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トヨタ、GRヤリス用新型8速ATを早川茂副会長兼テストドライバーによって開発加速

TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジを通じて開発されるGRヤリス用スポーツ8速AT。マニュアル変速時のシフト方向も含めて評価されている

アマチュアドライバーならではの感性で8速ATを開発

 トヨタ自動車がTOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ参戦を通じて開発を進めているのが、GRヤリス用の新型8速ATだ。現在、GRヤリスではRSグレードにダイレクトシフトCVTをラインアップしているものの、スポーツ向けの自動変速機は用意されていない。もちろん、GRヤリスはスポーツカーという位置づけのため6速MTのRZが本命のグレードとはなるが、もっとスポーツ性の高い自動変速機がほしいという人も多いだろう。

 そういった声に応えてトヨタが開発を進めているのが、トルクコンバータを用いた8速AT。いわゆるステップATになる。この新型8速ATで重視しているのはスポーツ性であり、開発目標としてはDレンジでスポーツ走行をこなせるものであるという。

 そのトヨタが開発の場に選んだのが、一般公道でのリエゾン走行のあるTOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ。ラリチャレであれば、さまざまな公道での一般走行、スペシャルステージでのスポーツ走行と多様な開発環境を得ることができる。

 さらにトヨタは開発テストドライバーに同社 副会長の早川茂氏を起用。アマチュアドライバーである早川副会長ならではの手腕に期待しているという。

トヨタ自動車株式会社 代表取締役副会長 早川茂氏。第2戦は新しいルーキーレーシングカラーで登場。新型8速ATを搭載するGRヤリスで参戦している

 これは、もともと早川副会長がラリチャレに参戦しており、今シーズンの開発テストドライバーとして白羽の矢が立ったということのようだ。トヨタスタッフによると、「例えば、プロドライバーの勝田範彦選手では出ないようなトラブルが、早川副会長がドライブすると出てくる」と言い、ある意味クルマの不具合を避けて走らす引き出しを多数持っているプロドライバーに比べ、早川副会長は素直な運転をしてくれているようだ。

 実際、第1戦の安芸高田では新型8速ATの開発不足が出てしまったとのこと。グラベルのスペシャルステージで、3速から2速へ減速、そこからの再加速時にロックアップできず、鋭い加速が得られなかったという。そのため、今回の第2戦ではその部分のプログラムに手が入っており、第2戦を通じて変速パターンを検証していく。

第1戦で使用したバンパーまわりは壊れてしまったとのことで、第2戦は強化タイプのバンパーを投入した

マニュアル変速時のシフト方向をテスト中

見た目は変わらない、新型8速AT搭載のGRヤリス。指を差した先にATが収まる

 この新型スポーツ8速ATで話題になったのは、マニュアル変速時のシフトアップ、シフトダウンの位置。従来のトヨタ車では、手前に引くとシフトダウン、奥に入れるとシフトアップとなっていたが、この開発車両では手前に引くとシフトアップ、奥に入れるとシフトダウンと逆になっている。

 これは、同社のマスタードライバーであるモリゾウ選手(豊田章男社長)のアドバイスによるものであるとしており、ラリチャレを通じて使いやすさの検証をしていく。安芸高田の記事でこの変更についてSNSで言及されていたが、トヨタの開発スタッフもそのSNSを見ており、「きちんと気がついてくれたのがうれしい」(記者からすると、そこまでチェックしているトヨタに驚き)とのこと。従来からのパターンを変更するところでもあるので、多様な意見を求めているようだった。

 ラリチャレ茅野においては、新型8速ATのギヤボックスケースを見せていただいたが、見た目にはすでに鋳造のギヤボックスになっていた。その点について確認してみると、「これはありもののギヤボックスを使っています。エンジンとの接合面を切削加工で作り出しています」とのこと。リブが立つなど重量面での追い込みも行なわれておらず、本当に初期の開発段階でラリチャレに投入しているようだ。

特別に見せてもらったATギヤボックス。鋳造などのキャスティングが行なわれているため開発が進んでいると思いきや「流用です」とのこと。シーズンを通して性能を検証していく

 ラリチャレ茅野は高地で気温も低めだったため、新型8速ATにとっては優しい状況とのこと。一番の問題は発熱であるとし、夏へ向けてのラリチャレで温度面での負荷をかけていく。

ラリーをスタートする早川会長