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日産の今後に向け、ガバナンス改善特別委員会が報告書を提出

ゴーン氏による一連の不正問題、根本原因は「ゴーン氏への人事・報酬を含む権限の集中」

2019年3月27日 開催

日産自動車のガバナンス改善特別委員会で共同委員長を務める西岡清一郎氏(左)と、同共同委員長を務める榊原定征氏(右)

 日産自動車は3月27日、元代表取締役会長 カルロス・ゴーン氏などによる一連の不正行為を受けて2018年12月に設置したガバナンス改善特別委員会から、ガバナンスの改善策や将来に渡って事業活動を行なっていくための基盤となる「最善のガバナンス体制の在り方」についての提言をまとめた報告書を、同日に開催した臨時取締役会で受領したと発表。ガバナンス改善特別委員会は同日、神奈川県横浜市のヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテルで記者会見を開催した。

 記者会見ではガバナンス改善特別委員会で共同委員長を務める西岡清一郎氏と榊原定征氏の2名が登壇。最初に西岡氏から、日産の取締役会に提出した報告書の概要が解説され、その後に質疑応答が行なわれた。

西岡清一郎氏

 報告書では日産のガバナンスにおける問題点について、以下の7点の事実があると認定。

1)ゴーン氏に対する取締役報酬及び退職後の金銭支払いの検討
2)ゴーン氏による会社資金・経費の私的利用
3)CEOリザーブを利用した支出
4)ケリー氏の取締役報酬
5)ゴーン氏及びケリー氏による、コンプライアンスに関する誓約書の提出
6)取締役会における議論の状況
7)誰もゴーン氏に異を唱えない企業風土

 また、今回の不正行為は過去に上場企業などで行なわれた粉飾決済や不正会計といった「会社のための不正」とは異なり、経営者が私的利益を追究した「典型的な経営者不正」と表現し、主な根本原因は「ゴーン氏への人事・報酬を含む権限の集中」であるとした。

 今後に向けた提言では、ガバナンスの基本的枠組みを、6月末をもって日産を取締役会の内部に社外取締役が過半数を占める委員会を設置する「指名委員会等設置会社」に移行することを提言。さらに取締役、代表執行役の個別報酬額を決定する「報酬委員会」の設置、独立性を有する社外取締役のみで行なう会合を定期的に開催して取締役会の監督機能の補完措置を行なうこと、企業風土改革や企業倫理の再構築を行なうことなども提言している。

 このほか、業務執行機関となる執行役で、日産の代表執行役についてはルノーその他の主要株主や三菱自動車工業の取締役、執行役、そのほかの役職員は兼任してはならないと定め、アライアンスの統括会社である「RNBV(Renault-Nissan B.V.)」や「ZiA」など、今回の不正行為に利用された可能性のある日産子会社や関連会社などは、廃止を含めた見直しを求めるとしている。

榊原定征氏

 西岡氏による概要解説の後には榊原氏もコメントし、同日に報告書を提出した日産の取締役会では、報告書の内容を真摯に受け止めて誠実に対応すると述べられ、期間は限られて実務的な負荷は高いが、6月に行なわれる株主総会までには報告書で提言された体制を構築していくため最大限努力したいとのコメントを受けている旨が報告された。

 質疑応答では不正行為に関連して署名を行なった現CEOである西川廣人氏の責任についてや、取締役会に名を連ねるメンバーの進退などについての問いかけも行なわれたが、西岡氏はガバナンス改善特別委員会の活動目的が、日産が企業活動を続けていくにあたってガバナンスに問題があるかどうかを判断し、最適なガバナンスを構築するための提言を行なうことであり、特定の個人などの法的責任などを追及する立場にはないとの姿勢を示した。

 また、日産の代表執行役はルノーなどの役職を兼務できないといった内容や、会長職を廃止するといった提言について、日産にとって都合がいい内容なのではないかといった指摘に対しては、異なる会社の要職にある人物が代表執行役のような役職を兼務すると利益相反のリスクが起きてしまい、会社に対しての忠実義務に抵触することなどを懸念した結果であると西岡氏は説明。

 また、榊原氏は日産に限らず日本の会社では会社の執行の組織のトップであり、監督機関となる取締役会の議長を会長が兼務するケースが見られ、ゴーン氏についても同様であったが、これによって権力が過剰に集中して不正を招く大きな原因になったと解説。会長職を廃止することは、この執行組織と監督機関の長を別の人物にしてもらうための思い切った提言で、「日産にとって都合がいいとかわるいとかいった水準での提言ではない」とコメントした。