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トヨタ、警告アイコンなどで歩行者や自転車乗りを守る開発中の「アダプティブヘッドライト」

2022年1月26日(現地時間) 発表

新たな機能を搭載したアダプティブヘッドライトを開発中

歩行者や自転車乗りを検知すると同時にクルマの接近も知らせる

 トヨタ自動車の米国の先進安全技術研究センター(CSRC=Collaborative Safety Research Center)は1月26日(現地時間)、新たな機能を搭載した「アダプティブヘッドライト」を用いた、車両と歩行者の新しいコミュニケーション方法についての研究開発内容を公開した。

 2021年上半期のアメリカの交通事故死者数は急増して、米国道路交通安全局(NHTSA)がデータを収集して以来、46年間で最大数になったという。特に歩行者の死亡者数が多く、年間6000人以上。これは過去10年間で46%増となっているほか、最近は自転車の死者も増加傾向にあるという。

 CSRCは、安全に関する研究者や規制当局のコミュニティの一員として、歩行者と自転車の事故の要因の解明に取り組んでいて、死亡者数を減少させるために複数のLEDとコンピュータチップを組み合わせたハイテク機能を搭載した新しいアダプティブヘッドライトの開発を進めている。

 開発中のアダプティブヘッドライトは、ドライバーのために道路を照らすワイドビームに加え、複数のポイントや色の付いた光を道路に投射することが可能で、CSRCの研究者と共同で研究開発を行なっているアイオワ大学は、この新しいアダプティブヘッドライトが交通弱者の注意を引き、さらには交通弱者との新しいコミュニケーションになり、衝突事故を減らすことができると期待している。

 ミシガン州アナーバーにあるCSRCのシニアプリンシパルエンジニアであるリニ・シェロニー氏は「歩行者や自転車乗りは、後ろからクルマが来ることに気がつかないことが多いのです。双方が正確に接近していることを知ることができれば、安全性の向上につながります」と事故の要因について語っている。

路面に警告アイコンを投影することで車両の接近を歩行者や自転車乗りに知らせる

歩行者の多くが「自分はドライバーに見えている」と思いがち

 これまでの研究で、歩行者の多くは「自分はドライバーに見えている」と過大評価しがちで、より目立つ服装をすることで安全性を高めようという意識が薄いということが分かっているという。また、死亡事故の4分の3は夜間に発生していることから、この新しいアダプティブヘッドライトの技術が死亡事故減少に役立つと期待されている。

 CSRCが開発中のアダプティブヘッドライトは、歩行者や自転車の周囲の地面に明るいボックスを投影し、注意を引くと同時にドライバーに存在を知らせる機能と、歩行者に見えるように路面に赤や白で警告アイコンを表示させる機能を搭載して、車道付近を走る自転車や歩行者に注意を促すという。

 これにより、ドライバーと歩行者や自転車乗りに今より数秒早く警告を発することができ、同時にADAS(Advanced Driver Assistance System=先進運転支援システム)による警告や、ステアリングやブレーキを自動的に操作することで衝突を回避できるようになり、歩行者や自転車乗りの命を救える可能性が高まるとしている。

アイオワ大学の国立先進運転シミュレータ

 この研究開発は、世界最高の衝突シミュレータの1つであるアイオワ大学の国立先進運転シミュレータで行なっていて、実験はドライバーを使ったものもあれば、歩行者や自転車を使った実験もあるという。またアイオワの施設には、世界で2台しかない歩行者と自転車用のシミュレータもあり、研究者たちはさまざまな交通状況に対して歩行者や自転車乗りがどのように反応するかもデータを記録しているという。

 シェロニー氏は「シミュレータによる研究では、アダプティブヘッドライトを搭載した車両なら、歩行者死亡事故をかなり減らすことが期待でき、自動緊急ブレーキと同様に、歩行者死亡事故の傾向を逆転させるための機能の1つになると思う」とコメントしている。