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マツダ、2022年度第3四半期決算は売上高2兆1624億円、営業利益637億円で増収増益 通期営業利益見通しを820億円に上方修正
2022年2月10日 21:05
- 2022年2月10日 開催
マツダは2月10日、2022年3月期 第3四半期(2021年4月1日~12月31日)の決算内容を発表した。
2022年3月期 第3四半期累計の売上高は2兆1624億円(前年同期比2029億円増)、営業利益は637億円(同957億円増)、経常利益は596億円(同908億円増)、当期純利益は294億円(同1076億円増)となった。グローバル販売台数は93万台(増減なし)で、連結出荷台数は68万8000台(同2万3000台増)。
同日に行なわれた説明会では、マツダ 常務執行役員 藤本哲也氏が決算内容について説明。冒頭で新型コロナウイルスの感染再拡大に対応している医療従事者やエッセンシャルワーカーなどの関係者に感謝を述べ、半導体不足などの影響による生産減少で納車が滞っている購入者に対して謝罪。1日も早く商品を届けられるようグループ一丸となって努力していくと意気込みを語った。
グローバル販売台数は、9か月累計では93万台で前年同期と同等のレベルだが、第3四半期には東南アジアで新型コロナウイルスの感染が再拡大した影響で取引先からの部品供給に支障が出たほか、継続的な半導体不足の影響により、3か月で見た場合には23%減になっていると内容を補足。また、この影響で各市場の在庫台数が通常時を大きく下まわっているという。
財務指標では連結出荷台数は前年同期比で3%増ながら、継続的に取り組んできた収益体質の改善効果により、各利益は約1000億円出ているとアピール。同じく第3四半期の3か月は出荷台数が30%減になっているが、営業利益は240億円の黒字になっており、55億円という純利益は、8月~10月に工場の操業縮小に関わる原価性のない固定費として89億円を特別損失として計上したことが影響しているという。
対前年同期比で957億円増となった第3四半期累計の営業利益変動要因では、出荷台数の増加や単価改善、販売費用の抑制など約700億円の「販売の質的改善」が発生した「台数・構成」で822億円、米ドル以外が円安に働いた「為替」で357億円、出費の抑制と効率化を推進した「固定費等」で288億円の増益効果が発生。一方、原材料価格や半導体のコスト増による約600億円の減益をコスト改善の効果で394億円の減益に止めている。
2022年3月期の通期見通しについては、グローバル販売台数で減産の影響、中国市場での販売減少といった影響を反映して上期決算発表時に公表した131万1000台から7万1000台減の124万台へと下方修正。財務指標でも連結出荷台数を同5万台減の98万台として売上高も同1000億円減としたが、第3四半期までに進めてきた収益改善、特別損失の89億円を反映し、営業利益を同170億円増の820億円、当期純利益を同140億円増の550億円に上方修正している。
また、コロナ禍や半導体不足の影響を受ける前の2020年3月期との比較では、生産台数の減少や原材料高といった外部環境の大きな悪化の影響を、販売の質的改善やコスト改善、固定費の効率化といった収益基盤の変革で上まわり、厳しい経営環境下でも着実に利益を確保できる損益分岐点台数の引き下げが進捗していると藤本氏は解説。「この取り組みを今後も手を緩めることなく継続し、さらに2022年は新製品の導入、台数成長によって中期経営計画で掲げている本格的成長を実現してまいります」と意気込みを示した。
「CX-50」「CX-60」などの投入で「本格的成長のステージ」に移行
また、マツダ 取締役 専務執行役員 青山裕大氏から決算総括が示され、通期営業利益の見通しを820億円に上方修正し、売上高営業利益率2.6%を変更。収益体質を強化して健全な財務基盤を維持しているとアピールした。
販売領域ではインセンティブの抑制、残価改善による販売促進費の効率化、在庫の圧縮などを推し進めており、コスト改善と固定費の領域でも低減機会を追求し、継続的な損益分岐点台数の低減を実現していることを理由として挙げている。
サプライチェーンの混乱は依然として続いているものの、生産・販売・在庫・物流といった領域が一体となって週次モニターを続け、在庫を最大限に活用して1台でも多くのクルマを購入者に届ける努力を続けていくとした。
販売領域の質的な改善として取り組んでいる「変動販促費」については、「継続的な残価改善」「ネットワークの改変」「ディーラー境域の徹底」「リーンな在庫マネジメント」といった取り組みが継続的なインセンティブ改善につながっており、多くの市場で改善傾向が進んでいるという。
また、「台あたり売上高」では中間商品対策やモデルイヤーなどの機会で上級ミックスへのシフト、価格向上を実施。段階的な引き上げによって多くの市場で売上高改善を実現していると述べた。
2021年まではビジネスの質における経営基盤確立を続けてきたが、2022年は作り上げてきた基盤の上で新製品導入を実施。第1弾となる北米向けクロスオーバーSUV「CX-50」はすでに米国・ハンツビルの新工場で生産を開始。今期内にはラージ商品群の第1弾である「CX-60」の生産も防府工場でスタートするなど、継続的な販売の質的改善と合わせ、新たなクロスオーバーSUV商品群の拡充により、中期経営計画の実現を加速して「本格的成長のステージ」に移行していくと青山氏は語った。
質疑応答
後半に行なわれた質疑応答では、今回の決算内容の受け止めについて、マツダ 取締役 専務執行役員 毛籠勝弘氏が回答。「半導体受給のひっ迫やコロナ感染症による供給制約、原材料価格の高騰といった厳しい経営環境でありました。それらのマイナス要因を跳ね返して前年同期からの増収増益となり、当期純利益を約1000億円改善したことは、オペレーションの質改善の進捗を示すものだと思います。全社、全領域の従業員、お取り引き先さまの皆さん、全世界の販売店の皆さんの大変なご苦労、ご努力の結果だと受け止め、感謝したいと思います」。
「また、通年の収益見通しも上方修正させていただきましたが、“稼ぐ力の強化”や損益分岐点台数の低下など、経営基盤の強化が着実に進んでいるというと評価しております。しかし、営業利益率、額ともに十分とは言えず、経営環境はまだまだ不透明です。コロナ禍での学びを継続して生かし、加速し始めた構造改革の手を緩めず、スピード感を持ってさらに前進する決意を新たにする決算だと受け止めております」と語った。
北米市場における在庫状況とインセンティブの今後についての質問には青山氏が答え、「在庫状況は非常にリーンになっております。12月、1月ともに約10日間の在庫量を確保している状態で、これは最低限の在庫量です。ただし、在庫の回転率については、コロナ禍前はおよそ30%~40%ぐらいのところでしたが、現在は70%を維持しております。これは実際にクルマが売れたディーラーに在庫を充てていくということと、実際に流通の高い在庫や機種に絞ってディーラーに届けるといった施策を用いているからです。より売れる商品を売れるタイミングで、売れるべきディーラーにお届けする施策により、極小となっている在庫で販売台数を維持するオペレーションを北米で実施しております」。
「市場のリカバリーに応じて販売台数が戻ってくればインセンティブの競争が激しくなっていく。とくに北米やカナダでは金利の上昇局面にあり、さまざまな条件からインセンティブの上昇圧力は厳しくなると考えます。私どもも競争の状況をしっかりと勘案しながら適切なインセンティブというものを決定していきます。現在のコロナ禍は1つのリスクではありますが、この特殊な状況を使っていろいろと挑戦をする機会になりました。期初からの相対的なインセンティブの推移を見ていくと、競合でも一番ベストなインセンティブの状況まで推移してきたということで、相対的な状況をこれからも維持していく。とくにこれからは新商品が出てきますので、そういった競争力もしっかりと認識することで、対競合で有利なインセンティブの状況を維持して、相対的にインセンティブの上昇を抑えつつ、われわれのパフォーマンスを上げていく。今年はとくにそういった課題に挑戦する1年にしたいと考えています」と述べた。
また、先日ティザー情報が公開された「CX-60」についての反応については、青山氏が「3月のはじめに正式な欧州プレミアを行ないますが、すでに昨年10月にはCX-60をはじめラージ商品群の全体像もお伝えしております。お客さまからも非常に高い期待値をいただいており、販売店の皆さまからも2020年に導入した『MX-30』に続く待望のマルチソリューション、電動化したプラグインハイブリッドとして欧州では計画されており、本格的な電動化推進の初年度になることに高い期待をいただき、現地の販売店やお客さま、ステークホルダーの皆さまなどすべての人がこの商品を待っていると思います。今期中の量産開始になりますが、1日も早くこの期待値の高い商品をお客さま、販売店の皆さまにお届けしたいと考えております」と説明している。