ばされていますが、それはいいことです。将来的には、自動車、自転車、モーターサイクルといった分類が、私たちが考え、開発し、提供する製品の性質を決定づけることはないでしょう。むしろ、このパラダイムシフトは、人々のライフスタイルに合わせて製品をカスタマイズする機会を与えてくれます。例えば、高速ペデレックのi ビジョン AMBYがそうです。i ビジョン AMBYは、自転車と軽二輪車の中間的な存在であり、お客さまが都市部で走りたい道やルートを自分で決めることができます。ペダルを回して健康を維持しながら、自由に移動することができます。モードと巧みなルート選択により、都市部を最も速く移動できる選択肢の1つとなることを目指しています」と解説している。

レーシングバイクとe-bikeを融合したスタイルを実現

 i ビジョン AMBYのデザインは、視覚的な軽さとパワフルな運動性で定義され、細部に至るまで、通常のe-bike以上の能力を表現している。フレーム構造は大きくなり、あらゆる面で強度と安定性が向上している印象を与え、モダンなフレームジオメトリーは、レーシングバイクとスポーティなe-bikeをミックスしたようなスタイルを実現。

 また、アッパーフレームチューブは、4本の彫刻的なアルミニウムフレームで作られていて、見た目だけでなく、表現力豊かでモダンな意思を表示した。さらに、見た目だけでなくわずかに盛り上がったデザインが、ダイナミックな意図を強調し、フレームの隙間にはバックパックやラップトップバッグを収納できるスペースとして利用可能としている。ハンドルバーの手前にはスマホ用パッドがあり、マグネットでデバイスを安全に固定でき、視認性を高めたという。

バッテリは中央に配置

 バッテリはフレームの中央部に配置され、2000Whのバッテリにより走行モードに応じて最大300kmの航続距離を実現。また、急速充電技術により、わずか3時間で充電が完了するとしている。ペダルの近くに設置されたドライブユニットは、ブラックカラーでペダルを回しているときにのみアシストを行なう機構。パワー伝達にはメンテナンス性の高い歯付きベルトを採用し、トランスミッションはドライブシステムに組み込まれている。

 さらに、BMW Motorrad独自の洗練された片側スイングアームが、後輪とフレームを連結して、前後120mmのサスペンショントラベルは、60km/hまでの街中でのあらゆる用途に最適という。また、27.5インチのホイールには、通常よりも大きく幅広のタイヤが装着されていて、高速走行時にも優れた快適性と安全性を確保している。

フレームと一体化したハンドル
スイッチ類

 フレームと一体化したハンドルは、非常にテクニカルで上質な雰囲気を演出。幅広のハンドルバーには、スリムで水平なLEDライトストリップが組み込まれるだけでなく、ブレーキなどの配線も内部を通すことで封印。縦型のLEDリアライトは、シートポストに組み込まれ、その下には使用中のライディングモードを示す「e-inkディスプレイ」を搭載している。

 センター固定式のリアホイールは、簡単に脱着できるため持ち運びも可能とし、フロントサスペンションフォークとホイールも、ネジを使った古典的な方法で取り外すことが可能となっている。その結果コンパクトな構造となり、バッテリも取り外して別々に収納することで積載重量を減らすことができるとしている。

サスティナビリティを重視した製品作り

 i ビジョン AMBYは、その基本コンセプトだけで、ゼロ・エミッションの機能性、交通エリアの整備、エネルギー効率など、都市近郊の交通手段として多くのメリットをもたらせるが、同じくIAA 2021 Mobilityで初公開したコンセプトカー「i ビジョン サーキュラー」の循環型経済の一部にもなっているという。

コンセプトカー「i ビジョン サーキュラー」と「i ビジョン AMBY」

 フレームは、i ビジョン サーキュラーの本体と同じアルマイト処理された二次アルミニウムで作られ、ハンドルバーとバッテリカバーの一部には、i ビジョン サーキュラーのバンパーにも採用されているリサイクル・プラスチック「フローティング・グレー・ポリマー」を使用。これらの材料は、製品が寿命を迎えた後、より容易にBMWグループの材料サイクルに戻すことができるほか、ブレーキフルードには菜種由来のオイルが使用されている。また、i ビジョン AMBYの部品は、ドイツ国内で生産し、サプライチェーンを考慮して輸送距離を最小限に抑えるようにしている。

 ユーザーは専用開発されたアプリを使って、i ビジョン AMBYを起動し、保存されている免許証のクラスを読み込んだり、必要なレベルの保険の適用が可能となる。アプリは車両キーの役割も担っていて、BMWグループが自動車業界で初めて導入したデジタルキーと同様に、スマホの識別機能(顔認証など)を利用して、対応するiPhoneがデジタルカーキーとなり、ユーザーは安全かつ簡単にBMWの解錠、施錠、そしてもちろんエンジン始動ができるようになる。

 電動調整式シートは、アプリに保存されたプロファイルに合わせて、出発前にユーザーの身長や内股の長さなど、事前に入力したデータに応じて自動的に調整される。また、いつでもソフトウェアのアップデートや調整を行なうことも可能とし、スマホの充電や盗難防止、自転車の検索機能なども利用できるとしている。さらに今後は先進安全支援システムなどの追加も検討しているという。

【BMW】i ビジョン AMBY(57秒)

i ビジョン AMBYのパフォーマンスデータ

項目能力値
バッテリ2000Wh
チャージ時間3時間(急速充電)
ビークルモード1(V1)最大25km/h(15.5mph)
ビークルモード2(V2)最大45km/h(28mph)
最大ビークルモード(V3)最大60km/h(37mph)
航続走行距離(V1)300+km(186+miles)
航続走行距離(V2)180km(112 miles)
航続走行距離(V3)75km(47miles)
ホイールベース1160mm(フレームサイズ M/L)
サスペンショントラベル120mm(前後とも)
重量約30kg