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パイオニアと中央自動車工業、10月からの社用車運転でアルコール検知器利用義務化に備えて選定や運用を説明

2022年6月2日 開催

道路交通法施行規則が改正され、10月1日から社用車の運転には、アルコール検知器を使ったチェックが義務化される

 パイオニアとアルコール検知器メーカーの中央自動車工業は6月2日にオンラインセミナーを開催。2022年10月1日から安全運転管理者の専任義務のある事業者は運転の前後に検知器でのアルコールチェックの義務化が行なわれるのにあたり、アルコール検知器の選定方法や運用方法について説明を行なった。

社用車のアルコールチェック義務化は白ナンバーも対象に

 改正道路交通法施行規則の施行によりアルコール検知器による確認の義務化は、これまでの運送業などの緑ナンバーだけでなく白ナンバーの社用車の運転も対象となる。

 対象は「安全運転管理者の専任義務のある事業者」となり、安全運転管理者が必要な条件は、5台以上または、11名以上の定員の自動車を1台以上使用している場合で、二輪車については1台あたり0.5台として計算する。

 変更の内容としては、安全運転管理者の業務が拡充し、アルコールチェックが加わるというものとなり、すでに2022年4月1日からは目視などで確認することが求められているが、10月1日からはアルコール検知器で確認するように変わる。

市販機器はだいたい条件に合致、パイオニアではクラウドで連携機能を提供

 パイオニア モビリティサービスカンパニー ビジネス・マーケティング部 マーケティングチームの大野耕平氏は、神奈川県警のWebサイトの説明を引用。アルコール検知器については「酒気帯びの有無を音、色、数値等に確認できるもの」という条件を満たしていれば特段の性能上の要件は問わないとし、通常市販されているものであればだいたい条件は満たしているとした。

パイオニア株式会社 モビリティサービスカンパニー ビジネス・マーケティング部 マーケティングチームの大野耕平氏

 そして、アルコール検知器は「常時有効に保持」という条件がついており、正常に作動し、故障がない状態で保持が必要で、管理者は定期的に機器を確認することが必要となる。

酒気帯び確認は安全運転管理者でなくても差し支えない
確認は対面が原則だが、困難なら適宜の方法で実施すればいいことになっている
チェックは顔色や声の調子、アルコール検知器の測定結果を確認する

 また、直行・直帰などの業務の場合は、運転者がアルコール検知器を携行し、カメラやモニター越しに運転者の顔色や応答の声の調子とともにアルコール検知器の測定結果を確認することも可能だ。

 パイオニアでは、運行管理・支援サービスの「Vehicle Assist(ビークルアシスト)」を提供しており、大野氏によれば10月1日に向けてアルコール検知器の連携対応などの機能を開発中だと説明。Bluetooth対応の検知器であればスマートフォンに検知データを直接転送できる予定のほか、カメラで数値を読み取るなどの機能も予定しているという。

パイオニアの運行管理・支援サービスである「ビークルアシスト」
総務担当者の業務量は多く、安全運転管理者にはなりにくい
画像解析AIで危険運転を検知

アルコール検知器にも違いがあり、用途によって選ぶ必要あり

 続いて、アルコール検知器「ソシアック」シリーズを手掛ける中央自動車工業 営業開発部ASK認定飲酒運転防止インストラクターの三井剛正氏がアルコール検知器の種類と選び方を説明した。

 まず、アルコール検知器については、アルコール検知器協議会が機器の認定制度を設け、認定品制度を運用していることを紹介。そのうえで、半導体式ガスセンサー、電気化学式センサーの2タイプがあり、それぞれのメリット、デメリットを紹介した。

 電気化学式センサーは価格が高いデメリットがあるものの、誤検知が少ないことや経年劣化が少なく、一般的に精度が高い。半導体式ガスセンサーは低濃度での選択性が高く、価格が安い、応答性が早いなどのメリットがあるが、デメリットとしては使用状況によって環境の影響を受けるなどとした。

 選び方としては、運転者の直行・直帰があるかどうか、出張があるかどうかという運用面の違いが大きなポイントとし、直行・直帰がなければ、事業所に1台だけ装備することもできるが、感染症対策をとるのであれば運転者の数だけ検知器が必要になる。また、記録方式についても、PCにデータを取り込めるタイプのほか、機器に表示があるだけなタイプでは、誰かが紙やPC上のシートに結果を転記する必要があるとした。

アルコール検知器の方式は2つあるが、そのメリットとデメリット
検知器の形状も据え置きタイプとハンディタイプがある

 直行・直帰があるようならば、事業所に1台、直行直帰用に複数台用意する方法や、運転者ひとりひとりにハンディタイプを持たせ、クラウドシステムで管理する方法もあるとした。

アルコール検知器の構成例、これは直行直帰のない場合のもの
直行直帰がある場合は、機器を増やす必要があり、連携クラウドシステムを使う方法もある

 なお、アルコール検知器はさまざまなものが市場に出回っているが、三井氏は粗悪品の見分け方として、アルコール検知器には測定回数と購入からの使用期限を設けているものが多いなかで、その記載の有無や、アフターサービス窓口の連絡先の有無などが見極めの1つとだと説明した。

10月1日までに検知器がそろわなければ、違反の可能性

 10月1日からアルコール検知器を使った確認が義務化されるが、問題もある。中央自動車工業の三井氏は、10月1日に向けたアルコール検知器の納期について「厳しくなってきている」とし、「明確に答えられないが、半導体不足や、需要の急激な増加などがある」とし、予測が難しい状況にあると説明した。

 このまま法律が施行されれば、10月1日の時点でアルコール検知器がない状態で業務としてクルマの運転をすれば法律違反になってしまう。しかし、納期が難しくなってきている現状から何らかの措置がある可能性を示しながらも、現時点で警察庁などから猶予措置などの発表はないとした。

 また、深夜に業務が終了するような場合には、警察庁の通達どおりなら深夜でも携帯電話などで安全運転管理者またはその業務を代行する人が起きていて点呼をしなければならない。三井氏は「パイオニアの『Vehicle Assist』のようにクラウドシステムを使い、アルコールを検知した段階でアラートが出て、安全運転管理者が即時対応をするのならば、飲酒運転の阻止というところでは(対面や携帯電話などで点呼をしなくても)ぎりぎりセーフというのが当社の見解」と述べる一方、法律を逸脱するようなことはおすすめできないとした。