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豊田章男社長がサプライズ発表した新開発3気筒1.4リッターターボは、AE86搭載の4A-G型エンジンと同じ77mmストロークだった

GRヤリスに搭載されているG16E-GTS型エンジン。新エンジンはこのエンジンをベースにストロークダウン。77.0mmという4A-G型と同じストロークで生まれてくる

トヨタが新開発する合成燃料対応3気筒1.4リッターターボエンジン

 11月13日のスーパー耐久最終戦岡山の記者会見で、トヨタ自動車 豊田章男社長は、2022年のスーパー耐久には水素カローラに加え、新開発のサステナブルな合成燃料対応3気筒1.4リッターターボエンジンを搭載するGR86を参戦させることを発表した。

 その模様は関連記事でお届けしたとおりだが、決勝日の取材により3気筒1.4リッターターボエンジンのボア×ストロークが予想どおり87.5×77.0mmであることが判明した。

豊田章男社長がいきなり発表、2022年は水素カローラに加え合成燃料使用の3気筒1.4リッターターボ搭載GR86もS耐参戦へ

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1366172.html

 予測では、GRヤリス用G16E-GTS型エンジンのボア×ストロークは87.5×89.7mm、単気筒あたりの排気量は約539.1ccであることから、この排気量が3気筒で1400ccに収まるよう計算。円柱の計算式により、πr2にストロークを掛ければ単気筒辺りの排気量が求まる。これを逆算してとやっていると時間がかかるので、Excelのゴールシーク機能を使ってストローク値を求めてやればよい。桁取りが大変かもしれないが77.591という数字が求まり、ストロークは77mm近辺だろうなというあたりがつく。

Excelのゴールシークメニュー。目標数値に対して必要な条件計算を行なう機能で、Excelらしいシミュレーション機能を楽しめる

 ここまで来ればトヨタ系スポーツエンジンに詳しい人なら77.0mmというストローク値に特別な意味があることに思い当たるだろう。トヨタを代表するスポーツエンジンとしては、2000ccの3S-G型、1600ccの4A-G型があった。2000ccの3S-G型は覚えやすい86.0×86.0mmのスクエアのボア×ストローク。4A-G型は81.0×77.0mmのボア×ストローク。つまり、今回トヨタがGRヤリスのエンジンをベースに開発する3気筒エンジンは、GR86のオリジンとも言えるAE86と同じストロークを持つことになる。

 ちなみにこのストローク値は、トヨタ伝統のA型のアッパーモデルではよく使われている値で、1500ccの3A系でも77.5×77.0mmというものになっている(つまり、4A系は3A系のボアアップ版)。

物語をもって生まれてくる新型エンジン

 このストローク値の一致についてトヨタ自動車 GAZOO Racing カンパニープレジデント 佐藤恒治氏らに確認したら、まったくの偶然であるという。たまたまこの値になり、77.0mmというストロークになることは開発の仕事をしているときにたまに出会う、不思議な偶然であるとのことだ。

 トヨタ伝統のA型を受け継ぐ77.0mmというストロークで作られるこの新型エンジンでは、サステナブルな合成燃料が使われ、次世代への研究開発をモータースポーツのフィールドで行なっていく。

 スポーツカーやスポーツエンジンには物語が必ずあると言われるが、トヨタの新しいダウンサイジングターボエンジンは、「偶然にもあの4A-G型と同じストローク」という物語をもって生まれてくる。

トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 豊田章男氏