ニュース
ルノー・日産・三菱自動車、EVやインテリジェント・コネクテッド・モビリティなどにおけるアライアンスの共通ロードマップを策定
2022年1月27日 18:26
- 2022年1月27日 発表
2030年に向けた共通ロードマップ
ルノー・日産・三菱自動車アライアンスは1月27日、モビリティのバリューチェーンに焦点を当てた共通のプロジェクトと実行計画を発表した。
今回、同アライアンスは、2030年に向けてともに未来を切り拓くため、EVとインテリジェント・コネクテッド・モビリティ、投資の分担に関する共通ロードマップを策定。このロードマップに基づき、アライアンスはメンバー各社とそれぞれの顧客へより高い価値を提供するとしている。
具体的には、アライアンス各社はプラットフォーム、生産工場、パワートレーン、車種セグメントなど、共用化の対象となりうる要素をまとめ、各車種に適した共用化の度合いを定めた「Smart Differentiation(スマート差別化)」手法を開発し、これによりデザインやアッパーボディをより細かく差別化。例えば、C/Dセグメントの共通プラットフォームにより、日産自動車の「キャシュカイ」「エクストレイル」、三菱自動車工業の「アウトランダー」、ルノーの「オーストラル」、および今後発売予定の7人乗りSUVといった、アライアンスの3つのブランドから5モデルがつくられることになる。
また、このプロセスを強化することで、アライアンスはプラットフォームの共用化率を現在の60%から2026年には合計90車種の80%以上にまで高める予定としており、これにより、各社は顧客のニーズやコアモデル、コアマーケットへの注力を深めるとともに、アライアンス全体でイノベーションをより低コストで推進することが可能となるとしている。その取り組みの一環として、三菱自動車は、ルノーの最量販車種をベースにした新型「ASX」をはじめとする2つの新型車を投入し、欧州でのプレゼンスを強化していくという。
業界最多レベルのラインアップを提供する“5つのEV専用共通プラットフォーム”
ルノー、日産、三菱自動車は、EV市場におけるパイオニアとして、これまで電動化の推進に100億ユーロ以上を投資。主要な市場(日米欧中)においては、アライアンス各社の15の工場が、すでに10車種のEVの部品、モーター、バッテリを生産している。また、これまでに100万台以上のEVが販売され、電気の力によって走行した距離の累計は300億kmに到達。さらに、同アライアンスは今後5年間で電動化に総額230億ユーロ以上の投資を行ない、2030年までに35車種の新型EVを投入する予定とし、そのうち90%の車種は5つの共通EVプラットフォームをベースとして、ほとんどの市場、すべての主要地域をカバーするとした。
共通EVプラットフォームは世界で最も手頃なプラットフォームで、新型ダチア「スプリング」のベースとなる「CMF-AEV」、ルノー「カングー」や日産「タウンスター」のベースとなる「LCV(小型商用車)EV専用プラットフォーム」のほか、「軽EV専用プラットフォーム」「CMF-EV」「CMF-BEV」の5つとなる。
CMF-EV
グローバルでフレキシブルなEVプラットフォームで、まもなく発売になる日産「アリア」やルノー「メガーヌ E-Tech エレクトリック」のベース。CMF-EVプラットフォームは、革新的な技術とモジュール化がもたらす高い性能により、新世代EVのベンチマークとなるプラットフォームとなり、EV用のパワートレーンに求められるすべての要素を統合・最適化し、高性能な新型モーターや超薄型バッテリを搭載。2030年までに15車種以上にCMF-EVプラットフォームが採用され、最大で年間150万台が生産される。
CMF-BEV
世界で最も競争力のあるコンパクトEV用のプラットフォームで、2024年に投入予定。最大400kmの航続距離と優れた空力性能を実現するCMF-BEVは、現行のルノー「ゾエ」比でコストを33%低減し、消費電力を10%以上改善する。このプラットフォームは、ルノー、アルピーヌ、日産の各ブランドで年間25万台分のEVのベースとなり、この中にはルノー「R5」や、日産「マイクラ」の後継となる新型コンパクトEVも含まれるという。なお、この新型コンパクトEVは、デザインは日産、開発はルノーが担当し、フランス北部のルノー・エレクトリシティでの生産が予定されている。
共通のバッテリ戦略により、グローバルでのEVシフトを加速
高い競争力を確保するため、同アライアンスは共通のバッテリ戦略を策定し、特にルノーと日産のコアマーケットでは共通のバッテリサプライヤーを選択するとのこと。また、共通のパートナー企業と協業してスケールメリットによるコスト低減を実現し、バッテリコストを2026年には50%、2028年には65%削減することを目指していく。このアプローチにより、2030年までに本アライアンスは世界の主要生産拠点で合計220GWhのEV用バッテリ生産能力を確保することを目指すとしている。
加えて、全固体電池(ASSB)技術に関するビジョンを共有し、バッテリ技術の開発に取り組んできた日産は、蓄積してきた深い専門知識と経験に基づいてこの技術革新をリードし、アライアンス各社で活用できるように展開。2028年半ばまでにASSBの量産を開始し、さらに将来的に1kWhあたり65ドルまでコストを下げることでエンジン車と同等のコストを実現し、グローバルにEVシフトを加速することを目指していく。
2026年までに2500万台の自動車がアライアンス・クラウドに接続。世界初となるグーグルのエコシステムを車両に搭載
インテリジェントなコネクテッド・モビリティに関するイノベーションをアライアンス全体で共有。ADAS(先進運転支援システム)や自動運転分野での20年の経験に基づき、日産の「プロパイロット」に代表される知能化や運転支援の技術革新を推進し、リアルワールドでの安全性や利便性、走る楽しさを向上させていく。
具体的には、プラットフォームと電子システムの共用化により、2026年までにアライアンス全体で45車種に運転支援技術を搭載し、1000万台以上を販売する見込みとしている。
現在、すでに300万台の車両がアライアンス・クラウドにつながっており、常時データのやりとりをしているといい、2026年までに年間500万台以上の車両にアライアンス・クラウド・システムが搭載され、計2500万台の車両が市場で走行することになるという。また、世界で初めてグーグルのエコシステムを車両に搭載するとのこと。
技術開発はルノーがリードをして、電子機器のハードウェアとソフトウェアのアプリケーションを統合し、一体型の共通電気・電子アーキテクチャーを開発することで、その効果を最大化し、パフォーマンスの最適化を図るとしている。
同アライアンスでは、2025年までに完全にソフトウェア定義(Software Defined)された車両を初めて発売する予定として、同モデルにより、クルマのライフサイクル全体を通じて、OTA(Over The Air)のパフォーマンスを向上。これにより、クルマがデジタルエコシステムに統合され、パーソナライズされた体験や新しい充実したサービスを提供し、メンテナンスコストの削減を実現することで、ユーザーにより高い価値を提供することが可能となるとしている。さらに、車両の再販価値を高めることにもつながるとともに、ソフトウェア定義された車両はつながっているあらゆるモノやユーザー、インフラとの通信を可能とし、アライアンス各社に新たな価値創造の機会を創出するとしている。
ルノー・日産・三菱自動車アライアンス会長のジャン・ドミニク・スナール氏は「ルノー・日産・三菱自動車アライアンスは、確かな実績を積み上げてきた世界の自動車業界の中でも類を見ないビジネスモデルです。過去22年間にわたり、私たちはそれぞれの文化や強みを生かして、共通の利益を得てきました。現在、本アライアンスは革新的なモビリティの投入や、お客さま、従業員、株主を含むすべてのステークホルダーに向けてより高い価値を提供するための取り組みを加速しています。そして、2030年に向けた共通のロードマップを策定し、将来に向けた電動化やコネクティビティのプロジェクトを、投資を分担しながら推進していきます。こうした技術開発には巨額な投資が必要で、メンバー各社が単独で行なうことは不可能です。本アライアンスは、グローバルに持続可能な未来に向けて独自の差別化戦略に取り組み、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目指します」とコメントしている。