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カーボンニュートラル燃料のGRヤリスがラリチャレ茅野で一般公道を走る 違いは排気のにおいだけ?

TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ 第2戦 八ヶ岳 茅野に参戦した、カーボンニュートラル燃料を使用するGRヤリス

カーボンニュートラル燃料車をラリーに投入

 TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ(以下、ラリチャレ) 第2戦 八ヶ岳 茅野が4月16日~17日の2日間にわたって長野県茅野市を中心に開催された。このラリチャレ茅野において、トヨタ自動車は、同社がかかげる「もっといいクルマづくり」に取り組む試作車両としてカーボンニュートラル燃料を使用する114号車 GRヤリスを投入。一般道におけるカーボンニュートラル燃料の可能性を探っていた。

 トヨタスタッフに114号車 GRヤリスの変更点を聞いたところ、「何も変更していない」とのこと。テストやスーパー耐久においてはすでにカーボンニュートラル燃料を使用してはいるものの、今回初めて一般公道を使用するラリーにカーボンニュートラル燃料を用いるという。実際に走ってもらって、カーボンニュートラル燃料による違いを見ていくとのことだった。

カーボンニュートラル燃料を使用したGRヤリスの排気管。とくに違いはない

 一般にカーボンニュートラル燃料は通常のガソリン燃料に比べて浸透度が高く、燃焼よりも配管やタンクまわりが問題になることが多い。エンジンのすきまからしみ出して、オイルがシャバシャバになったりと、エンジンの密閉性が問題にもなる。この点についてトヨタスタッフに聞くと、「実はGRヤリスのエンジンはラリー2規定を考慮して設計されているため、E20程度のカーボンニュートラル燃料の使用は考慮されている」とのこと。どこまで考慮されているかは教えていただけなかったが、「あれとか、これとか、それとか、企画段階で多くのことを考慮して設計されている」と語ってくれた。

 GRヤリスに搭載された直列3気筒 1.6リッター直噴ターボ G16E-GTS型は、日本仕様で1618ccの排気量から最高出力200kW(272PS)、最大トルク370Nm(37.7kgfm)を発生。つい先日発表されたGRカローラでは最高出力224kW(304PS)/6500rpm、最大トルク370Nm(37.7kgfm)/3000-5550rpmと、まだまだ余力のあるところを見せつけている。

 そのエンジンが、最初からカーボンニュートラル燃料の使用も考慮されていたのには驚いた。

エンジンベンチでは同じ、でもドライバーの感性では?

カーボンニュートラル燃料車での走行インプレッションを語る大森文彦選手

 このカーボンニュートラルGRヤリスで参戦しているのは、大森文彦選手と勝田範彦選手のコンビ。大森選手は5年ほど前からラリーに参戦しているアマチュアドライバーで、勝田範彦選手は全日本選手権を何度も獲得しているスペシャルドライバーだ。ドライブするのは大森選手で、勝田選手はコドライバーとして参加していた。

 大森選手にカーボンニュートラル燃料の使用感を聞いてみると、「違いはないです」とのこと。加速感やパワー感など、ガソリン燃料となんら違いはないという。トヨタスタッフに確認しても、ガソリン同等のパワーカーブが出ており、燃焼も問題ないとのこと。ラリチャレ茅野は、高地であり燃焼に厳しい面はあるかなと想像したが、ターボ車であるためまったく問題も出ていないという。

 それでは記事としてややインパクトに欠けるため、あれこれ重箱の隅をつつくように確認していたら、勝田範彦選手から「やや、フラット感があるように思う」とのコメントをいただけた。勝田選手は助手席に乗っているコドラになるのだが、ピーク域でのフラット感があるように思うという。ただ、トヨタスタッフによるとテスト上はそのようなカーブは出ていないと言い、どこか過渡特性のところで違いが微妙に出ているのかもしれない。

勝田範彦選手(右)は、コドラとしてややフラットな感触を受けたという

 記者もクルマのまわりを一通り眺めて違いを探してみたところ、唯一とも言える違いを見つけることができた。それが、マフラーから出る排気のにおいの違い。ガソリンのGRヤリスがやや甘めのガソリンくささがあるのにたいし、カーボンニュートラル燃料のGRヤリスはさっぱり感があった。この違いは、ガソリンに色が付けてあるためなのか、それともカーボンニュートラル燃料にアルコール由来の成分が多いためか分からないが、においは異なった。ただ、排ガス規定に適合しているとはいえ、このような積極的に排ガスを嗅ぐことはお勧めできない。あくまで、なんとか違いを見つけようとした結果であると理解していただきたい。

 ちなみにカーボンニュートラル燃料の使用は第1戦安芸高田から予定されていたが、ガソリンとは異なる燃料を使うため、関係各所への事務手続きなどが間に合わなかったために第2戦からの投入となった。

 これはトヨタが水素カローラで参戦するときにもあったことだが、燃料の監督官庁が多岐にわたるため、従来と異なることをするためには多くの事務手続きが必要であることが要因として挙げられる。カーボンニュートラルは政府の目標でもあるため、一括で申請できるようになっていれば各所・各社での実験も進むのではないだろうか。

 なにがカーボンニュートラル時代の正解かは分からないが、あまりに普通にGRヤリスが公道を走っているのは印象的だった。