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ルノー・日産・三菱自動車、新たなアライアンスについてAOB議長兼ルノーのセナール会長が会見
2022年~2025年への展望を含めた新たな取り組みを解説
2020年5月28日 00:00
- 2020年5月27日 発表
ルノー・日産自動車・三菱自動車工業は5月27日、オンラインによるアライアンス記者会見を開催した。
ルノーの会長と3社のCEOの4人で構成されるAOB(アライアンス・オペレーティング・ボード)の議長を務めるルノーのジャン・ドミニク・セナール会長は会見の冒頭、「世界の状況は劇的に変化したが、アライアンスの共通の志は変わっていない。3社は数週間に渡り協議を進めてきて、健康第一で行政のガイドラインに従いながら、再び生産と販売活動を開始する」と力強く宣言。
そして、これまでのアライアンスのビジネスモデルは、力強い成長をすべての市場で追及し、販売台数も高い水準に設定していたが、モビリティの世界は日々激変していて、アライアンスの新しいモデルは販売台数ではなく「効率性、競争力」を目指すと発表した。その新しいアライアンスの仕組みは、ルノー、日産自動車、三菱自動車の各社の競争力と収益性を向上させるもので、今あるメリットに加えてさらに成果を出すものとした。
車両と技術においてはリーダーとフォロワーの仕組みを採用
セナール会長は続けて「2019年時点で共通プラットフォームは全体の39%を占めているが、新しい共通のプラットフォームを使うことで2024年までに倍増させる。しかし、それだけでは十分ではなく、プラットフォームはモデルに関わる費用の3分の1程度でしかないので、真のインパクトを競争力に生かすには、共通部分をプラットフォームからアッパーボディにまで拡大させる。そうすることでモデルに対する投資の3分の2をカバーできる」と説明。そうすることで、さらなる節約の可能性が大きくなるという。
また、それぞれのセグメントで規律を維持するために、マザー車両(リーダー車両)とシスターカー(フォロワー車両)を設定し、それぞれのパートナーがそれぞれのユーザーのためにラインアップを揃える。開発をリーダー企業が行ない、フォロワー企業がそれをサポートする。さらに、生産についてももっとも競争力の高い工場で行なうよう変更していくことで、今のパフォーマンスに対して最大で40%=20億ユーロ程度の削減が可能となるとしている。
リーダーとフォロワーの枠組は、技術においても利用できる
リーダーとフォロワーの枠組は、技術面でもすでに活用され実証済みとなる。具体的にはルノー「クリオ」と日産「ジューク」が、2019年に共通のCMF-Bプラットフォームを採用して市場に投入されている。
セナール会長は「このリーダーとフォロワーの枠組も電気自動車の技術にも拡大させていき、近い将来、日産がまったく新しいEV専用のプラットフォームの道筋を作り“アリア”を投入する。運転支援技術、自動車運転技術など最新技術に関してもよりリーダーとフォロワーの枠組を採用していく。それぞれの企業が開発した重要な技術に、お互いがアクセスできるようになり、重複しているような作業を可能な限り減らすことができ、技術開発の活動が約20%効率化が図れる」と述べた。
リファレンス地域の考え方
日産自動車、ルノー、三菱自動車の各社は、レファレンス地域の仕組みを使って他の地域をサポートしつつ、リーダーとフォロワーの枠組を生産体制にも活用する。また、部品の仕入れや固定費ではコマーシャル費用の部分でも、共通のビジネスプロセスで共有。さらにアフターセールスの間接部門や物流に関しても、同様に共用化を図るという。
リーダーとフォロワーの枠組としては、日産がリーダーとなるエリアは日本、中国、北米。ルノーは欧州、ロシア、中南米、北アフリカ。三菱自動車は東南アジア、オセアニアとなり、お互いに補完しあいながら競争力や生産効率を高める。
また、生産エリアだけでなく、生産そのものもリーダーとフォロワーの枠組を利用して効率化を図っていくという。ブラジルでの生産を例にすると、現在は4つの異なるプラットフォーム(2つは日産、2つはルノー)を6車種に採用しているが、これを1つの共通のプラットフォームとなるCMF-Bプラットフォームに集約し、ハッチバックとSUVの7車種に採用。生産も集約することで、年間30万台をこの共通プラットフォームで製造し、高い競争力を目指す。
このリーダーとフォロワーの枠組による生産体制は、欧州やロシアでも現場の競争力に合わせて順次拡大し、すでに各セグメントにおけるリーダー車両を担う企業を協議により決定していて、ルノーはBセグメントとBセグメントSUV、日産はCセグメントSUVの新型車をリードしていき、2025年以降に欧州を含めた世界中で新たな展開が行なわれる。ルノーは小型商用バンのリーダーも担う。テラノやダスターのマイチェンが予定されているロシアでは、2023年モデルから適用される予定だという。
一方、日本国内では日産が軽自動車とプラットフォームの研究開発をリードし、生産は三菱自動車が担う。アセアンについては「三菱自動車と日産が協業して、エクスパンダーとリヴィナを生産し順次拡大。オーストラリアとニュージーランド(オセアニア)はルノーがエクスプレスバンを三菱自動車向けに生産する」と、セナール会長は今後の展望を明かした。
続けてセナール会長は「全体的に各社のアライアンスの効率化を図ることでモデル数は20%削減でき、モデルの半分近くがリーダーとフォロワーの枠組で開発し生産することで、1台当たりのコストを2022年以降から大きく削減できる。また、新しいバッテリーも1kWあたり100ドル削減するなど、他の分野でも削減を実施していく」と説明。
リーダー・フォロワーの枠組は誰かがリーダーになるのではなく、アライアンスが自動車業界全体と競争、協業するということで、パートナー各社がもっとも競争力のある効率性のある専門性をもつことになり、各社がグローバルなラインアップのセグメントと技術を生かせる体制になるという。
最後にセナール会長は「オープンな診断により、これまでのモデルの弱みと強みを把握でき、世界中のチームからフィードバックを集約し、対応すべき主なトピックを選定しました。まだまだ課題はありますが、適切な枠組もでき、志も1つになったことで準備態勢は整いました」と締めくくった。
また、日産の内田CEOは「今年は日産にとって立て直しに向けた取り組みを加速させる大事な年であり、アライアンスが各社の固定費削減と売上高の増大に貢献し、将来の成長を支える役目を果たしてくれると思います。アライアンスと運営効率を大幅に向上させ加速させることで、各社はリーダー・フォロワーの枠組とレファレンス地域という2つの仕組みのもと、緊密な協業と事業効率の向上のメリットを享受できる。この一環したメッセージは1月のAOB(アライアンス オペレーティング ボード)から伝えてきたとおり。日産は向こう数年間、選択と集中を行なってきた。つまり日産は強みに集中し、他の領域はアライアンスのサポート力を活用していく。ラインアップを見直しながら、日産が集中すべき選択をし、どの分野を伸ばすのか、選択と集中を徹底していく。もちろん固定費の削減も徹底する」とコメント。
また、三菱自動車の益子会長は「コロナウイルスの影響で社会も経営環境も日々変化している。時代や環境が変わるとアライアンスも変わっていくものです。検討のプロセスは完了して、今日報告させていただいたが、三菱自動車としては成長戦略をビジョンとして進めてきたが、過去数年間は拡大戦略を過剰に追及し過ぎたため、固定費が大幅に上昇し厳しい状況に直面している。これを元の成長路線とビジョンに軌道修正するために、アライアンスの力を生かしていくことが三菱自動車にとって重要です。効率的にアライアンスを機能させることで、3社はリーダー・フォロワーの枠組を導入することに同意しました。大事なのは結果を出すこと。そのためには各社がいかに早くこのリーダー・フォロワーの仕組みをビジネスに生かせるかです」と述べた。