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【タイヤレビュー】ミシュランのフラグシップタイヤ「PILOT SPORT 4 S(パイロット スポーツ フォー エス)」にチョイノリ

メルセデス・ベンツ AMG E43 4MATICで青山ドライブ

ミシュランのフラグシップタイヤ「PILOT SPORT 4 S」。メルセデス・ベンツ 「メルセデスAMG E43 4MATIC」に装着された245/35 ZR20を試乗した

 日本ミシュランタイヤは2月20日、フラグシップタイヤ「PILOT SPORT 4 S(パイロット スポーツ フォー エス)」を発表。東京 六本木の「メルセデス・ベンツ コネクション」において発表会を開催した。製品概要やサイズバリエーションについては関連記事「ミシュラン、インとアウトでコンパウンドを使い分ける『バイ・コンパウンド』採用の『PILOT SPORT 4 S』」を参照していただきたいし、発表会については後ほど詳報する予定だ。本記事では発表会後にメルセデス・ベンツ「メルセデスAMG E43 4MATIC」にPILOT SPORT 4 Sを装着して行なわれたミニ試乗会のインプレッションをお届けする。

 PILOT SPORT 4 Sのポジショニングは2016年2月に発表されたフォーミュラ Eレースタイヤ直系の新スポーツタイヤ「PILOT SPORT 4(パイロット スポーツ フォー)」(以下、PS4)の上位製品となる。PS4が16インチ~18インチのサイズラインアップとなっているのに対して、PILOT SPORT 4 Sは225/45 ZR19(96Y)XL~345/30 ZR20(106Y)の39サイズで、19インチサイズと20インチサイズを展開している。

 ミシュランにはスポーツ性において高い評価を得ている「Pilot Super Sport(パイロット スーパースポーツ)」(以下、PSS)もあるが、このPILOT SPORT 4 SはそのPSSをも超える性能を獲得。ミシュランのトップブランドタイヤになるという。

 そのパフォーマンスを獲得できた理由は、PS4と比べて新たに投入された「バイ・コンパウント・テクノロジー」や、PSS開発時との時代の違いよる新たなコンパウンドの投入などなど。イン側とアウト側で異なるコンパウンドを使い、非対称のトレッドパターンと組み合わせるバイ・コンパウント・テクノロジーは、PSSにも「デュアル・コンパウンド2.0」として同様のコンセプトが使われていたが、PILOT SPORT 4 Sでは、フォーミュラ Eなどで培った新たなレーシングテクノロジーが使われているのがポイント。PILOT SPORT 4 Sのアウト側にはシリカとカーボンブラックがハイブリッドで使われ、イン側にはシリカを増量し、より結合力を増してウェット路面の能力を向上したとしている。

PILOT SPORT 4 Sはバイ・コンパウント・テクノロジーを採用しており、アウト側のブロック1列とセンター~イン側のブロック4列ではコンパウンドが異なる。このパターンは「ウルトラ・リアクティブ・トレッドパターン」と名付けられており、接地面圧を最適化しているという
イン側はシリカを増量した新コンパウンドでウェットグリップや低発熱時のグリップを確保
アウト側の1列はコーナーリング時のドライグリップ力を目指し、シリカとカーボンブラックのハイブリッドコンパウンドとのこと。ステアリングを切った高速コーナリングでは、このアウト側が主に接地する
アウト側のプロファイルもゆるやかにラウンドしたもので、コーナリングのスムーズな接地を考慮しているように見える

 タイヤにおけるカーボンブラックは、ゴムの強度を向上しグリップ力を向上することから多く使われている材料。一方シリカは近年開発の進んだ素材で、カーボンブラックと比べるとヒステリシスロス(ゴムが動いたときのエネルギーロス)が小さく、温度依存が小さい。つまりシリカが多く使われていると、同じグリップ力を効率よく発揮でき、温度依存が小さい(低い温度でもしなやか)ことから発熱の小さい領域でもグリップ力を発揮してくれる。

 同じグリップ力を得るために必要なエネルギーが小さくて済み、近年の低燃費タイヤの開発においては、このシリカをどう活用するか(コンパウンドに混ぜ込むか)が開発テーマとなっており、低燃費タイヤ開発競争で最も進化した技術だ。

 PILOT SPORT 4 Sは、そのシリカをPSSより多く投入することでより効率よくグリップを発揮するタイヤとなっている。シリカを活用したタイヤの特徴としてしなやかな特性も持ち、ウェットグリップ力が向上。ラベリング制度でも最高グレードとなるウェットグリップ「a」を獲得したタイヤとなった。

 メルセデスAMG E43 4MATICでの試乗コースは、メルセデス・ベンツ コネクションのある六本木をスタート地点とし、本田技研工業本社のある国道246号方面に向かい、国道246号を右折。赤坂陸橋の交差点でUターンするという2km程度のものだった。

 このような場所ではグリップがどうこうということは分かりにくいが、PILOT SPORT 4 Sの美点は走り出してすぐに感じることができた。ハイグリップのスポーツタイヤというと、剛性感やグリップ力が高いことから“ゴリゴリ”とした手応えを想像しがちだが、PILOT SPORT 4 Sは実にスムーズにタイヤが回っていく。メルセデスAMG E43 4MATICでは、センターコンソールのスイッチで「Comfort」「Sport」「Sport+」の3つにサスペンションセッティングを変更できるが、ComfortモードはメルセデスAMG E43 4MATICの高い静粛性と相まってタイヤの存在を忘れるくらいの静かさとスムーズさを実現している。

 Comfortモードではタイヤの手応えがあまりに分からないため、基本はSportモードで走行。このモードにするとアクセル操作におけるタイヤの反応が分かりやすくなり、アクセルを入れた際のタイヤの反応速度も速い。アクセルをすっと入れるとスムーズに加速し、その際の手応えも良質なものだ。

 そのスムーズさはアクセルをOFFにしたときに顕著に現われ、一定速での走行中にアクセルをOFFにした際のスピードの落ち方が自然で、よく転がるタイヤだということが分かる。この特性はタイヤの真円度が高く、転がり抵抗が小さいことを示しており、“いいタイヤだなぁ”という雰囲気を強く感じることができた。

 また、高発熱領域でなくてもグリップを発揮するコンパウンドのためか、タウンスピードでステアリングを切った際のヨーの立ち上がりもスムーズ。メルセデスAMG E43 4MATICの高剛性ボディをしっかり支える感じもあり、気持ちよくレーンチェンジができる。

 装着されていたタイヤは245/35 ZR20(95Y)というマーキングされており、おそらくメルセデス・ベンツ承認タイプのMO版だろうが、同サイズの一般仕様は転がり抵抗性能が「B」(RRC[転がり抵抗係数]が9.1≦RRC≦10.5の領域)。低燃費タイヤとうたってよいタイヤは「A」(7.8≦RRC≦9.0)からとなるのだが、PILOT SPORT 4 Sでは5サイズがその領域に達しており、シリカをコントロールして投入した結果、燃費性能も優れたタイヤになっていたということだろう。

 ハイグリップタイヤというとライフ性能が気になる点だが、この点について日本ミシュランタイヤ PC/LTタイヤ事業部 マーケティング部 ブランド戦略マネージャー 成瀬朋伸氏に聞いたところ、PS4より改善されているとのこと。ドライグリップ&ウェットグリップがよくなり、転がり抵抗も小さくなり、さらにライフ性能もよくなるとはにわかに信じがたいところだが、「構造面でPS4より高価な素材を投入している」とのことで、変形や発熱コントロールに優れているのだろう。

日本ミシュランタイヤ株式会社 PC/LTタイヤ事業部 マーケティング部 ブランド戦略マネージャー 成瀬朋伸氏(左)と、メルセデス・ベンツ日本株式会社 企業広報課 澤井裕規氏(右)。写真のメルセデスAMG E43 4MATICを試乗した
メルセデス・ベンツ 澤井氏のお気に入りポイントは、「ミシュランさんの訴求ポイントとは異なるのでしょうが……」と前置きしつつ、PILOT SPORT 4 Sの持つリムプロテクターとのこと。この深いサイドウォールで構成されたリムプロテクターであれば、ホイールが傷つくことも減るだろうと語ってくれた

 一番のウリである強大なドライグリップは試すことはできなかったが(一般道なので当たり前)、スムーズな加減速、気持ちのよい転がり感、キレのあるステアリング操作感、静粛性などはタウンスピードで確認できた。乗り心地に関しても突き上げ感はまったくなく、路面からの入力がよくコントロールされていると感じることができるものだった。

 このPILOT SPORT 4 Sの発売は4月1日。高いレベルのドライグリップ性能やウェットグリップ性能を試す機会があったら、改めてレビューをお届けしたい。

AMGにも純正採用されるPILOT SPORT 4 S。フェラーリ承認のK1タイプもラインアップする

編集部:谷川 潔

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