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マツダ、2023年3月期第1四半期決算発表 営業赤字195億円も為替評価益等で当期純利益150億円に
2022年8月9日 20:03
- 2022年8月9日 開催
マツダは8月9日、2023年3月期第1四半期(2022年4月1日~6月30日)の決算内容を発表した。第1四半期累計の売上高は6172億円(前年同期比1862億円減)、営業利益は195億円の赤字(同456億円減少)、経常利益は207億円(同58億円減)、当期純利益は150億円(同36億円増)となった。連結出荷台数は16万6000台(同9万5000台減)で、グローバル販売台数は23万3000台(同12万台減)。
同日に電話会議で行なわれた説明会では、マツダ 常務執行役員 川村修氏が決算内容について説明。川村氏は財務指標、台数実績について紹介したあと、前年同期から456億円減少して195億円の営業損失になった変動要因について解説した。
「台数・構成」では、出荷台数の減少、構成の変化によって約680億円の減益要因が発生したが、これは前期に生産制約による出荷台数減を受け、米国やオーストラリアといった市場で優先して販売を行なったことから、今期はそれまで十分に商品を届けられなかったユーザーに対する供給バランスを整えるため、グローバルで均等な台数配分とした影響が出たものだと説明。この減益影響を、各市場で進めている単価改善、インセンティブなどの販売費用抑制などで約220億円の改善を実施。結果的に減益幅を463億円に抑えているとした。
コスト関連では半導体、鉄鋼などさまざまな原材料価格、物流費などが高騰したことを受け、300億円規模の減益要因になったが、コスト改善の取り組みによって約100億円をオフセット。「コスト改善」では184億円の減益としている。
増益要因になった「為替」では、米ドルを中心とした各主要市場で大幅な円安が進行したことで179億円の増益、「固定費他」では全領域における固定費抑制、効率化を進めているものの、環境規制関連費用などが増加している影響で12億円の増益としている。
新型車の「CX-60」「CX-50」が販売を牽引
続いてマツダ 取締役 専務執行役員 青山裕大氏が、2023年3月期 第1四半期のハイライトについて説明。
日本と欧州に市場投入する「CX-60」は、7月末時点で日本市場で6400台を受注。これまで「CX-5」などのモデルで築き上げてきたクリーンディーゼルエンジンの評価を礎として、CX-60でもパワフルさと環境性能を両立した3.3リッター 直列6気筒ディーゼルエンジンの搭載モデルが人気を博しているという。CX-5などのマツダ車に加え、上級セグメントからの乗り替えを多く獲得して、CX-5の価格帯とリンクする部分から、より上級価格帯のユーザー層に購入されており、CX-5についても前年以上の販売台数を達成して、国内ビジネスの成長に貢献しているとアピールした。
欧州市場ではCX-60のPHEV(プラグインハイブリッド)モデルのみを受注している状況ながら、先行受注で期待を大きく上まわる1万1600台(7月末時点)を受注。電動化で先行している欧州市場においてマツダ初となる待望のPHEVモデルであり、日本の美意識を反映したデザインやクラフトマンシップ、スポーティなPHEVの味付けに評価が集まっているという。また、CX-5で獲得してきた個人ユーザーメインの販売に加え、CX-60はコーポレートリースといったビジネスユースの面でも評価され、客層の多様化につながっていると述べた。
マツダの主要市場の1つである米国市場では、上海のロックダウンによる影響で5月~6月に在庫が2000台レベルまで減少。第1四半期は対前年比で販売減となったが、その後は供給を再開。7月末には約6900台まで在庫が回復して、8月以降は従来のペースに戻る予定になっているという。販売の勢いは依然旺盛で、第2四半期以降はしっかりと成長軌道に乗せていきたいとの展望を述べた。
また、この状況を受け、販売店では在庫車を並べてそこから選んでもらう従来の販売モデルから、販売会社に届くまでの輸送期間にある車両を販売店に引き当てているスタイルに移行する取り組みを進め、生産した車両をより高回転でまわしていく販売モデルに変わってきていると説明した。
4月に米国での販売がスタートした「CX-50」は、7月末までに7700台を販売。導入前から各販売店で過去最高レベルの商品評価を得ていたCX-50だが、シティユースを前提としたCX-5とはユーザー層が異なり、アウトドア指向の強い、これまでマツダ車を検討していなかったユーザーにも購入されるモデルとなって、販売店でも成長に向けて自信を深めていると紹介。さらにCX-50は残価もトップクラスとなっており、インセンティブの継続的な抑制に寄与。今後のアラバマ工場における生産立ち上げの進展による供給量増大で、米国ビジネスの成長にしっかり貢献するモデルとして育成していくと強調した。
上海ロックダウンによる大幅な出荷減がスロースタートの要因
説明の最後に、マツダ 取締役 専務執行役員 毛籠勝弘氏が第1四半期決算のまとめについてコメント。
「第1四半期は想定どおり、スロースタートとなりました。このたびは生産出荷の大幅な減少によってお客さまへのご納期が長引いております。また、お取引先さまには操業や経営に大きな影響を与えることとなり、大変申し訳ありません。お詫びを申し上げたいと思います」。
「半導体の調達については、代替品切り替えの促進、変更してのデュアルソーシング、汎用品への設計変更なとの取り組みを進めてきました。したがって、現状は他社とそれほど遜色のない調達状況だと考えております。今回は上海のロックダウンによって、半導体を中国でアッセンブリーする部品、その他の一般部品で、広く中国側にある在庫部品を取り出すことができなくなり、物流、操業に対する一過性の大きな影響を受け、大幅な出荷減がスロースタートの直接的な要因となりました」。
「一方で営業オペレーションは引き続き健全に推移しております。質の改善を継続し、台当たりの売り上げ、変動利益も向上しております。新車の評判も高く反発力がある状況ですので、早期に挽回するようアクションをとっているところです。6月末に連結出荷につながらなかった4万台の在庫を含め、6月以降に回復した生産を卸売りにつなげ、お客さまに早期にご納車できるよう、スピード感を持った対応を実施。上半期で営業利益の進捗率40%以上には持っていきたいと思っております」。
「原因となった調達課題に関しては、部品調達のサプライチェーン構造にある課題が露呈したと捉えており、これには反省しております。今回は中国国内の事業所にある在庫に関しては、迅速にわれわれの手元に引き寄せるなどの短期的な対応を実施しました。中長期的な調達構造における課題としては、引き続き設計の汎用化やデュアルソーシングなど、半導体を使った部品のリアロケーション、BCP観点でもサプライチェーンの見直しに取り組んでまいります。半導体の調達環境に関しては、種々取り組んで改善状況にはあるという認識を持っていますが、まだまだ不透明さはしばらく続くと予想しています」。
「また、原油高、原材料高騰基調に加え、金利の上昇も見込まれており、景気の下振れ懸念などが顕在化する可能性がある、あるいは地政学上のリスク要因もあるなど、経営環境としては楽観視する状況にはないという認識を持っております。したがって、原価低減、固定費管理など、われわれがコントロールできるところは、引き続き徹底したグリップを効かせた取り組みによって、全社を挙げて早急な改善に取り組んでまいります」と、決算内容と今後について総括した。