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BMWがパートナー企業と共に目指す「サスティナブル」な未来とは? CO2排出削減2億tに向けてのロードマップ解説

2021年9月7日 実施

具体的な目標数値を掲げて行動に移している自動車メーカーの「志」

 ビー・エム・ダブリューは9月7日、報道陣向けに現在BMWの企業戦略の核となっているサスティナビリティについて、その意味や目標、行動指針などをまとめた説明会を実施した。

 説明したのは広報部の佐藤毅氏。BMWが掲げているサスティナビリティとは、決してBMW1社の目標ではなく、BMWらしいクルマを提供しながら、提携しているパートナー企業はもとより、原材料の掘り起こしを行なっている人材の生活も含めた大きな輪で捉えているという。つまり、地球環境をよくするサスティナビリティな活動に取り組むのはもちろんだが、BMW自体がサスティナビリティになることが最終目標だという。

BMWのサスティナビリティについての説明を行なったビー・エム・ダブリュー株式会社 広報部 佐藤毅氏

 こういった動きはここ数年の「カーボンニュートラル」「SDGs」「サスティナブル」といった単語が多用されることで大きな流れを生んでいるように感じがちだが、実はBMWは約50年前の1972年、ミュンヘンオリンピックにてBMW初のEV(電気自動車)をマラソン競技の伴走車として提供。市販車ではなく特別に作ったEVではあるが、すでに当時から地球環境についての活動をスタート。そして翌1973年には自動車業界で初の環境保全担当を設置したという。

BMW、「i ビジョン サーキュラー」世界初公開 100%リサイクルを可能とするコンセプトモデル

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1349024.html

 そして2000年には「Hydrogen 7」を発表、2007年にはより効率よく燃料を使うための「Efficient Dynamics」を発表。2013年にはiブランドを設立して「i3」「i8」を発表し、BMWのEVの第1章が本格的に幕を開けた。また、最近では企業としてこれまで別々に発表・報告していた「サスティナビリティレポート」と投資家向けの「フィナンシャルレポート」をまとめて発表するように変更したという。

BMWのサスティナビリティに関する歴史
企業としてのレポートをより分かりやすくまとめたという
取締役会長オリバー・ツィプセ氏が2030年までの目標数値とキーワードを発表
「車両使用時」「製造工程」「サプライチェーン」の3本の柱が重要となる

 BMWはすでに取締役会長であるオリバー・ツィプセ氏が「2030年までにCO2排出量を2億t削減する」と具体的な目標数値を掲げている。2億tのCO2と言われても想像しにくいが、これは人口約150万人のドイツの都市ミュンヘンが1年間に排出しているCO2の約20年分に相当する量だという。その目標についてツィプセ氏は、「RE:THINK(リシンク)=再考」「RE:DUCE(リデュース)=削減」「RE:USE(リユース)=再使用」「RE:CYCLE(リサイクル)=再資源化」といった具体的な手法も挙げている。

 また、これらの削減目標は、先述した通り自動車を製造しているBMW単体で成し得るのではなく、資源採掘から機械加工などを行なっているサプライチェーン、そして走っている自動車も対象となり、「車両使用時」「製造工程」「サプライチェーン」の3本の柱を持って達成を目指すものとしている。

Use Phase(車両使用時)

 BMWは車両使用時に排出されるCO2削減の具体的な目標数値として、2030年までに2019年比で40%の削減を掲げている。これを達成するために、BMWでは製造・販売する車両を今の内燃機関を持つモデルからEVモデルへと軸足をスイッチしていくことを掲げ、そのために3段階のフェーズを設定。すでにEVを作るフェーズIは「iブランド」を立ち上げた2013年に通過していて、現在はフェーズIIに差し掛かっていて、ポートフォリオ=商品ラインアップの電動化を推進している最中となる。フェーズIIIでは電動モビリティを中心に車両を製造するとしている。

eモビリティのロードマップ

 現在のフェーズIIの具体的なゴールは、2025年までにEVを対前年比50%増加させる。2025年末までに200万台のEVをユーザーに届ける。2023年時点でラインアップしている各セグメント(1シリーズ、2シリーズなど)に対して90%のEVを提供していくとしている。そして2025年~2030年にかけてのフェーズIIIでは、対前年比20%増でEVを増やしていく。2030年時点で全世界での販売台数の50%をEVにする。同じく全セグメントにおいてEVを提供し、2030年までの40%のCO2排出削減達成を目指すという。

 EVのラインアップ拡大については、フェーズIIで「iX3」「iX」「i4」がすでに発表されているが、2022年以降には「X1」「7シリーズ」「5シリーズ」「MINIクロスオーバー」などが予定されている。その他にも明かされていない車種の準備も進められているという。そして将来的(2030年)には、全セグメントにEVの設定が完了している予定となる。

 また、日本市場ではEVがまだまだ一般的ではない現状を踏まえ、実際にユーザーの抱えている疑問を解消させることもメーカーとしては重要な使命であるという。

3段階のフェーズを設定
2030年に向けての目標値
新世代EV「iX」
同じく新世代EV「i4」
MINIブランドは2030年台前半にEVブランドへと飛躍
ユーザーのサポートも重要な活動の1つ

Production(製造工程)

 製造工程では2030年までに2019年比で80%の削減を目標としている。具体的にはCO2を排出しないクリーンエナジーを使用して自動車を製造することであり、実はすでに現時点でBMWの全工場でクリーンエナジーのみで製造が行なわれていて、この目標は達成済みとしている。実例の1つとして南アフリカにある部品工場では、使用している電気の約31%を3万頭の牛の糞から調達しているという。

 その他にも電気を作る訳ではないが、ドイツのライプツィヒ工場では150万匹の蜂を飼育しているという。これは工場を建てる際に森林伐採など、少なからず環境に影響を与えていることから、花から花へと花粉を運んで受粉させる蜂を飼育することで、緑を増やす地球環境保全の施策の1つとして行なっている。ちなみに工場ではオリジナルのハチミツも売っているという。

Supply Chain(サプライチェーン)

 最後はパートナー企業などを含めたサプライチェーンのCO2削減について。ここでは2030年までに2019年比で20%の削減が目標値としている。ここでもさまざまな取り組みが行なわれていて、例えばパーツの運搬についてもより効率よく運ぶことで輸送中に出るCO2を抑制できるし、ドバイのアルミニウム生成工場では約半分の電力を太陽光でまかなうなど技術を駆使してCO2排出削減率を伸ばしている。

 また、BMWではパートナー企業を選定する際、その企業がクリーンエナジーをどのくらい使用しているか、従業員の労働環境などにも注目。同じ志を持つパートナー企業と仕事をすることで、BMWグループ全体がよりサスティナビリティなグループへと成長するとしている。

ドバイにある太陽光発電パネル

日本国内における主な活動について

 欧州自動車メーカーでは初めて100%出資の会社として日本に誕生したビー・エム・ダブリュー(日本法人)は、9月22日に設立40周年を迎える。会社を設立した7年後の1988年には、VDC(新車整備センター)を開設。1996年にはISO14001の環境マネージメント認定を取得。2008年にバイオウォーターリサイクルシステムを導入し、洗車に使用する水の90%を再利用できるようにもしている。また廃材についても99%リサイクルを実現し、BMWがグループ全体でサスティナビリティな活動をしている例として紹介した。

 さらに車両販売についても、より環境にいい車両を魅力的な価格に設定する取り組みとして「Edition JOY+」を紹介。ほかにも「ハンズオフ」機能の搭載についても、ドライバーの疲労軽減する技術もサスティナビリティの1つと捉えているという。

1988年にVDC(新車整備センター)設立
1994年にパーツリサイクルを開始
Edition JOY+をスタート
社会貢献活動の例
ユーザーの走行した距離に応じたチャリティー募金を実施した
スタートアップ企業の応援も行なっている

 最後に佐藤氏は、あまり表には出てこないが、ビー・エム・ダブリューでは「教育やワークショップ」「フードロス問題」「環境を守るためのゴミ拾い活動」「環境保全団体へのチャリティー募金」「スタートアップ企業の応援」など、幅広いCSR(社会貢献)活動を行なっているとを紹介し、説明会は幕を閉じた。