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ミシュラン、6年ぶりに刷新したスポーツタイヤ「パイロット スポーツ 5」のデザイン開発における3つの苦労とは

2022年3月8日から順次発売

オープンプライス

デザイン面でのチャレンジとは

 日本ミシュランタイヤは1月28日、ダイナミックスポーツタイヤ「PILOT SPORT 5(パイロット スポーツ ファイブ)」の商品説明会をオンラインにて実施した。

 登壇したのは日本ミシュランタイヤ 代表取締役社長の須藤元氏、乗用車・商用車タイヤ事業部 マーケティング部 ブランド戦略マネージャーの大河内昌紀氏、研究開発本部 PC タイヤ 先行技術開発部 インダストリアルデザイナーの清井友広氏の3名。また、トークセッションでは、レーシングドライバー兼自動車評論家の荒聖治氏も登場した。

日本ミシュランタイヤ株式会社 研究開発本部 PC タイヤ 先行技術開発部 インダストリアルデザイナー 清井友広氏

 新製品であるパイロット スポーツ 5のデザインについて、日本ミシュランタイヤ 研究開発本部 PC タイヤ 先行技術開発部 インダストリアルデザイナーの清井友広氏より解説が行なわれた。

 清井氏は最初に「私達デザインチームは、今回のデザイン開発について特別な思いを持ってデザインを行ないました」と語り、その理由について現行の「パイロット スポーツ 4」がユーザーから性能面でも見た目においても高い評価をもらっている点と、プレミアムタッチを採用して高級感のある新しい世界観を生み出すことができていた点を挙げた。そして「今回その性能面と見た目を高い次元で両立したパイロット スポーツ 4の後継商品の開発は、とても高いハードルだった」と清井氏は振り返った。

現行商品パイロット スポーツ 4の完成度が高く後継開発は高いハードルだったという

 その大きな壁を越えるために清井氏は「われわれデザインチームは全ての要素を見直し、トレッドパターン、サイドウォール、ユーザビリティの3点において、デザインを一新させることを目指した」という。

トレッドパターンの再構築

 トレッドパターンの開発に関しては「パイロットシリーズの製品はモータースポーツのDNAを強く反映していることから、スポーツDNAとブランドDNAが融合したデザインを目指した」と明かす。そして、極限状態で磨かれた技術をフィードバックして進化するシリーズの考え方は、デザインにおいても一緒だとのことで、モータースポーツでの新しい経験をもとにパターンを一新したという。その結果として、無駄のない洗練されたシャープな外観に仕上がったとしている。

 また、ミシュランブランドのDNAとして「安全性」というのも大事な点だと紹介して、タイヤの性能を視覚的に感じ取れるということは安心感につながるため、タイヤの性能を正確に感じ取れる外観との両立も目指したという。

一番左がパイロット スポーツ 4で、一番右がパイロット スポーツ 5。間にあるのが実際にモータースポーツで使用しているタイヤ。左側のパターンはパイロット スポーツ 4に近く、右にいくにつれてパイロット スポーツ 5のパターンに近づいていくのが見て取れる

 清井氏は「パイロット スポーツ 5の外観は、決して美しさのみを目指して考えたものではなく、モータースポーツで磨かれた形状をもとにデザインされたものです。また、走行時に安心感を持ってもらえるように、見た目が性能特性を感じ取れる溝の構成にしています」と解説した。

 具体的には、外側の溝には稲妻のように折れる箇所を設けることで、乾いた路面でしっかり足下を支えてくれる印象を作成。その一方で、内側の溝はまっすぐに抜ける形にし、水の流れをよくし、ウェット性能の高さを感じるデザインにしたという。結果として明快な非対称パターンとなり、モータースポーツからのフィードバックで生まれた「デュアル・スポーツ・トレッドデザイン」を視覚的により感じられるトレッドに仕上がり、走りながら、どのようにタイヤが機能しているのかイメージしやすくなっているという。

スポーツDNAとブランドDNAが融合したデザインを実現させた

サイドウォールに新たなプレミアムタッチを採用

 サイドウォールの開発については、2013年の「パイロット スポーツ カップ2」をはじめとし、これまで約9年間この技術をさまざまな製品に採用してきたことで、技術とデザインの両面において成熟度を上げ、デザインの完成度を高める開発を行なってきたという。その結果として、今回のパイロット スポーツ 5では新しいテクノロジーを使用した「フルリングプレミアムタッチ」の採用を実現。この新しいデザインが足下を黒く引き締めることで、車両の美しさをより引き立てるとしている。

サイドウォールのデザイン

 清井氏の技術的な説明では「一般的なサイドウォール上の表面加工は、切削で溝を掘って光の反射を抑えて黒く見せているが、パイロット スポーツ 4で採用したプレミアムタッチでは、精緻な凹凸を表面に作ることで、より深い黒を実現。さらに、今回のパイロット スポーツ 5で採用した新しいプレミアムタッチは、上質なファブリックのような梁状構造で、より効率よく光の反射を抑え、漆黒のような黒を実現した」という。

 この新しいプレミアムタッチを全周に使ったのが、フルリングプレミアムタッチとなる。ブランドロゴをスタート地点に黒い帯が周方向に伸び、タイヤ全周を覆い尽くしていくような美しいグラフィックに仕上げている。

黒さも進化させてきた。左が一般的な加工、真ん中がパイロット スポーツ 4に採用しているプレミアムタッチ、右がパイロット スポーツ 5に採用した新しいプレミアムタッチ
一部ではなくほぼ全周に加工を施している
実際に装着した状態でも黒さがよく分かる

タイヤを長く安全に使用するためのユーザビリティ

 3つ目のチャレンジとなるユーザビリティについては、ユーザーがより長く安全にタイヤを使えるように、「ウェア・トゥ・チェック」というコンセプトを採用し、より分かりやすいデザインを目指したという。

タイヤを長く安全に使用するためのサポートを具体的に盛り込んでいる

 このウェア・トゥ・チェックとは、摩耗状況が確認しやすいデザインのことで、タイヤの側面からスリップサインの位置を見つけやすくして、視覚的に摩耗状況を知らせることで、履き替えのタイミングを分かりやすくしている。また、タイヤをより長く最後まで使うことにもつながるため、サスティナブルという側面においても大事な役目を果たすという。

 また、このウェア・トゥ・チェックというコンセプトにはいくつかの要素があるといい、1つ目はタイヤのショルダー部分に「チェッカーフラッグ状のハイライト」を配置して、タイヤのどの位置にスリップサインがあるのか、クルマに装着していても見つけやすくしたという。2つ目は、ショルダーブロック上に設置した「トレッド・ウェア・サイン」で、スマートフォンのバッテリ表示のように、穴の数が減少することで交換時期の目安になるとしている。3つ目は、パターンの流れに沿って並んだ「スリップサインと溝底のミシュランテキスト」で、摩耗がが進むにつれて溝底が見えやすくなるため、一直線のスリップサインとテキストがより場所を見つけやすくしてくれるという。これにより「場所を見つける」「確認する」の両面において視認性を向上させた。

ウェア・トゥ・チェックというコンセプトにより3つの機能を盛り込んでいる

ミシュラン、新ハイグリップスポーツタイヤ「パイロット スポーツ 5」発表会 ウェット路面で最速ラップタイム1.7%、平均ラップタイム1.5%短縮

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1384411.html

レーシングドライバー兼自動車評論家の荒聖治氏も絶賛

ダイナミックスポーツタイヤ「パイロットスポーツ 5」の商品説明会に登壇した日本ミシュランタイヤ株式会社 代表取締役社長の須藤元氏(右)と、ゲスト参加したレーシングドライバーの荒聖治選手(左)

 発表会の後半には、国内外のさまざまなレース経験を持ち、ル・マン24時間耐久レースで2004年に日本人としては2人目となる総合優勝。また、全日本GT選手権、現在のSUPER GTを含めて、優勝経験を持つ現役のレーシングドライバー(2022年はBMW Team Studie)兼自動車評論家の荒聖治氏をゲストに招きトークセッションが展開された。

 荒氏は事前に箱根で試乗していて、ファーストインプレッションとして「とにかくスムーズに転がる。自然に滑らかに転がっていく感覚。これはミシュランタイヤの特徴的なところなのかなあと思います。路面が荒れているところ傷んでいるところを通過しても、結構タイヤが滑らかにしなやかに吸収してくれます。ゴツゴツ感はすごい少ないです。スポーツタイヤって聞くとちょっと硬いんじゃないかとか、イメージが先行してしまうけれど、このタイヤは結構滑らかです」とコメント。

 また、「レーシングタイヤを履くレーシングカーでもストリートを走る一般車でも同じなんですけど、とにかく乗ってすぐに感じるのは、本当にすごくタイヤの真円度が高くて、自分の行きたいところにスムーズに転がっていくという印象が強いです。自分の行きたいところに転がっていく感覚っていうのは、直進安定性の高さというものも含まれています。この直進安定性が高いことによって、どのスピード域でも正確なハンドリングができるんです。これはクルマの元々の性能を発揮する上ですごく重要ですし、それからドライビングしていて疲れない。自分の行きたいところに行くために修正舵もすごく少ないので、狙ったところに行ける、常にそういう緊張感を抑えながら、そういうメリットがありますね。あと路面に対してゴツゴツ感がないのと、グリップ感の入ったり抜けたりっていう変化がすごく少ないないので、快適性とか安全性につながっているんです」と感想を述べた。

 最後にパイロット スポーツ 5をひと言でと聞かれると「早く自分のクルマにつけて走りたい。そしてめっちゃくちゃいいタイヤです。1本でいろんなトータルの性能をカバーできるタイヤってすごく少ないので、本当にいいタイヤです」と回答し、トークセッションは幕を閉じた。

トレッドパターン、サイドウォール、ユーザビリティの3点についてデザインを一新されたパイロット スポーツ 5は3月8日から順次発売となる