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NTT Com、データセンターの電力を幅広いグリーン電力から選択して脱炭素社会に貢献する新サービスについて解説

2022年3月28日 開催

オンライン説明会に参加したNTTコミュニケーションズ株式会社 代表取締役副社長 副社長執行役員 菅原英宗氏(左)とNTTコミュニケーションズ株式会社 プラットフォームサービス本部 データプラットフォームサービス部 担当部長 データセンタープロダクトオーナー 松林修氏(右)

大規模商用データセンターとして日本で初めてのサービス

 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(NTT Com)は3月28日、脱炭素社会の実現に向けてデータセンターで取り組む新サービスについてのオンライン説明会を開催した。

 NTTグループ内でスマートエネルギー事業などについて担当しているNTTアノードエナジーと共同で4月1日から提供を開始する新サービスでは、NTTアノードエナジーから供給される太陽光発電、風力発電、バイオマス発電といった再生可能エネルギーを、NTT Comが運用している5つのデータセンター(2022年4月時点)で使用。

 大規模商用データセンターとして日本で初めて、ユーザーがICT機器で利用する電力に再生可能エネルギーを選択できるメニューとして提供し、合わせて日本の温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)や「RE100」などの国際的な環境イニシアティブの報告にも利用できる「非化石証書」が発行され、脱炭素化に向けたESG経営を促進できるようにする。

新サービスの概要

2030年度にネットワークとデータセンターでカーボンニュートラル実現

NTTコミュニケーションズ株式会社 代表取締役副社長 副社長執行役員 菅原英宗氏

 説明会では最初に、カーボンニュートラルの実現に向けてNTT Comが続けている取り組みについて、NTTコミュニケーションズ 代表取締役副社長 副社長執行役員 菅原英宗氏が説明。

 菅原氏はNTT Comがこの1月からNTTドコモグループの一員となり、新ドコモグループで取り組んでいる法人向けサービス「ドコモビジネス」を推進していることを紹介。現在は欧米の企業を中心に、SDGsやESGといった考え方が重要視されるようになっており、むしろ積極的に取り組んでいないと資金調達もままならないような現状になっており、取り組みを進めている企業ブランドがなければ優秀な人材といったリソースも集まらない時代になっているとした。

 これに対してNTT Comでは、このような時代の展開を新たな成長の機会と捉え、温暖化に対する対応を経済的な成長に対する制約、コストとする思考から脱却。構造転換と大胆な投資によるイノベーション創出で成長分野への取り組みを加速する必要があるとの考えを示した。

 このためにNTTグループでは、2021年9月に新たな環境エネルギービジョン「NTT Green Innovation toward 2040」を策定。2040年度までにNTTグループ全体でカーボンニュートラルの実現を目標としており、これに先立つ2030年度にはネットワークとデータセンターでカーボンニュートラルを実現するためさまざまな取り組みを進めているという。

NTTドコモ、NTT Com、NTTコムウェアの3社による法人向けサービス「ドコモビジネス」のブランドロゴ
NTT Comではカーボンニュートラルの実現を目指す社会の変革を新たな成長の機会と捉え、取り組みを進めている
2021年9月に策定された新たな環境エネルギービジョン「NTT Green Innovation toward 2040」

 具体的にNTT Comでは、「Green of ICT」で自らのグリーン化を図り、「Green by ICT」で社会とユーザーのグリーン化を支援していく。「Green of ICT」では4種類の取り組みを行なっており、設備面では通信ビル設備やデータセンターでの省電力設備導入として、従来比でエネルギー消費を約60%とした空調設備を導入しており、NTT Comが本社を構える大手町プレイスは電力のゼロエミッション化も達成している。

 電力調達では新サービスも共同実施するNTTアノードエナジーから再生可能エネルギーの調達を進めており、環境に配慮した部品や製品などを利用するグリーン調達は2016年度と比較して2020年度実績は約3倍に増やしている。働き方の面ではリモートワークを推進。コロナ禍の影響もあり、目標として設定している7割を超える8割の業務運営をリモートワークで行なっており、これによって約7.6t/日のCO2削減を実現している。このほか、NTTグループがインテル、ソニーの共同で進めているIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想についても研究開発を進め、電力消費の大幅削減を目指していく。

 一方の「Green by ICT」でも同様に、「CO2排出量可視化」「エネルギー最適化」「消費者の行動変容促進」「サーキュラーエコノミー」という4つの取り組みを行なっており、このうち「CO2排出量可視化」と「エネルギー最適化」が同日発表の新サービスを推進する部分になると説明。「消費者の行動変容促進」と「サーキュラーエコノミー」についての取り組みはパートナー企業と議論を進めている段階で、内容が煮詰まり次第明らかにすると語った。

自らをグリーン化する「Green of ICT」、社会とユーザーのグリーン化を支援する「Green by ICT」を組み合わせてカーボンニュートラルの実現を目指す
「Green of ICT」で取り組む4項目
「Green by ICT」で取り組む4項目。このうち「CO2排出量可視化」と「エネルギー最適化」が同日発表の新サービスを推進する部分になる

4種類の料金体系からニーズに合わせて選択できる

NTTコミュニケーションズ株式会社 プラットフォームサービス本部 データプラットフォームサービス部 担当部長 データセンタープロダクトオーナー 松林修氏

 新サービスの具体的な内容については、NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 データプラットフォームサービス部 担当部長 データセンタープロダクトオーナー 松林修氏が解説を担当した。

 松林氏は新サービスの概要を説明し、サービスプロバイダのクラウドサービスを提供する事業者から要望の強いオフサイトPPAについても対応することが特徴になっていると語った。

 データセンターではサーバーに加えて空調やUPS(無停電電源装置)、セキュリティ、監視カメラなどさまざまな部分で電気を使っており、NTT Comと取り引きのある事業者では会社で使う電気の95%以上をデータセンターが占めているケースもあるという。NTT Com自身でもデータセンターで多くの電力を消費しており、データセンターのグリーン化が通信に関連するカーボンニュートラル化で直接的な貢献を果たすと説明。これに向け、電力の使用量自体を抑制する省エネルギー化と同時に、再生可能エネルギーの利用促進を両軸としてNTTグループ全体で推進しているという。

 具体的には、省エネルギー化では間接蒸発式と呼ばれる最新の空調設備の導入を軸として使用する電気の全体量を抑え、再生可能エネルギーの利用促進ではNTT Com自身の電力消費で再生可能エネルギー化を推し進めているが、さらに取り引き先であるユーザーのカーボンニュートラル化に貢献するため新サービスの提供を始めることになった。

データセンターではサーバー以外にもさまざまな機器で電気が使われている
NTTグループで取り組む省エネルギー化と再生可能エネルギーの利用促進で、新サービスは再生可能エネルギーの利用促進を推し進める策となる

 契約内容に応じてさまざまに変動するため具体的な金額は非公開とされたが、新サービスではユーザーニーズに細かく対応できるよう、4種類の料金体系を設定。松林氏の説明では分かりやすいよう、松竹梅とプレミアムの4名称を使い、コストを重視する梅コースを含むすべての料金体系で「非化石証書」による環境価値を提供。竹コースでは提供可能な発電種別として用意する太陽光、地熱、バイオマスという電源種別の指定も可能になり、松コースではさらに「非FITエネルギー」の指定も可能になる。

 エネルギーの非FIT指定については、FITエネルギーには国民の負担金が投入されており、再生可能エネルギーとしての環境価値の一部は国民に帰属するとの考えもあることから、純粋な再生可能エネルギーである非FITエネルギーを使いたいというユーザーニーズに対応するメニューを用意することになった。

 また、外資系の大手クラウドサービス事業者などをターゲットとしたプレミアムコースでは、同じ再生可能エネルギーでも、大規模な水力発電では発電所の建設時に大量のコンクリートが使用されて多くの炭素が放出され、周辺環境にも影響を与えるとの考えが存在することから、これに対応できるよう、追加性のある自社専用の太陽光発電設備などを利用するオフサイトPPAとしてサービスを提供するという。

ユーザーニーズ別に4種類のコースを設定。東京、横浜、埼玉にある5つのデータセンターで利用できる

 ユーザーに対する環境価値の提供となる非化石証書のサンプルも紹介。「発電施設区分」「使用量」といった提供情報を用意して、国際的な環境イニシアティブの報告に使って企業イメージの向上などにつなげることもできると述べた。

 最後に松林氏はNTT Comで進めているデータセンターの省エネ化についても解説。「壁面吹き出し空調方式」「AIで空調をリアルタイム制御するSmart DASH」などの技術を導入しており、各社で保有するサーバーをNTT Comのデータセンターに移すだけでも脱炭素に貢献できるとアピールした。

NTTアノードエナジーから再生可能エネルギーの電力と「非化石証書」が提供される
経済産業省が発行する非化石証書で企業イメージの向上も図れる
データセンターも多彩な技術で省エネ化を推し進めている