トヨタ、1.4リッター3気筒ターボ搭載「GR86」でカーボンニュートラルレースに挑む 鈴鹿5時間レースで実証

鈴鹿サーキットの5時間レースでカーボンニュートラルマシンが走る

　3月19日～20日、鈴鹿サーキット（三重県鈴鹿市）で「ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook 第1戦 SUZUKA 5時間耐久レース」（以下、S耐鈴鹿5時間）レースが開催される。このスーパー耐久シリーズには2021年からST-Qクラスが設定され、特別な開発などを伴う車両などが参戦できるようになった。その代表格が水素燃焼エンジンを搭載する32号車 ORC ROOKIE Corolla H2 Concept（水素カローラ）で、ルーキーレーシングの代表でもありトヨタ自動車社長でもあるモリゾウ選手こと豊田章男氏がドライブすることでも大きな注目を集めた。

　2022年は、ST-Qクラスへの参戦が増加。カーボンニュートラル燃料を使う、トヨタ「GR86」、スバル「BRZ」、マツダ「MAZDA2」が新たに参戦する。

　2月23日に富士スピードウェイ（静岡県駿東郡小山町）で開催された公式テストには、それらの車両も参加。積極的な走り込みを行なっていた。

　とくに注目の1台である28号車 ORC ROOKIE GR86 CNF Concept（以下、カーボンニュートラルGR86）は、2021年の最終戦でモリゾウ選手が明かしたように、1.4リッターの直列3気筒ターボエンジンを搭載して戦う。このエンジンは、GRヤリス用の1.6リッター直列3気筒ターボエンジンのストロークを変更して1.4リッターとしたもの。現時点で詳細なスペックは不明ながら、GRヤリスの87.5×89.7mmというボア×ストロークに対して、87.5×約77mmというボア×ストロークを持つと思われる。

　1.4リッターにダウンサイジングするのは、スバル「BRZ」が搭載する2.4リッター水平対向4気筒自然吸気エンジンと同じクラスにするため。互いにレーシングカテゴリー上は同クラスとなるエンジンを搭載して、カーボンニュートラル燃料での成績を一年を通じて競っていくものとなる。

写真は2月23日の富士テストのもの。鈴鹿ではカラーリングの変化にも注目

独特の排気音でゆっくりとパドックを走っていたカーボンニュートラルGR86

カーボンニュートラルGR86の目標は完走か？

　2月23日の富士テストでは、28号車 カーボンニュートラルGR86は当初から好調なタイムを記録。最終的には1分53秒454のタイムを記録した。スバルのカーボンニュートラルBRZが徐々にタイムを上げていって1分56秒197を記録したのと対照的なタイムの出方をしていた。

　TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ第1戦 安芸高田において、GAZOO Racing Company President 佐藤恒治氏に仕上がりを聞いたところ、「まだまだ、いっぱいトラブルが出ている」とのこと。外から見ている限りは好調な仕上がりに見えていたのだが、内情は必死で技術を高めているようだ。

課題だらけと語る、TOYOTA GAZOO Racing Company President 佐藤恒治氏

　とくに注目されるスバルとのカーボンニュートラル対決においては、スバルさんの仕上がり具合も分からず、実際に鈴鹿が始まってみるまでは何も分からないとのこと。トヨタが勝つ、スバルが勝つではなく、当初の目標は5時間をカーボンニュートラル燃料でお互いに走りきることとなりそうだ。

　どのようなカーボンニュートラル燃料を使っているかは今後発表していくとのこと。現状は輸入したカーボンニュートラル燃料を使用することとなるが、将来的にはメーカーとも協力して国産のカーボンニュートラル燃料にしていきたいとのことだ。

　カーボンニュートラルGR86の走行音は、現状の4気筒GR86とは異なり、まったく異質なもの。3気筒による排気干渉のない排気音、さらに排気エネルギーもターボによって回収されているため独特のものがある。F1のエンジンはV型6気筒で、ターボによって排気エネルギーを回収しているため、理屈上はその半分、片バンクと同様の排気脈動が起きていることになる。鈴鹿サーキットにおいて、その独特の排気音を確認していただきたい。

　トヨタは、スーパーフォーミュラ、SUPER GTに続き、スーパー耐久でもカーボンニュートラル燃料エンジン開発に取り組んでいくこととなる。