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GTA、東レ・カーボンマジック製シャシー採用のFIA-F4第2世代車両概要発表 SUPER GT最終戦で初公開へ

2022年8月7日 発表

第2世代車両のイメージ

 SUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション(以下GTA)は、SUPER GT 第4戦富士が開催されている富士スピードウェイで8月7日に記者会見を開催し、同社がSUPER GTのサポートレースとして開催している「FIA-F4日本選手権」の2024年以降に導入される第2世代車両の車両とエンジンのサプライヤーを発表した。

 FIA-F4選手権のシャシーサプライヤーに選定されたのは東レ・カーボンマジック、エンジンサプライヤーに選定されたのはトムスの2社で、そのほかにも指定部品としてタイヤは住友ゴム工業(ブランドはダンロップ)、エンジンオイルはペトロプラン(ブランドはペトロナス)などが指定されている。

SUPER GT 第4戦でのFIA-F4日本選手権 第2世代車両に関する記者会見に登壇した関係者

FIA-F4日本選手権、F1ドライバーやGT500チャンピオンなどを輩出している実績ある育成カテゴリー

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 GTAが主催したFIA-F4日本選手権 第2世代車両に関する記者会見では、GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏、第2世代のシャシーサプライヤーに選定された東レ・カーボンマジック 代表取締役社長 奥明栄氏、同じく第2世代のエンジンサプライヤーに選定されたトムス 代表取締役社長 谷本勲氏が登壇したほか、指定部品を供給するサプライヤーとして住友ゴム工業、ペトロプランの2社の関係者も同席して行なわれた。

FIA-F4の概要
指定部品

 GTAの坂東代表はFIA-F4の概要などに関して説明を行なった。坂東氏は「GTAが行なってきた日本でのFIA-F4は2015年から今シーズンで8シーズン目になっている。若手育成ということで行なってきたが、FIAが定めるレギュレーションの変更で、2024年から第2世代の車両となり、昨年からサプライヤーの公募を行なってきた。それが決定したので今回発表する。シャシーは東レ・カーボンマジック、エンジンはトムス、タイヤはダンロップ、エンジンオイルはペトロナスになる」と述べ、FIA-F4日本選手権の車両およびタイヤ、エンジンオイルなどのサプライヤーを発表した。

 FIA-F4選手権は、F1世界選手権、FIA-F2、FIA-F3と階層化されている欧州におけるフォーミュラーカーのシリーズのさらに下に位置づけられるジュニア・シリーズ(若手ドライバー向けのシリーズ)で、フランス、イギリス、イタリア、ドイツなどの欧州の各シリーズの他、米国、メキシコなどの北米でも行なわれており、世界各国それぞれで独自の選手権が行なわれている。FIAでは規則(車両やエンジンの規定、コストの上限など)を定めており、各国シリーズでワンメークとなる車両やエンジンの選定は各国のプロモーターに任されている形になっている。

 現在日本で行なわれているFIA-F4日本選手権は、SUPER GTがプロモーターになって行なわれており、シャシーは童夢、エンジンはトムス、タイヤはダンロップが供給する形で行なわれている。2015年から行なわれているFIA-F4選手権は「若手ドライバーの育成」という観点で言えば大成功を収めている。例えば、日本期待の若手F1ドライバーである角田裕毅選手は2018年のシリーズチャンピオンだし、2020年のSUPER GT王者である牧野任祐選手は2015年のFIA-F4でシリーズランキング2位、2021年のSUPER GT王者である坪井翔選手は2015年のシリーズチャンピオンを獲得しているし、この発表会が行なわれたSUPER GT第4戦富士で初優勝を遂げた宮田莉朋選手は2016年、2017年と2年連続でチャンピオンになっているなど、日本の若手ドライバーの多くがこのシリーズを経由して上位カテゴリーへとステップアップしている。その意味で、FIA-F4日本選手権は大きな成功を収めたということができるだろう。

第2世代の車両は、11月のSUPER GT最終戦でお披露目される見通し

第2世代車両の先進性

 板東代表によれば「初年度から平均30台のエントリーがあり、世界的に見ても最も盛況なFIA-F4選手権と言ってよい。現在は2クラスに分けて開催しているほどで、これだけの台数を集めているのはイタリアの選手権がある程度だ」と述べ、2024年から始まる新しいレギュレーション下においてもGTAがFIA-F4日本選手権にコミットメントを続けて行く姿勢を明確にした。坂東氏によれば、新しいFIA-F4日本選手権向け車両は、モビリティリゾートもてぎで行なわれる予定のSUPER GT 第8戦でお披露目される予定で、1月から受注が開始される予定で、初期ロットはシャシーが35台、トムスの谷本社長によればエンジンは45台が製作される計画になっており、2023年の10月から順次納車される計画になっている。

第2世代車両のスペック
スケジュール

 板東代表によれば、第2世代となるFIA-F4の車両はHaloなどの現在のレーシングカーの安全規定に準拠した仕様となり、エンジンも最高出力が160psから180psへと約20馬力程度出力が向上するという。GTAが発表した資料によれば、シャシーの名称はMCS4/24で、エンジンはTOM’S TMA43となり、排気量は1987ccとなる。

 板東代表は「FIA-F4選手権は若手育成を主目的にしたシリーズだ。カートなどの下位カテゴリーから、より上位のフォーミュラーカーシリーズにステップアップできるようなシリーズであることを続けて行きたい」と述べ、日本のモータースポーツ産業全体に貢献できるようなジュニアフォーミュラーのシリーズとして引き続き盛り上げていきたいと語った。

培ってきたカーボン技術を利用して日本のMS発展に貢献したいと東レ・カーボンマジック 奥社長

左から東レ・カーボンマジック株式会社 代表取締役社長 奥明栄氏、株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏、株式会社トムス 代表取締役社長 谷本勲氏

 記者会見に同席した東レ・カーボンマジックの奥社長は「弊社はSUPER GTのモノコック設計製造などの実績を積み上げてきたことをGTAさまにご評価いただいたのだと考えている。弊社事業のルーツはモータースポーツにあり、モータースポーツに何かしらの貢献をしていきたいと考えたからだ。また技術的な側面を見ると、高度で安全思想が息づいている規定に、弊社のカーボンコンポジット技術が活かせると考えた。そうした中で開発を行なっていくことが、今後の社業に役立つと考えた。皆さまの期待に応えられるようなマシンを開発し、日本のモータースポーツ産業に貢献できるようにしていきたい」と述べ、FIA-F4の開発を行なうことが同社の社業の発展にも資し、さらには日本のモータースポーツ産業の発展にも貢献していきたいと説明した。

 東レ・カーボンマジック社は、現在はカーボンメーカーとして世界トップシェアの東レ傘下の企業。同社はカーボンを利用したさまざまな製品を開発する企業だが、東レに買収される前は日本のレーシングコンストラクターとして知られる童夢社の傘下で、カーボンを利用したさまざまな製品を開発していたという歴史がある。現行規定のFIA-F4日本選手権の車両は童夢が開発したもので、その意味では社名こそ異なっているが、同根の企業にバトンが渡された、そうした形になる。

東レ・カーボンマジック株式会社 代表取締役社長 奥明栄氏

 トムスの谷本社長は「現行規定から引き続いてのエンジン供給になる。現行のノウハウや知見をフル活用していきたい。これだけ多くの参加者が募っているカテゴリーで、参加者の方に安全、安心に競技に参加できるようなエンジンを供給していきたい」と述べ、現行規定から引き続き第2世代にもエンジンを供給することになるので、現行規定でのノウハウなどを引き継いで供給していきたいと述べた。

株式会社トムス 代表取締役社長 谷本勲氏

 谷本社長によれば「難しいのはイコールコンディションを確保すること。先ほどシャシーは35台が初期ロットとして設定されているというお話しがあったが、われわれの初期ロットは45台になる。現行規定では95台のエンジンを出荷させてもらっているが、できるだけ同じロットで製造し、調整することでイコールコンディションを確保しているので、今後需要が増えていけば、次のロットで製造することになり、そこを最初のロットとどう調整していくのかが重要だ」と述べ、ワンメークのシリーズに供給するエンジンだけに、現行規定でも固体による有利不利がないように、全体を見ながら調整していると説明し、新しい第2世代でもそうしたことがないように、イコールコンディションの確保はとても重要だと説明した。

 なお、会見にはダンロップブランドでワンメークタイヤを引き続き供給する住友ゴム工業、エンジンオイルをペトロナスブランドで供給するペトロプランの関係者も同席しており、写真撮影などに参加している。