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日産自動車、2020年度は6700億円の赤字予想だが内田社長は「想定内」
長期的な視点で収益のある成長への回復を目指す
2020年7月29日 11:29
- 2020年7月28日 発表
日産自動車は7月28日、2020年度の第1四半期(1月~3月)決算と2020年度の通期見通しをオンライン形式で発表を行なった。登壇したのは、社長兼CEOの内田誠氏、COOのアシュワニ・グプタ氏、CFOのスティーブン・マー氏の3名。
まず内田氏の挨拶と紹介により、グプタ氏が2020年度の第1四半期の販売実績など詳細を報告。グローバル全体の需要が2019年と比較して44.5%落ち込み1249万台となる中で、日産も同様に2019年対比で47.7%落ち込み64万3000台を販売。ただし、4~6月は依然厳しい状況でありながらも、2019年対比で34.5%減と若干だが回復して、82万7000台の販売があったことを紹介。
生産状況に関しては、中国だけは4~6月に前年比8%増となったが、日本や北米は6月に入っても昨対比60%止まり。欧州に限っては昨対比20%と厳しい状況が続く。販売店の稼働状況については、ほぼ回復しているものの、来客数が大きく減っているという。そこでオンライン販売のプラットフォームの拡充を進めていて、すでに11%のユーザーがオンラインで購入したと報告した。
また、工場全体の稼働率が下がっている中で、2月にメキシコで北米向けの新型「セントラ」、3月にタイで日本やアジア向けの新型「キックス」、6月には日本で北米向けの新型「ローグ」と、ここまでスケジュール通り順調に新型車を生産できていることを強調した。
5月に発表した事業構造改革計画「NISSAN NEXT」でコアマーケットとした日本では3月に発売した軽自動車「ルークス」により軽自動車の市場占有率を向上。さらに6月に発売したキックスで市場全体の占有率アップを目指す。中国では「シルフィ」と「アルティマ」が好調。アメリカでは、収益性の高い小売販売に集中し、事業構造改革を進めたことで1台当たりの販売価格を約700ドル改善したという。
最後にグプタ氏は「今後もNISSAN NEXTに基づき、継続的に固定費の削減を徹底し、新型車の販売の質を向上させ収益性をともなう市場占有率拡大、営業活動における十分な資金調達と流動性を確保する。長期的な視点で収益ある成長へ回復させる」と締めくくった。
そして、2020年度第1四半期の連結売上高は、対前年同期比でマイナス50.5%となる1兆1742億円。連結営業損益は1539億円。売上高営業利益率はマイナス13.1%。当期純損失は2856億円となった。日産は新型コロナウイルスなどの影響により、販売台数が大きく落ち込んだが、販売費用やモノづくり、固定費などの大幅削減を行なったことで、連結営業損益を1539億円に留められたと分析している。
2020年度通期見通し
続いて内田氏より2020年度の通期見通しが発表された。
まず販売台数はグローバル全体の需要が対前年比で16%落ち込み7204万台。日本や中国は7~8%程度の落ち込みと予想するが、北米や欧州など新型コロナウイルスが猛威を振るっている地域は20%程度落ち込むと推測。日産単体もグローバル全体で16.3%落ち込み412万5000台の販売を見込んでいるが、グローバル全体の市場占有率は5.73%と2019年レベルをキープできるとしている。これは新型コロナウイルスの第2波がこない前提とした数値。
そして、2020年度通期の売上高は対前年比マイナス21%の7兆8000億円、営業損失4700億円、当期純利益はマイナス6700億円と発表。収益、フリーキャッシュフローともに非常に厳しい1年になると見込まれるため、配当の支払いは見送る予定とした。
ただし、2020年度に2018年度対比で3000億円の固定費削減の取り組みは計画通りに進んでいて、減価償却費、広告宣伝費、一般管理費などで1500億円を超える削減を実施すると結んだ。
NISSAN NEXTの継続
続けて内田社長は事業構造改革計画「NISSAN NEXT」も改めて言及。2023年までに収益を確保した着実な成長と、財務基盤の強化、日産らしさを取り戻し、その後の新たな10年を戦える体制の再構築を狙うもの。
生産能力と商品ラインアップの最適化と固定費削減を確実に行ないつつ、コアマーケット、コアモデル、コアテクノロジーに関する選択と集中をきっちり実施することで、再び成長軌道に乗せるとした。
また、新型車の市場への投入も着実に実施することを明言。アメリカでは新型「ローグ」を皮切りに、新型「パスファインダー」「フロンティア」、さらにインフィニティブランド2車種を投入。
日本国内は全グレードにe-POWERを搭載した「キックス」を発売。今後もe-POWER搭載車を拡充させて「アリア」を含めて電動化率60%を目指す。Cセグメント、Dセグメント、EV、スポーツカーに関して、今後もラインアップの刷新と商品力の強化を積極的に進めると最後に語気を強めた。
また、質疑応答で通期の赤字幅が想定内か問われると内田氏は「5月の時点で落ち込みを想定していたので、内容としては非常に厳しいが想定内の範囲。また、地域別に見るとアメリカの状況がより厳しくなっている。しかし、NISSAN NEXTの取り組みを確実に実行すれば2023年度までに会社を再び成長に戻せると確信している」と回答。
さらに今後の研究開発費について問われると、CFOのマー氏が「2020年度は5300億円ほど予定していて、2019年度が5450億円くらいだったので、ほぼ前年並み。また、設備投資については4400億円くらいを予定。これは2019年度が5190億円なので、若干減らしている。ただし、コア商品をコア市場に予定通りに投入するため、開発研究費も選択と集中により適正に使用していく」と回答した。