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GM、移動式急送充電施設や軍用キャンプの電源など「水素燃料電池パワーキューブ」の商用構想を発表

2022年1月19日(現地時間) 発表

さまざまな分野で水素燃料電池パワーキューブの活用を目指すという

EVインフラの整備をサポート

 GM(ゼネラルモーターズ)は1月19日(現地時間)、移動型急速充電システム、非常用電源、軍事支援など、自社で開発を加速させているHYDROTEC(水素)燃料電池「パワーキューブ」を搭載した発電システムの新たな商業展開を発表した。

 パワーキューブを使用した発電システムは、出力60~600kWのゼロエミッション発電と低騒音、低発熱が特徴で、移動式のEV(電気自動車)急速充電機能を提供する「MPG(モバイルパワージェネレータ)」、ガソリンスタンドが送電網を拡張することなく手頃な価格で導入できる急速充電設備「EMPOWER」、軍用キャンプや施設に静かで効率的な電力を供給する「パレット型MPG(モバイルパワージェネレータ)」の3タイプが明かされた。

 これらの発電機はCO2排出がないため、作業現場、ビル、映画のセット、データセンター、野外コンサートやフェスティバル会場をはじめ、ゆくゆくはガスやディーゼルの発電機に取って代わる可能性があるとしている。また、停電時には住宅や中小企業向けに送電網経由の電力のバックアップや一時的な代替電源としての利用も可能。

 GM グローバル HYDROTEC ビジネス エグゼクティブ・ディレクターのチャーリー・フリーズ氏は「全車電動化という私たちの未来のビジョンは、乗用車や輸送といった枠組みにとどまりません。アルティウム車両アーキテクチャや駆動コンポーネントによる当社のエネルギープラットフォームの専門知識や、HYDROTEC水素燃料電池は、多くのさまざまな産業やユーザーの、エネルギーへのアクセスを拡大するとともに、発電に伴うCO2排出量の削減にも貢献します」と述べている。

「MPG(モバイルパワージェネレータ)」の特徴

MPG(モバイルパワージェネレータ)

 パワーキューブが搭載されるMPGの生産は、米国ユタ州リンドンにあるリニューアブル・イノベーションズが担当。GMは自社の燃料電池のハードウェアおよびソフトウェアと、リニューアブル・イノベーションズの電力統合・管理システムを組み合わせ、一時的に電力が必要な場所に、送電網の拡張や常設の充電設備の設置をすることなく急速充電機能を提供できる発電機を作ることを計画中。

 また、ミシガン州経済開発公社と米国陸軍の戦闘能力開発コマンド地上車両システムセンター(GVSC)から一部資金提供を受け、モバイル充電ステーションとしての技術実証実験を行なうなど、MPGを含む複数の開発プロジェクトがすでに進行しているという。このMPGの取り組みは、2022年半ばの開始を予定している。

 リニューアブル・イノベーションズのCEO兼共同創業者であるロバート・マウント氏は「水素発電分野のパイオニアでありイノベーターとして、リニューアブル・イノベーションズは、消費者、企業、政府、産業などの市場に絶好のチャンスがあると考えています。充電設備がない場所でのEV充電のニーズがあることが分かっており、今後はCO2排出量ゼロの未来というGMのビジョンを加速するため、GMとともに最高のテクノロジーと革新的なアプリケーションを市場に投入してまいります」と述べている。

 カリフォルニア州のエネルギー委員会は、水素由来のモバイル電源が州内の山火事を軽減するために計画停電を行なっている間のエネルギー損失を補うのに、どの程度有効かを確認するため、モバイル再生可能バックアップ発電システムプログラムを通じて、さらに4基のMPGを用いた実証プログラムに資金援助していくとしている。

 このプログラムは、独立系の非営利エネルギー研究開発組織である米研究機関「エレクトリック・パワー・リサーチ・インスチテュート」が主導していて、GMやリニューアブル・イノベーションズなどのステークホルダーと協力して、水素で発電した電力を一般の人々が安全かつ確実に、そして低価格で公平に利用できるように準備しているという。

店舗向けEV充電ステーション「EMPOWER」の特徴

EMPOWERを導入したガソリンスタンドのイメージ

 GMとリニューアブル・イノベーションズは、MPGに加えて急速充電器「EMPOWER」の開発でも協業していて、EMPOWERはパワーキューブを8台搭載し、内蔵タンクから水素を消費して、出力150kW以上で最大4台の車両を同時に急速充電することが可能。フル充電までの目標時間は推定で約20分という。このEMPOWERでは内蔵タンクの水素の補給が必要になるまでに、100台以上を急速充電できる可能性があるとしている。

 EMPOWERは、ガソリンスタンドなどがより手頃な価格で急速充電設備を導入できるようにすることが目的で、より大きな給電線や変圧器、場合によっては変電設備の新設など、電力インフラの拡充に多額の投資をせずに、必要な分だけ急速充電設備を導入できるようにしていくとしている。

 リニューアブル・イノベーションズは、EMPOWERの設置について2025年末までに全米に500基を目指すとしている。

「パレット型MPG(モバイルパワージェネレータ)システム」の特徴

パレット型MPG(モバイルパワージェネレータ)システム

 独立式のパレット型MPGの設計は、GMディフェンスが協力。現在技術評価を行なっている米国陸軍の戦闘能力開発コマンド地上車両システムセンター(GVSC)をはじめとする防衛分野のクライアントに、この製品とEVソリューションを提供する予定で、GVSCはこのパレット型MPGが大型軍用機器や軍事基地へどのぐらい電力を供給できるかについてテストしているという。

 このパレット型MPGのプロトタイプは、60kWの発電機と同等サイズで従来のディーゼル発電機に比べて約70%高い電力を発生するだけでなく、バッテリバックアップや出力調整など、通常のディーゼル発電機にはない機能も完備している。