ニュース

SUPER GT第2戦富士 決勝、2度の赤旗やトップ2台にペナルティの大混乱 GT500は8号車ARTA NSX-GTが優勝、GT300は10号車TANAX GAINER GT-Rが優勝

2022年5月3日~4日 開催

優勝した8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組、BS)

 SUPER GT第2戦富士が5月3日~4日の2日間にわたって富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催された。2日間で延べ7万3000人という大観衆が詰めかけるなか、14時30分から決勝レースが行なわれた。

 今回は450kmというこれまでの300kmの1.5倍の距離で行なわれ、100周という長丁場のレースの予定だったが、2度の大きなクラッシュと長時間の赤旗中断で、レース終了時刻を迎え62周でゴールとなった(規定の75%を超えていないため獲得ポイントは半分となる)。

 GT500の優勝は、チェッカー後にトップ2台にペナルティが出されるという前代未聞のゴールで、3位から繰り上がった8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組、BS)。2位は36号車 au TOM'S GR Supra(坪井翔/ジュリアーノ・アレジ組、BS)、3位は12号車 カルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組、BS)。

 GT300は2番グリッドからスタートした10号車 TANAX GAINER GT-R(富田竜一郎/大草りき/塩津佑介組、DL)が優勝、2位は4番グリッドからスタートした34号車 BUSOU raffinee GT-R(柳田真孝/井出有治組、DL)、3位はポールからスタートした61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組、DL)となった。

富士決勝ダイジェスト GT500 上位2台のペナルティにより、3位チェッカーのARTA NSX-GTが優勝
富士決勝ダイジェスト GT300 大波乱のレースを制したのはTANAX GAINER GT-R
多くの観客が詰めかけた富士スピードウェイのスタンドとグリッド

レース前には3月に逝去した100号車総監督 高橋国光さんをしのんで黙祷

 今回の第2戦富士は、政府のイベント開催ガイドラインの緩和などにより、観客シートが1人おきになっていたことなどの制約が取り払われたなかで行なわれた。移動制限のないゴールデンウィークということもあり、予選日から多くの観客が詰めかけ、予選日(5月3日)は2万9000人、決勝日(5月4日)は4万4000人と、2019年の第2戦富士以来となる大観客を集めて開催されることになった。

 レース前には、今年の3月に逝去されたことが発表された100号車チームの総監督である、日本が誇るレジェンドドライバー/ライダーだった高橋国光さんをしのんで、黙祷が行なわれた。高橋国光さんは、2輪のマン島レースなどで優勝したりバイクレースで活躍した後、4輪レースへ転向し、数々のビッグレースで勝利を獲得した。その後「チーム・クニミツ」を設立し、ル・マン24時間レースやSUPER GTに参戦。SUPER GTでは2018年、2020年に年間チャンピオンを獲得したのは記憶に新しいところ。

高橋国光さん
高橋国光さんのチームや走った車両が展示された
全員で高橋国光さんのご冥福を祈った
家族やチーム関係者、土屋圭市氏などが黙祷式に参加した

 100号車のピットには、高橋国光さんのご家族、さらにはチーム関係者、かつて高橋さんのチームで一緒に入っていた土屋圭市氏なども訪れており、レース開始前にサーキットには静寂が訪れることになった。

100号車のリアは高橋国光さんのヘルメットカラーリングに

GT500クラスは、スタート直後にフロントローの2台がピットインする作戦で、トムスの2台が1-2フォーメーションを構成

GT500のスタートシーン

 今回のレースでは19号車 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南組、YH)、24号車 リアライズコーポレーション ADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平組、YH)という横浜ゴムのタイヤを装着した2台がフロントローだったが、レースがスタートすると温まりに課題があるのか、すぐに順位を落としてしまう。

ポールからスタートした19号車 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南組、YH)、最終的に6位でゴール
37号車 KeePer TOM'S GR Supra(サッシャ・フェネストラズ/宮田莉朋組、BS)はチェッカー時には2位を走っていたが、同僚の36号車を押し出したとして40秒のタイム加算

 代わってトップグループを構成したのは37号車 KeePer TOM'S GR Supra(サッシャ・フェネストラズ/宮田莉朋組、BS)、36号車 au TOM'S GR Supra(坪井翔/ジュリアーノ・アレジ組、BS)のトムスの2台が1-2フォーメーションを形成した。そこに、日産勢の最上位となる3号車 CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠組、MI)が追いつき、3台によるトップ争いが序盤に展開された。そこからやや離されてホンダ勢トップとなる100号車 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組、BS)、8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組、BS)、さらに19号車 WedsSport ADVAN GR Supraが4位争いグループを構成した。

36号車 au TOM'S GR Supra(坪井翔/ジュリアーノ・アレジ組、BS)は最終的に2位に繰り上がった

 39号車 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一組、BS)以外がすべて1回目のピットストップを終えた43周目に、GT300の大きなクラッシュが発生。はじめにFCY(フルコースイエロー、80km/hに速度制限)が出され、その後SC(セーフティカー)に切り替わった。そのFCYが出る直前に39号車はピットに飛び込み、すぐにFCYが出されたため、39号車はピットイン時のロスを相対的に少なくして3位でコースに戻ることに成功。その後もSC先導でレースが続いたが、クラッシュで破損したタイヤバリアが重機なしでは直せないということで、49周目に赤旗中断となった。

2度の赤旗でレースは時間切れ終了に、トップでチェッカーを受けた2台がペナルティで8号車 ARTA NSX-GTが優勝に

大クラッシュを起こしてしまった3号車 CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠組、MI)、ドライブしていた高星選手に大きな怪我がなかったことは不幸中の幸いだった

 この赤旗でレースは振り出しに戻ることになり、約半分の50周目からSC先導でレースは再開されることになった。トップは36号車 au TOM'S GR Supra、続いて37号車 KeePer TOM'S GR Supraとトムス勢が1-2、3位は39号車で、4位に日産最上位の3号車 CRAFTSPORTS MOTUL Z、5位は8号車 ARTA NSX-GTとなった。6位は38号車 ZENT CERUMO GR Supra(立川祐路/石浦宏明組、BS)だが、赤旗中断前にピット作業違反を取られており、ドライブスルーペナルティを差が縮まった状態でこなさないといけなくなり、必然的に最後尾にさがってしまった。

 SCがピットに戻ったのは53周目。このリスタートでトップを走っていたトムス同士(36号車と37号車)が交錯。両車とも順位を落とす結果に。これでトップに立ったのは39号車 DENSO KOBELCO SARD GR Supra、2位には3号車 CRAFTSPORTS MOTUL Z、3位の37号車、4位に8号車 ARTA NSX-GT、5位に36号車となり、39号車が後ろの4台をおさえているうちに12号車 カルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組、BS)と23号車 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ組、MI)も追いついてくる。

チェッカーを受けた時点でトップを走っていた39号車 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一組、BS)は、赤旗中断時に作業を行なってしまったと判定され、最終結果に40秒が加算された
表彰台3位を獲得した12号車 カルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組、BS)

 そしてレースは59周目にトップの39号車、3号車、37号車、8号車がパックになってストレートを走っている時に、ストレートにスローダウンしていたGT300車両があり、トップの39号車はかろうじて避けられたが、2位の3号車は避け切れずにスピンしてガードレールに大クラッシュ、ストレートには破片などが飛び散りレースは即時赤旗中断になった。なお、ドライブしていた高星明誠選手は自分の足で降りて、精密検査が必要ということで、救急車で運ばれていった(その後無事が確認された)。

 その後、壊れたガードレールをタイヤバリアで修復という応急処置が執られたが、その作業には1時間以上の時間がかかり、レースが再開されたのは18時10分。このレースの最大時間18時20分の10分前にセーフティカーでレース再開となった。このレースでは2度の給油を伴うピットインの義務が課されていたが、長時間の赤旗中断によりその義務はなしと変更され、まずはGT500とGT300の車両の並べ替えから行なわれ、その並べ替えが終わってからセーフティカー先導で60周目からレースが再開された。この時点での順位は、39号車、37号車、8号車、36号車、12号車、23号車、100号車、19号車の順に。

 しかし、冷え切ったタイヤですぐにリスタートする訳にはいかず、結局セーフティカー先導のまま18時20分をむかえ、62周でそのままチェッカーを受けることになった(レース距離の75%に達しないため獲得ポイントは半分となった)。

 ところが、そのセーフティカー先導走行中、トップを走っていた39号車に「赤旗中断中にドライバーが車両に触れた(=作業をした)」と判定され、ペナルティ(ただしペナルティの内容は明らかにされず)が出されると場内モニターに表示された。さらに、2位を走っていた37号車にも、チームメイトの36号車との接触が37号車の責任とされてペナルティが出された(こちらもペナルティの内容はすぐには明らかにされなかった)。

 このため、チェッカー時点では39号車と37号車に対するペナルイティが確定していなかったため、チェッカーを受けた時点で全車の順位が確定しないという前代未聞の事態になってしまった。その後、39号車と37号車へのペナルティは「ドライブスルーペナルティ相当だが、チェッカーまでに消化しなかったため、結果に40秒加算」と確定し、8号車 ARTA NSX-GTの優勝が確認された、39号車、37号車はそれぞれ13位と14位に降格となった。

GT500の表彰台
優勝した野尻智紀選手、福住仁嶺選手

 2位は36号車 au TOM'S GR Supra、3位は12号車 カルソニック IMPUL Z、4位は23号車 MOTUL AUTECH Z、5位は100号車 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組、BS)、6位は19号車 WedsSport ADVAN GR Supraとなった。

23号車 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ組、MI)は4位
100号車 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組、BS)は5位に

GT500結果表(暫定)

順位カーナンバー車両ドライバータイヤサクセスウェイト周回数
18ARTA NSX-GT野尻智紀/福住仁嶺BS262
236au TOM'S GR Supra坪井翔/ジュリアーノ・アレジBS1062
312カルソニック IMPUL Z平峰一貴/ベルトラン・バゲットBS862
423MOTUL AUTECH Z松田次生/ロニー・クインタレッリMI2262
5100STANLEY NSX-GT山本尚貴/牧野任祐BS3062
619WedsSport ADVAN GR Supra国本雄資/阪口晴南YH62
714ENEOS X PRIME GR Supra大嶋和也/山下健太BS4262
824リアライズコーポレーション ADVAN Z佐々木大樹/平手晃平YH62
917Astemo NSX-GT塚越広大/松下信治BS462
1016Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT笹原右京/大湯都史樹DL62
1164Modulo NSX-GT伊沢拓也/大津弘樹DL62
1238ZENT CERUMO GR Supra立川祐路/石浦宏明BS1662
1339DENSO KOBELCO SARD GR Supra関口雄飛/中山雄一BS662
1437KeePer TOM'S GR Supraサッシャ・フェネストラズ/宮田莉朋BS62
153CRAFTSPORTS MOTUL Z千代勝正/高星明誠MI1258

GT300クラスはスタートしてすぐにトップにたった10号車 TANAX GAINER GT-Rがそのまま優勝

GT300に優勝した10号車 TANAX GAINER GT-R(富田竜一郎/大草りき/塩津佑介組、DL)

 GT300はポールポジションからスタートした61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組、DL)を、2位からスタートした10号車 TANAX GAINER GT-R(富田竜一郎/大草りき/塩津佑介組、DL)が早々に抜いてトップに立つ。序盤はその10号車が61号車をじりじりと離しながらレースが展開していった。3位には34号車 BUSOU raffinee GT-R(柳田真孝/井出有治組、DL)が3位にあがり、1回目のピットストップを終えてもその3台がトップ3を構成していた。

GT300のスタートシーン

 先述のとり、レース中盤にGT300車両の大クラッシュが発生し、FCYとSCが導入され、その後赤旗中断に。さらにGT500の大クラッシュが発生して再び赤旗中断。その2度目の赤旗が出たタイミングでは10号車 TANAX GAINER GT-Rがトップに、2位は34号車 BUSOU raffinee GT-R、3位は61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT、4位は11号車 GAINER TANAX GT-R(安田裕信/石川京侍組、DL)、5位は88号車 Weibo Primez ランボルギーニ GT3(小暮卓史/元嶋佑弥組、YH)、6位は65号車 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗組、BS)となっていた。

2位になった34号車 BUSOU raffinee GT-R(柳田真孝/井出有治組、DL)
ポールからスタートした61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組、DL)は3位に

 GT300車両の多くは1回のピットストップを終えている車両がほとんどだが(一部の車両は2度以上のピットストップをしていた)、この再スタートで2度のピットイン・給油義務はなしと宣言されたので、現在上位につけている車両によるレースとなった。結局レースは2度目の赤旗の順位のままゴールし、10号車 TANAX GAINER GT-Rが優勝、2位は34号車 BUSOU raffinee GT-R、3位は61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT、4位は11号車 GAINER TANAX GT-R、5位は88号車 Weibo Primez ランボルギーニ GT3、6位は65号車 LEON PYRAMID AMG。しかし、65号車はピット作業違反を問われてペナルティが科せられることになり、ゴール後にペナルティはドライブスルーペナルティが相当と決定され、チェッカーまでに未消化ということで40秒加算となり15位に降格となった。これで7位だった56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組、YH)が6位に繰り上がった。

GT300の表彰台
優勝した富田竜一郎選手、大草りき選手、塩津佑介選手

 レース終了後にはすべての車両とドライバーがストレート上に並び、長い中断にもかかわらずチェッカーまでを見守ってサーキットに残ってくれたファンにあいさつしてまわる姿を見ることができた。また、異例のことだが、GTAの坂東代表が最後まで残ってレースを見守ってくれたファンへの感謝の言葉が述べられた。「いろいろ思うところもあったと思うが、最後まで見ていただいてありがとうございました。最終結果に関しては審査委員会などで話をしてからとなるが、これからもモータースポーツの発展に努力していきたい」という言葉を残して、最後までレースを見守ったファンに感謝する言葉を残し、ファンからは暖かい拍手が送られ、大混乱のレースはグランドフィナーレをむかえることになった。

GT300結果表(暫定)

順位カーナンバー車両ドライバータイヤサクセスウェイト周回数
110TANAX GAINER GT-R富田竜一郎/大草りき/塩津佑介DL1558
234BUSOU raffinee GT-R柳田真孝/井出有治DL58
361SUBARU BRZ R&D SPORT井口卓人/山内英輝DL958
411GAINER TANAX GT-R安田裕信/石川京侍DL358
588Weibo Primez ランボルギーニ GT3小暮卓史/元嶋佑弥YH58
696K-tunes RC F GT3新田守男/高木真一DL58
756リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラYH6058
82muta Racing GR86 GT加藤寛規/堤優威BS58
952埼玉トヨペットGB GR Supra GT川合孝汰/菅波冬悟BS58
10360RUNUP RIVAUX GT-R青木孝行/田中篤/柴田優作YH58
1125HOPPY Schatz GR Supra松井孝允/野中誠太YH58
1287Bamboo Airways ランボルギーニ GT3松浦孝亮/坂口夏月YH958
1318UPGARAGE NSX GT3小林崇志/太田格之進YH4558
146Team LeMans Audi R8 LMS片山義章/ロベルト・メルヒ・ムンタン/川端伸太朗YH1858
1565LEON PYRAMID AMG蒲生尚弥/篠原拓朗BS3358
164グッドスマイル 初音ミク AMG谷口信輝/片岡龍也YH1257
1760Syntium LMcorsa GR Supra GT吉本大樹/河野駿佑DL57
1830apr GR86 GT永井宏明/織戸学/平良響YH57
19244HACHI-ICHI GR Supra GT佐藤公哉/三宅淳詞YH57
2020シェイドレーシング GR86 GT平中克幸/清水英志郎DL57
2148植毛ケーズフロンティア GT-R井田太陽/田中優暉YH56
2231apr GR SPORT PRIUS GT嵯峨宏紀/中山友貴BS56
239PACIFIC hololive NAC Ferrari木村武史/ケイ・コッツォリーノYH2455
245マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号冨林勇佑/平木玲次YH54
2550Arnage MC86加納政樹/阪口良平/末廣武士YH54
R22アールキューズ AMG GT3和田久/城内政樹YH37
R55ARTA NSX GT3武藤英紀/木村偉織BS34
R7Studie BMW M4荒聖治/アウグスト・ファルフス/近藤翼MI4