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トヨタ デザイン統括部長サイモン・ハンフリーズ氏、「EVの時代は、もっといろいろな楽しみ方ができるチャンスでもあります」

トヨタ自動車株式会社 デザイン統括部長 サイモン・ハンフリーズ氏

 トヨタ自動車は12月14日、バッテリEV戦略に関する説明会を開催して16車種のBEV(バッテリ電気自動車)を公開。2030年までに16車種を含んだ30車種のBEVを市場投入。BEVの生産台数も約200万台から約350万台に150万台引き上げ、2030年までの電池への投資も1.5兆円から2兆円へと5000億円増額する。BEV関連の研究・設備投資で約4兆円、BEVを含む電動化投資は約8兆円になることを発表した。

 BEVになることで大きく変わってくるのが、バッテリやモーターは増えるもののエンジンなどがなくなることによるクルマのデザインの自由度の向上になる。実際、この場でも展示された(そのため、世界初公開は15車種)トヨタ「bz4X」は、4690×1860×1650mm(全長×全幅×全高[アンテナ含む])とRAV4並みのボディサイズでありながら、タイヤを四隅に配置できるようになったことで、ランドクルーザーと同様の2850mmのホイールベースを実現。RAV4の2690mmと比べ160mmも長く、ワンクラス上の室内空間を実現している。

 衝突要件や歩行者保護の観点も大きく影響するが、エンジンが不要となったクルマのボンネット高も低くできる可能性があり、新しいクルマのデザインが生まれてくる余地が大きくある。

 トヨタはそうしたメッセージを強く打ち出すために、バッテリEV戦略に関する説明会にデザイン統括部長サイモン・ハンフリーズ氏が出席。同氏によるプレゼンテーション映像を公開したほか、質疑応答に対応した。

 サイモン・ハンフリーズ デザイン統括部長は、プレゼンテーション映像でさまざまなトヨタのバッテリEVの可能性を紹介しつつ、「EVの時代は、もっといろいろな楽しみ方ができるチャンスでもあります」「あなたのためのEV、私のためのEV、みんなのためのEV(EV for everyone)」と、プレゼンテーションを結んだ。

トヨタ バッテリ戦略説明会 デザイン統括部長 サイモン・ハンフリーズ氏によるプレゼンテーション映像

 このサイモン・ハンフリーズ デザイン統括部長の「EV for everyone」を引き取って、豊田章男社長は「今日発表した未来は、決してそんな先の未来ではありません。ご紹介したトヨタのバッテリEV、そのほとんどがここ数年で出てくるモデルです」と、数々のモデルの登場が近いことを予告。冒頭で紹介した、バッテリEVのグローバル販売台数で年間350万台という、従来からの200万台に150万台上積みするという驚異的な台数を発表した。

豊田章男社長、バッテリEV戦略説明会で2030年までに30車種のBEV投入を表明 レクサス「RZ」など16車種を一挙公開し電動化投資は8兆円に

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1374221.html

トヨタが2030年までに発売していくバッテリEV。写真では会場になかったeパレット(右奥)も加わって17車種になる
会場に展示された「bz4X」。発売は2022年なかばを予定、半年ほどでお目見えする
bZ Compact SUV。世界初公開車、タイヤの位置が四隅にあり、ボンネット高も低く抑えられている
bZ Small Crossover。bz4Xより明らかにコンパクトなクロスオーバー。バッテリ容量や航続距離の設計も気になるところ
bZ SDN。名前のとおりセダンタイプのクルマ。bz4Xと同じプラットフォームだろうか?
bZ Large SUV。bz4Xよりひと回り大きいSUV、このサイズもbzシリーズになる
Lexus Electrified Sport。bzシリーズとはデザインテイストが全く異なるレスサスのスポーツカー。ボンネットの低い箇所の空気の流れを、ルーフに導くなどの空力配慮も見て取れる

 質疑応答に出席したサイモン・ハンフリーズ デザイン統括部長は、改めてバッテリEVの可能性について言及。バッテリEVならではの体験を提供できると語った。

結びを求められた質疑応答にて、サイモン・ハンフリーズ デザイン統括部長

 私の考えとしては、やはりデザインおよびプロダクトということになりますが、EVの時代はお客さまに新たなエクスペリエンスを提供することができる機会を持っている時代です。

 ワクワク・ドキドキとする経験、これこそが将来に向けてカーボンニュートラルを実現できるのではないかという新たな付加価値を持って到来しています。まさにワクワクすることになったものだと考えます。

 いろいろな場合に、まずは合理性を考えるのは考え方としては楽なのかもしれません。しかし、エモーショナルな観点を考えることによってこそ、新たなチャンスが生まれる場合もあります。

 過去10年ほど自動車への関心が薄くなってきた、自動車離れが起きていると言われた時代が続いていましたけれども、今はまったく逆になりました。

 電動化されたパワートレーンばかりでなく、例えばデジタルデータなどそこでは活用することができるのではないか、新たな電動化の道筋の中から、今まで考えもしなかった新たなチャンスが生まれてくるのではないかと考えます。これまでにない体験を提供することができるのがEVなのではと考える次第です。


 ハンフリーズ氏の言葉からは、ガソリン車と異なるパワートレーン配置となるバッテリEVに新しいクルマの時代を見ていることが分かる。今回、コクピットまわりなどは公開されなかったが、エンジンの音と振動がなくなるバッテリEVにおいてはコクピット、そして室内の作り込みが大きなポイントともなるだろう。

 すでにレクサスでは、「TAZUNA」というコンセプトでのコクピットの作り込みが始まっているが、トヨタブランドではどのように展開していくのか楽しみだ。ハンフリーズ氏のいう「新たなエクスペリエンス」に期待したい。