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ポルシェ、2022年のモータースポーツ活動指針を発表 開発中の「LMDhコンセプト」も公開

2021年12月18日(現地時間) 発表

開発が進められている「LMDhプロトタイプ」

モータースポーツはポルシェにとって重要な役割を果たしている

 ポルシェAGは12月18日(現地時間)、2022年のモータースポーツ活動指針を発表した。メインとなるレースは「フォーミュラE世界選手権」「世界耐久選手権(WEC)」の2つで、同時に2023年から使用する「LMDhコンセプト」の開発もスケジュールに入っているといい、カモフラージュされたLMDhコンセプトの一部を公開した。

 ポルシェAGのCEOであるオリバー・ブルーメ氏は「モータースポーツは、ポルシェの企業戦略において常に特別な役割を果たしてきました。70年以上にわたり、最新技術のテストラボとしてレーシングステージを使用してきました。私たちは、スポーツと組織の観点から、大きな課題に直面しています。モータースポーツのDNAを維持しながら、将来を積極的に発展させていきます」と述べている。

ポルシェAG CEO オリバー・ブルーメ氏
ポルシェAG 研究および開発担当取締役 ミヒャエル・シュタイナー氏

 また、ポルシェの研究および開発担当取締役であるミヒャエル・シュタイナー氏は「私たちは持続可能性と電動化を優先事項の非常に高い位置に置いています。これは将来のモータースポーツにも反映されるでしょう。エクソンモービルとの提携によるeFuelの開発から分かるように、コンセプトカーのミッションRに加えて、この方向への最初の主要なステップが明らかになりました。たとえば、ミュンヘンで開催されたIAA MOBILITY 2021で発表したBEVレーシングカーはセンセーションを巻き起こしました。最大800kW(1088PS)を供給するこの壮大な全輪駆動レーシングカーは、将来のスポーツカーのビジョンです」とコメントを添えてる。

モーター2基で最高出力1088PSを発生するBEVレーシングコンセプトカー「ミッションR」

初優勝を目指すタグ・ホイヤー ポルシェ フォーミュラEチーム

ポルシェモータースポーツ担当副社長 トーマス・ローデンバッハ氏

 2022年で8シーズン目を迎えるフォーミュラE世界選手権シリーズ。タグ・ホイヤー ポルシェ フォーミュラEチームは、高い目標を設定しているといい、ポルシェモータースポーツ担当副社長のトーマス・ローデンバッハ氏は「レースに勝つために必要なものがあることは間違いありません。過去のシーズンのハイライトはこれを非常に明確にしました。過去数か月間、開発チームは規制で許可されているすべての変更を行ないました。ポルシェ99Xエレクトリックは来シーズンにレースをリードできると確信しています」と語る。

フォーミュラE参戦マシン「ポルシェ99Xエレクトリック」

2台のポルシェ 911 RSRで挑む世界耐久選手権

 世界耐久選手権(WEC)には、515PSを誇る2台の「911 RSR」で参戦。2台のレーシングカーは、プロジェクト全体のマネージャー兼オペレーション責任者でもあるアレクサンダー・ステーリッヒ氏の指示のもと全6レースに参加。ドライバーは、91号車がイタリア出身のジャンマリア・ブルーニ選手とオーストリア出身のリチャード・リエッツ選手。姉妹車の92号車は、フランス出身のケビン・エストレ選手と経験豊富なミカエル・クリステンセン選手が担当。この2人はル・マン24時間レースに出場して2018年と2019年にクラス優勝を果たしているコンビ。新シーズンの最初のレースは、3月18日にセブリング(米国)で開催される。

ポルシェ 919 RSR

新たな契約ドライバーが加わりLMDhコンセプトの開発を加速

 2022年からポルシェモータースポーツのワークスドライバーに、IMSAウェザーテックで2016年と2019年に優勝経験のあるアメリカ出身のデイン・キャメロン選手と、元F1ドライバーで北米耐久レースシリーズで2018年と2021年にチャンピオを獲得した実績のあるブラジル出身のフェリペ・ナスル選手が加入予定。また、この2人のドライバーも加わり、LMDhプロトタイプのさらなる開発を推進。500kW(680PS)のLMDhプロトタイプは、2022年に多数のテストランを行なう予定だという。

新たに加わる予定のデイン・キャメロン選手
新たに加わる予定のフェリペ・ナスル選手
LMDhプロトタイプ

 前出のトーマス・ローデンバッハ氏は「私たちはパートナーのペンスキーと協力して新しいLMDhプロトタイプの開発に取り組んでおり、シャシーメーカーのマルチマティックと常に密接に協力しています。2022年1月に集中テストを開始し、2023年のデビューに向けて最適な準備ができていることを確認します」と説明している。

LMDhプロトタイプ

 LMDhプロトタイプは、2023年から世界耐久選手権と北米IMSAウェザーテックスポーツカー選手権の両方に、ポルシェ ペンスキー モータースポーツチームからの参戦を予定していて、約30年ぶりに「ル・マン」「セブリング」「デイトナ」での総合優勝を狙うという。

LMDhプロトタイプ

カスタマーのサポートも継続

 2022年シーズンも「911 GT3R」を使う多数のチームをサポート。

 ドイツでは、ADAC GTマスターで好成績を収めているチームSSRパフォーマンスが2台の911 GT3Rを、チーム75ベルンハルトは8つのレースに参戦を予定。オーストリア出身のドライバーであるトーマス・プライニン選手は、ル・マンで2回の総合優勝経験者で、ポルシェブランドアンバサダーのチームのステアリグを握るという。

 北米のIMSAレーシングシリーズでは、新しい「GTD Proクラス」に、Pfaff Motorsportsが2人のワークスドライバーであるマット・キャンベル選手とマシュー・ジャミネット選手がポルシェ 911 GT3Rで参戦。「GTDクラス」にはGT3カーの参戦台数がさらに増える予定としている。

 ニュルブルクリンクとスパフランコルシャンで行なわれるヨーロッパの耐久クラシックレースには、ヴァイサッハチームから多数の911 GT3Rが参戦。チームマンタイ(ニュルブルクリンク24時間レースでディフェンディングチャンピオン兼レコード保持者)は、ワークスドライバーのケビン・エストレ選手、ミカエル・クリステンセン選手、ローレンス・ヴァントール選手、フレデリック・マコヴィッキィ選手らがポルシェ911 GT3Rで参戦する。

画像は2021年のニュルブルクリンク24時間レース

30年目を迎えるポルシェ モービル1 スーパーカップ

 現在の375kW(510PS)のポルシェ911 GT3のワンメイクレースでは、2022年の注目は「ポルシェ モービル1 スーパーカップ」で、国際的なポルシェワンメイクカップはF1の一部として運営されていて、2022年は30シーズン目という節目の年を迎える。ポルシェチームからは、ドイツ人ドライバーのラウリン・ハインリッヒ選手の活躍が期待されているという。

画像はポルシェ モービル1 スーパーカップの2021年のモナコでのスタートシーン