ニュース

住友ゴム、2021年度決算発表会 事業利益はほぼ横ばい「今後はEV用タイヤに注力」と山本社長

2022年2月9日 開催

住友ゴム工業株式会社 代表取締役 社長 山本悟氏

原材料や海上輸送費のコスト増が課題

 住友ゴム工業は2月9日、2021年12月期(2021年1月1日~12月31日)の決算説明会をオンラインで実施した。登壇したのは、代表取締役 社長 山本悟氏、代表取締役 副社長 木滑和生氏、取締役 常務執行役員 石田宏樹氏、常務執行役員 経理部長 大川直記氏の4名。

 住友ゴムグループの2021年12月期の連結業績は、売上収益が9360億3900万円(前年同期比18.4%増)、事業利益が519億7500万円(前年同期比19.8%増)、営業利益が491億6900万円(前年同期比27.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が294億7000万円(前年同期比30.4%増)となった。

 山本社長は業績について「グループを取り巻く環境は、為替の円安により輸出環境が改善したことに加え、欧米をはじめ多くの市場で回復基調となるなど、明るい兆しも見えたものの、海上輸送コストや原材料価格の高騰の影響を受けた」と説明。続けて「2025年を目標年度とした中期計画の実現に向けて、経営基盤強化を目指す全社プロジェクトを強力に推進するとともに、世界の主要市場に構築した製販拠点の効果の最大化を目指して顧客ニーズに対応した高機能商品を開発、増販するなど、グローバル体制による競争力の強化に取り組んできた」と語った。

 また、タイヤ事業に関しては、売上収益は7950億4500万円(前期比16.9%増)、事業利益は413億9800円(前期比1.1%増)と、「世界的な半導体不足などの影響があるものの、市販用タイヤ、新車用タイヤともに、新型コロナウイルスの影響からの回復傾向により販売が伸び、売上収益は前期を上まわり、事業利益はほぼ横ばいであった」と山本社長は説明した。

2021年度 連結業績
2021年度 セグメント別業績
2021年度 増減要因イメージ

 続いて2022年度の連結業績予想については、売上収益を1兆500億円の前期比12.2%増としたものの、セグメント別事業利益はタイヤ事業が21%減、スポーツ事業が19%減、産業品他は27%増益と見込み、連結では前期比100億円減の420億円とした。

 事業利益の100億円減予想については、原材料と海上運賃高騰の影響が依然として大きいほか、設備投資の増加、販売活動の不調に加え、デジタル関連費用の経費増加などが主なマイナス要因とのこと。値上げ効果でなんとか100億円減にとどめたとしている。

2022年度 連結業績予想
2022年度 セグメント別業績予想
2022年度 増減要因イメージ
タイヤ生産能力の推移
タイヤ設備稼働率、生産量の推移
株主還元

EV(電気自動車)用タイヤの投入でシェア拡大を目指す

 エリア別のタイヤ販売については、日本では市販用のオールシーズンタイヤで新たな需要創出を図っているとし、乗用車用だけでなく、商用車用とタクシー用と幅広くラインアップを揃えたことで、発売から4年で販売本数を10倍に伸ばしたという。

 また、中国ではすでに地産地消で強固な製販体制を構築済みであるとし、新車用は多くの自動車メーカーに納入しており、伸長著しい中華系EVへの納入予定もあると明かされた。市販用タイヤは地域別で安定した販売基盤を築いていることに加え、自社開発のEC(通販)サイトを活用することで販売底上げを実現したという。さらに、2022年4月にダンロップ初の市販用EVタイヤを発売し、中国市場でのプレゼンス向上を図るとしている。

 そして最大市場の北米では「ファルケン」ブランドが順調で、市販用タイヤ販売が2021年には1000万本を超え、市販用乗用車タイヤでのシェアが5%まで伸びたという。2018年にスタートしたファルケン独自の小売店支援チーム「ファースト(F.A.S.T)」も順調に機能していて、今後も活動に重点を置いてさらなる拡充増販を目指すとしている。

日本のタイヤ販売
中国のタイヤ販売
北米のタイヤ販売

 中南米では特にブラジルに注力していて、市販用乗用車用タイヤが進出して10年間でシェアを10%超まで伸ばしている。欧州市場では、市場規模の大きいドイツとイギリスに注力。メルセデス・ベンツ「Gクラス」などへの新車装着拡大と、その波及効果で市販用も増販。今後も欧州プレミアムカーでの新車装着を拡大する計画という。そのために供給拠点であるトルコ工場への投資も決定している。

 また、イギリスでは、2017年に買収したミッチェルディーバーが、積極的なM&Aを行なうことで、卸先6000円超、小売167店舗と、イギリスのタイヤ市場の約2割を占める販売基盤を構築。南部ではほぼ店舗展開が進んだことで、今後は北部にも拡充する計画とした。

ブラジルのタイヤ販売
欧州(ドイツ)のタイヤ販売
欧州(イギリス)のタイヤ販売

 続いて山本社長は、EV化が急速に進む中国市場と欧州市場へ投入する、ダンロップ初の市販用EVタイヤとなるe.スポーツマックスについて、「当社として最高レベルの低燃費性能を誇るとともに、ウェットグリップ性能と操縦安定性能も高次元で両立いたしました。さらに、当社が強みを持つ特殊吸音スポンジ、サイレントコアも搭載し、EVに求められる優れた静粛性を実現した商品となっております」と説明。加えて、「今後、EVタイヤに当社が強みとするIMS(パンク応急修理キット)、DWS(空気圧低下警報装置)、センシング技術を融合し、さらにソフトウェアを加えたソリューションビジネスで、CASE時代に対応してまいります」と今後のさらなる高機能化についても言及した。

高機能タイヤの拡販(EVタイヤ)

ダンロップ、初のEV向けタイヤ「e.スポーツマックス」を中国で発売 史上最高レベルの低燃費と低電費を両立

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1387304.html

 また、2019年に掲げた売上収益1兆円、事業利益1000億円の実現に向けて山本社長は、「2025年までに売上収益1兆円達成についてはめどが立ってきたが、事業利益1000億については、コロナという大きな外部環境の変化もあり、もう一段の努力が必要だ」と説明。加えて、「高機能商品の開発増販、設備の増設、新商品のさらなる研究開発も含めて、差別化できる競争力のある商品、特にEV車対応というのは非常に大きな柱になってくると思うので、そこにまずは力を入れていきたい」と語った。

グループ理念
2020年発表の住友ゴムグループ中期計画
グローバル体制の強化
世界のタイヤ需要と注力市場
グローバルタイヤ販売の拡大
ソリューションビジネスの目指す姿
空気圧・温度管理サービスの進捗
センシングコア
CASEへの対応技術
ソリューションビジネスのグローバル展開