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ルノー、日産、三菱自動車が共同会見。「アライアンス発足当時の精神を取り戻したい」とルノー スナール会長

2019年3月12日 開催

仏ルノー、日産自動車、三菱自動車工業のアライアンス3社による新たな枠組み「アライアンス オペレーティング ボード」設立について共同記者会見が行なわれた

 仏ルノー、日産自動車、三菱自動車工業のアライアンス3社は3月12日、3社による協業をさらに推進し、各社の株主や従業員の価値創造を実現していく取り組みを追求する新たな枠組み「アライアンス オペレーティング ボード」を設立すると発表。同日に神奈川県横浜市の日産グローバル本社で共同記者会見を実施した。

 会見にはルノーの会長であり、アライアンス オペレーティング ボードの議長を務めることになるジャン・ドミニク・スナール氏に加え、ルノー CEOのティエリー・ボロレ氏、日産自動車の取締役社長 兼CEOである西川廣人氏、三菱自動車工業の取締役会長 CEOの益子修氏の4人が出席。アライアンス オペレーティング ボードに向けたそれぞれの思いなどが語られた後、記者との質疑応答が行なわれた。なお、この模様はYouTubeの日産自動車公式チャンネルでライブ配信され、現在もアーカイブ動画を視聴可能となっている。

3月12日に行なわれたアライアンス3社の共同記者会見(1時間7分31秒)

ジャン・ドミニク・スナール氏のコメント

ジャン・ドミニク・スナール氏

「今日はアライアンスにとって非常に特別な日です。私は今日、同僚のティエリー・ボロレと共にこの横浜に来られたことをとても嬉しく思っています。そして西川さん、益子さんと共にいることを大変嬉しく思います。皆さんと今日、3社によって交わされた合意についてご紹介したいと思います」。

「この合意は将来的にアライアンスを強化するものです。私たちは再び力を結束していくことで合意しました。それによって協力による力をさらに高めていく計画です。私たちは短時間で大きく効率性を高めていきたいのです。その効率化に向けた最初の一助となるのが、組織を大幅に簡略化することです。私たちはいろいろな面から現状を見直して、アライアンスがこれまでに多くに成果を生み出したと評価しています。この結果を大きく評価しています」。

「ただ、現在は成熟の段階にあります。つまり、ステップを進めて新しいステップに踏み出すべき時なのです。それはまさに、アライアンスの新しいスタートです。そのためにはこの組織全体に勢いを付けなければなりません。先ほども述べたように効率化を進め、全体の体制を簡略化していく時です」。

「内容の詳細を語り、他の3氏にコメントしていただく前に、私から端的にお話をしたいと思います。私たちは単純に関係性を再構築するだけでなく、アライアンスのスピリットをさらに強化して、アライアンス発足当時の精神を取り戻したいと考えています。そのアライアンスの精神とは、『完全にバランスのとれた、迅速な意思決定プロセス』であります。さらに各社の持つ文化を尊重し、そしてブランドを尊重するという精神です」。

「私たち3社は大きな点について決定しました。まず、新しいボードを発足します。このアライアンス ボードがアライアンスのオペレーションとガバナンスについて監督する唯一の機関になります。『RNBV』『MNBV』に代わる唯一の機関になるのです。アライアンス ボードは、今ここに登壇している4名を中心に構成されます。そして私はこのアライアンス ボードの議長を務めることを大変光栄に感じております。この4名の合意によって進められるアライアンス ボードは、将来的に大きな成果を生み出していくと考えてます」。

「プロジェクトベースの組織で進められ、とくに重要なのは、既存の取り組みをプロジェクトとして進め、主な大きなプロジェクトについてはアライアンス ボードで直接審議するということです。つまり、このアライアンス ボードという組織がプロジェクトの将来性や進捗についての説明責任、プロジェクト自体の責任を負うということになります」。

「各プロジェクトはプロジェクトリーダーが推進していき、プロジェクトリーダーはアライアンス ボードから権限や説明責任を委譲され、アライアンス ボードに説明責任を果たしながら自主性を持って進めていきことになります。また、各プロジェクトでは専任のチームが結成され、このチームは各社からメンバーを募っていくことになります。協力していっしょにプロジェクトを進めていく上で最適なのは誰かという点が重視され、私たちアライアンス ボードは、それぞれのプロジェクトを進めていく上で適切なリソースを割り当て、人員を整えてプロジェクトが円滑に、速やかに進められていくことに責任を持っています」。

「私たちはチームの人材にクリエイティビティを発揮や創造性を発揮してもらいたいと考えています。そのためにはこれまでに説明したアプローチが最善の策になると考えています。1人ひとりがそれぞれの責務を強く認識し、個々人の成功は互いのカウンターパートナーの成功に貢献したかによって評価されることになります。この新しいステップによって進んでいく将来に、私はとてもわくわくしています。これがまさにアライアンスの再スタートになると言えるでしょう」。

「私たちアライアンス ボードは、改めてこのアライアンスの目的を再定義し、見直すためのレビューをしなければなりません。今はそれを表面化する時ではありませんが、アライアンス ボードが持続可能なモビリティに沿い、お客さまの幸せだけでなく、従業員の幸せにも寄与していくとしてもそれは驚きではないはずです。私たちはそのシンボルとして横浜に集まりました。この場に来ることができて、覚え書きにサインすることを本当にうれしく思っています」。

「数週間以内に私がイニシアティブをとり、各会社のボードメンバーにパリに集まってもらい、今回交わした覚え書きの内容について深く理解してもらうことに加え、アライアンスの再スタートを祝いたいと思っています」。

西川廣人氏のコメント

西川廣人氏

「今、スナールさんからお話しがあったように、今回まで議論を重ねてきて、このMOU(覚え書き)の合意に至りました。これはアライアンスにとって非常に大きな新しいステップだと思っています。MOUを見ていただいて分かるように、1番から5番のところにスナールさんがおっしゃった原理原則が書かれています。どういうことかと言えば、ルノーと日産と三菱を入れた3社がそれぞれにWin-Win、またはWin-Win-Winになるコンセンサスベースで仕事をする、と。本当の意味でのイコールパートナーシップのボードになるということです」。

「このボードの運営形態は『ソウルボディ』とありますが、これが唯一の運営体であるということです。ということで、従来の運営母体であった『RNBV』『MNBV』に代わって運営をすることになり、先ほどスナールさんが言った『シンプリーファイ』という言葉のように、簡素化をして、かつ求心力を持って進めていく。非常に効率的な会議体で、こういったことがスタートできるのは大変大きなポイントだと思います」。

「とくに日産という立場で見ると、『RNBV』というものは伝統的にやや偏ったパワーバランスで構成されていました。スナールさんもおっしゃっていたように、Win-Win-Winのコンセンサスベースということで、そこを完全なイコールパートナーシップで運営するということが実現します。もともとWin-Winの精神でやってきたのですが、これが名実ともに実現するということで、日産にとっても非常に大きなステップになると思っています」。

「もう1つ日産という立場から申し上げますと、このMOUにある、日産が直面している新しいガバナンスへの移行について尊重していただけるということです。この姿勢がとても大きいと思っております。もちろん、ガバナンス改善特別委員会で議論中のところで、これから答申をいただくわけですが、そういった環境の中で従来あった、『ルノーの会長が日産の会長を務める』ということはあえて求めないという姿勢を持っていただいたこと、そしてガバナンス改善特別委員会の答申を尊重し、その中で決めていくという姿勢を持っていただいたことです」。

「ここ(MOUの8番)には取締役会の副議長という項目もありますが、これはナチュラルに要望されるということで、これも含めて新たなプロセスの中で決めていくということです。ここを尊重していただくことはとてもありがたいと思います。日産にとって新しいガバナンスに移行することは大きな課題です。そこを尊重していただいているということです」。

「最後になりますが、今、私が抱えている課題は、アライアンスの安定化とガバナンスの刷新、そして業績の安定化と3つあるわけですが、その中でアライアンスの安定化、あるいは推進という点で、本日は非常に大きな1歩だと思っています。これらの課題に対して1歩ずつ着実に進めていきたいと思っているところであります」。

益子修氏のコメント

益子修氏

「2016年10月に日産自動車と三菱自動車の戦略的資本提携が発足し、当社がアライアンスに参加してからまだ2年程度と、それほど長いわけではありません。しかし、この短期間のうちに三菱自動車はアライアンスから多くのことを学び、業績回復につなげることができました。これはルノーと日産のアライアンスが20年間で蓄積してきた成果を三菱自動車が享受できた結果です。ルノー・日産の両社には、三菱自動車を代表してここに感謝の意を表したいと思います」。

「一方でアライアンスの今後の運営については、見直すべき事項もあるとの認識を持っています。昨年10月以来、私はここにいるスナールさん、ボロレさん、西川さんと、いろいろな機会でアライアンスの将来について話し合ってきました。三菱自動車という新しいメンバーの話しに皆さんが耳を傾けてくださったことをありがたく思っています。その中で終始一貫して揺るがなかったことは、『アライアンスはそれぞれのステークホルダーに責任を持ち、自立経営を行なう3社の、戦略的、継続的な協力関係である』という原則です」。

「今回のアライアンス ボードは、まさにこの考え方が具現化したものと理解しています。新しい体制の下でも従来と同様に、三菱自動車はアライアンスに積極的に貢献するとともに、アライアンスの力を活用しながら持続的な成長につなげることで、さまざまなステークホルダーの期待に応えていきたいと考えています」。

「アライアンスを構成する3社はそれぞれに異なる歴史や文化を持っています。また、事業規模、得意とする技術やマーケットなども異なり、そのような3社が協力してシナジーを創出していくにはさまざまな課題があるのは当然です。しかし、今回改めて確認されたアライアンスの基本精神に立ち戻り、アライアンス ボードでわれわれが真摯に話し合えば、どんなに困難な課題であっても必ず解決できると信じています。そして結果を出すことが、各社のトップでもあるわれわれボードメンバーの責務であると受け止めています」。

「自動車産業はかつてない変革の時期を迎えていますが、3社がアライアンスの基本精神に則り、それぞれの強みを生かして協力し合うことで、業界をリードするアライアンスグループとして今後も持続的な成長を実現できると信じています」。

ティエリー・ボロレ氏のコメント

ティエリー・ボロレ氏

「簡単にひと言申し上げたいと思います。今回のMOUにおけるオペレーションの側面についてもう少し説明したいと思います。現在、自動車業界は多くのデストラプションに直面していて、そんな中でスピードは絶対的に必須となります。今はすべてが加速し、いっしょに仕事を進めていく上で円滑にやっていく必要があります。だからこそスナールが、今回のプロジェクトによりフォーカスしていく体制を発表したわけです。これは共通する1人のリーダーがプロジェクトを担当して、すべての機能部門を各社で適切な人員体制をプロジェクトで実現できるように貢献していく体制です」。

「そして新しいアライアンス ボードで直接審議することで、レポートラインが力強く非常に有効なものになります。つまり、権限と責任の委譲がはっきりして、プロセスを加速させて各社の業績に寄与していくと信じています。また、既存の設定ではかなりの時間を費やして各社が持つ多くのレイヤーにレポートすることに時間がかかっています。そこで新しい体制では、そうした複雑さを排除して、できるだけ早く成果を出せるようにすることが目的になっています」。

「まだすべてが完成したわけではなく、ワーキンググループが発足して、私が同僚といっしょにこれから数週間かけて審議していく予定です。どのような形で機能するかを厳密に検討していて、すべてのオペレーションの改善を実現したいと思っています」。

質疑応答

 質疑応答では、新しいアライアンス ボードは将来的な経営統合に向かうステップになるのではないかという問いかけに対し、スナール氏これを明確に否定。「このアライアンスの新しいスタートは、株式の持ち合いや資本構成などについてまったく関係のないことです。まずはスピードと効率性を上げ、オペレーションを推進することが果たすべき仕事です。いち早く、最善の形でスタートすることが重要です」。

「将来については、このアライアンスがどれだけ効率的に進められるかにかかっています。私はアライアンスの将来は明るく、大きなポテンシャルを発揮できると確信しています。それは各社にポテンシャルがあり、これを十分に発揮してかなければなりません」とスナール氏は回答した。

 また、同じ質問に対して西川氏は「われわれの協業やアライアンスのどこに価値があるかと言えば、3社でいっしょになってさまざまなオポチュニティを実現していくということがポイントで、その仕事をどのように効率的に、効果的に進めていくのかというのがキーになります。このMOUで言うと5番の精神で、どこまで効率を高めることができるかというのが一番大事なところです」。

「それが今もそうだし、将来的にもメンバーの3社がどれだけ成長して、繁栄していけるかのキーになると思います。従って、スナールさんもおっしゃったように、できる限りのプロジェクト、あるいは成果を出すことで、ルノー、日産、三菱のパフォーマンスをさらに上げることに注力することがアライアンスの価値であるということで、その価値を現在も、将来も担保していくことが一番大事だと思っています」と答えている。

 また、アライアンス ボードの中で意見が食い違ったとき、最終的にはどのように決定をするのかについて質問され、これについては、アライアンス ボードはあくまでコンセンサスベースとなり、話し合いによって1つひとつ合意していくと西川氏が説明。投票などでの決定は行なわれないとした。