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マツダ、2022年3月期 第2四半期決算はグローバル販売14%増の66万台で営業利益397億円 アップデートした中期経営計画を来春までに公表
2021年11月11日 10:07
- 2021年11月10日 開催
マツダは11月10日、2022年3月期 第2四半期(2021年4月1日~9月30日)の決算を発表。決算内容について解説し、合わせて中期経営計画の進捗状況を説明するオンライン説明会を開催した。
2021年3月期第2四半期累計の売上高は1兆4959億円(前年同期比3801億円増)、営業利益は397億円(同926億円増)、経常利益は339億円(同872億円増)、純利益は239億円(同1169億円増)となった。グローバル販売台数は66万台(同14%増)で、連結出荷台数は48万1000台(同31%増)。
決算内容についてはマツダ 常務執行役員 藤本哲也氏が解説を担当。なお、今回の決算説明では通常の対前年同期比に加え、コロナ禍や半導体の供給不足などが発生する以前の2020年3月期同期の数値も紹介している。
グローバル販売台数ではコロナ禍の継続による取引先工場のロックダウン、半導体のひっ迫による部品供給不足などの影響を受けて想定以上の減産が発生。2020年3月期同期から7万台減の66万台となった。米国やオーストラリアといった販売が好調に推移している市場に対する供給を優先し、グローバル在庫を最大活用して販売収益の最大化を図ったとのこと。
財務指標では減産の影響で2020年3月期同期比の出荷台数が14万1000台減少。これを受けて売上高も同2107億円減となったが、販売費用の抑制などによって減少幅を抑え、変動利益の改善、固定費効率化の取り組みなどを進めた結果、営業利益は同139億円、当期純利益は73億円増と、コロナ禍前と比較しても増益を果たした。
営業利益の変動要因も対前年同期、対2020年3月期同期でそれぞれ解説。926億円増となった対前年同期の営業利益は、出荷台数の11万2000台増に加え、販売費用の抑制、SUVミックス、国・グレードミックスなどによる単価改善などの効果で約500億円の「販売の質的改善」を生み出し、これらによる「台数・構成」で1078億円の増益要因となった。このほかに為替の変動、固定費などの抑制が増減要因となり、原材料価格や半導体コストの高騰で発生した400億円の減益を、コスト改善で一部相殺して239億円の減益に抑制している。
139億円増となった対2020年3月期同期の営業利益の変動要因は、出荷台数の減少や原材料価格、半導体コストの増加といった外部環境の悪化で1136億円の減益要因が発生したが、販売の質的改善、変動コストの改善、固定費の効率化などの集積基盤を強化する取り組みで1067億円の増益要因を生み出し、これに為替の効果で増益となっている。
上期の結果を受けて期初に公表していた通期見通しの一部を修正。減産の影響でグローバル販売台数を9万8000台減の131万1000台、連結出荷台数を10万5000台減の103万台に下方修正し、これに応じて売上高も2000億円減の3兆2000億円とした。一方で変動利益の改善、固定費の効率化といった取り組みを引く続き強化することにより、営業利益は増減なしで650億円、経常利益は60億円増の610億円、当期純利益60億円増の410億円に上方修正している。
防府工場のリニューアルなどで設備投資を10分の1、設備導入の工期を5分の1に抑制
決算内容の説明に続き、マツダ 代表取締役 社長兼CEO 丸本明氏から2019年11月に発表し、市場環境の大きな変化を受けて2020年11月に見直しを行なって進めている中期経営計画の進捗状況についての説明が行なわれた。
この説明に先立ち、丸本氏は今期の振り返りと通期見通しについてコメント。上期は半導体を中心とした部品調達の問題によって想定を大きく上まわる減産となり、期初見通しから出荷台数が10万台減で17万台減となる見通し。これについては「世界中で多くのお客さまに納車をお待ちいただいており、大変申し訳なく思います。1日でも早くお届けできるようあらゆる手段を講じながら対応してまいります。1台1台に心を込めて生産する大切さ、お客さま1人ひとりに真心を込めて新しいクルマをお渡しする重要性を改めて認識する半年でした。この思いを決して忘れることなく経営に生かしていきたいと考えています」とふり返った。
そのような状況下でも構造改革の加速と日々の積み重ねをグローバルで展開することにより、期初の利益見通しを達成できる見通しとなっているのは、収益基盤強化の大きな進展だと評価した。下期にどれだけ部品調達できるかの見通しは依然として不透明であり、マツダでは生産台数を前年同等レベルに設定。アグレッシブなリカバリーを利益見通しには加味せず、一部をリスクとして織り込みながら経営に取り組んでいるとした。この11月からは前年並みの生産水準に操業度を上げていく計画だが、第2四半期の減産を取り戻すまでの見通しは現時点で立っておらず、その点をリスクとして考えているという。
マツダが2025年3月期までの5か年計画で進めている中期経営計画は多岐にわたり、中でも5点を重点領域として注力しているが、今回はこのうちで「ブランド価値向上への投資」となる「モノ造り領域」と「顧客体験」からぞれぞれ2点について取り上げられた。
「モノ造り領域」では、6月17日にすでに発表している技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」に基づいて開発を実施。ここでは具体的な開発ロードマップに加え、マツダの基本的な考え方となる2つの点が重要だと丸本氏は語った。
1点目は時間軸を置いて技術資産を着実に積み上げ、積み上げた資産で投資を回収して次の技術資産を積み上げていく「ビルディングブロック構想」の取り組みで、すでに10年以上に渡って計画的に進めているという。
2点目は、この取り組みにおいて現時点で最適な技術資産は、内燃機関からBEV(電気自動車)までを搭載する「マルチソリューションアーキテクチャー」であり、次なる技術資産となる「EV専用アーキテクチャー」に対する投資もすでに開始しているとした。
山口県防府市にある防府 第2工場のリニューアルも行なわれ、マルチソリューションを実現するイネーブラーが15年にわたって続けているモノ造り革新の真価であるとした。リニューアルでは従来から得意としてきたフレキシブル生産の能力を高め、汎用設備である「根の生えない設備」の多用で内燃機関からBEVまでフレキシブルに、低投資で生産する取り組みを加速させている。また、生産プロセス資産である「デジタルツイン」を駆使し、クルマや設備がない段階から設備検証を可能とした。これらにより、設備投資額は従来の10分の1に、設備導入に必要な工期を5分の1に抑制している。
開発領域でも大きな進化を遂げており、MBD(モデルベース開発)の適用範囲拡大して車両レベルでのMBDを目指し、AIの活用、開発プロセスの無駄を排除するプロセス資産を積み上げて開発の投資効率を大幅に向上させている。こうした技術資産、プロセス資産の積み重ねによってマルチソリューションアーキテクチャーが高効率、低投資で実現できているが、その前提として「開発や生産に携わるエンジニアが続ける飽くなき挑戦とたゆまぬ努力の積み重ねが最大の資産として存在することは言うまでもない」と丸本氏は強調した。
商品ではこれからの2年間で市場投入するSUV系ラインアップについても発表され、同時にグローバルの従業員や販売店に向けたビデオメッセージを配信。ラインアップについて明らかにすることで予測記事が飛び交うことで起きる不安を抑制し、希望を持って本格的な成長を目指す来期以降の取り組みに拍車を掛けることが目的だと丸本氏は説明。このような時期だからこそ、従業員との密なコミュニケーションを取ることが自身にとって最も大切にしているテーマの1つだと語り、「なぜマルチソリューションが最適なのか」「なぜマツダがマルチソリューションを実現できるのか」といったモノ造り革新の真価を正しく理解してもらい、マルチソリューションアーキテクチャーが2030年以降になっても利益の源泉として貢献することにも理解を置いてもらうことも目的としていたと述べた。
マツダではこれからの2年間で5車種のSUVを導入し、ラージSUVの4モデルについてはモノ造り革新の真価で投資効果を大きく効率化しており、従来の「CX-5」「CX-8」「CX-9」などに行なった投資と比較して、「FRアーキテクチャー」「直列6気筒ガソリン/ディーゼルエンジン」「PHEV(プラグインハイブリッド)」「48Vマイルドハイブリッド」など開発要素は大きく増えているが、開発工数は25%、設備投資における専用投資は40%効率化されているという。また、ここで開発した技術資産でEV専用アーキテクチャーのさらなる効率化を追求していく。
商品展開では、マツダは電動化に対する規制の実施期からグローバル市場を6グループに分け、マルチソリューションアーキテクチャーとEV専用アーキテクチャーの混在度合いに時間軸を置いて推定しているが、2030年時点でもマルチソリューションアーキテクチャーがマツダの販売や収益で多く部分を占めているとの考えを示した。
「顧客体験」の進捗では米国と中国の取り組みについて説明。米国では2016年からブランド価値経営を浸透させることから着手。販売の成長には「インセンティブと巨額の固定販売促進費、多くの在庫車が必要」との考えを根本から改めるため、膨大な努力と時間を費やしてきたと丸本氏は語り、これと並行して商圏の適正化を実施。マツダのブランド価値経営に賛同してくれるディーラーに、次世代店舗や従業員トレーニングに対して投資してもらったという。この活動に成果として、次世代店舗は9月時点で208店舗となり、今後の改装を予定する130店舗と合わせて来期中に当初目標の300店舗以上が次世代店舗にリニューアルする予定となっている。
トヨタとの協業でスタートさせた販売金融はフレキシブルでスピーディだと評価。ディーラーの販売支援も伴って、2020年4月というコロナ禍での営業開始ながらディーラーから絶大な信頼を得ているという。マーケティング活動も従来のマスメディア重視から社会貢献支援型にシフトさせ、ディーラーで行なうマーケティングは地域に密着する社会貢献支援型に変容している。これらの活動がシェア拡大に貢献しており、減産の影響で販売の対前年増の記録は9月で途切れたが、来期以降に米国で操業を開始する新工場で生産する「CX-50」やラージSUVの導入によって大きな躍進を期待していると述べた。
中国では2005年に中国第一汽車と設立した合弁会社の「一汽マツダ」、2007年に長安汽車、フォードとの合弁事業として「長安マツダ」を設立して合弁2社体制で活動してきた。この2パートナー戦略は中国進出の初期にさまざまな知見の吸収、経営の安定化などの面で有効だったが、企業規模から見て販売チャネル別に派生車種を展開させることは投資効率の面で難しくなったことで、分散から集中への見直しとして3社で協議を実施。8月に合弁企業を統合して3社共同出資による新たな長安マツダが誕生することが発表された。この再編によってビジネス構造と運営体制の最適化を図り、顧客体験の強化と将来の成長に向けた基盤が整ったとしている、
最後に丸本氏は、新たな領域に対する投資や協業の強化などは限られた時間で説明することが難しく、これらを最新化した中期経営計画のアップデートを、遅くとも来春までに公表すると述べた。
質疑応答
中期経営計画の進捗説明後に行なわれた質疑応答では、北米向けのSUVであるCX-50について質問され、丸本氏が回答。「SUV商品強化の公表でも触れているように、CX-5を継続しながら北米ではCX-50を導入し、その上にCX-70とCX-90を導入して、現行のCX-30を加えてSUV商品を強化充実させていく目的で発売します。収益貢献について具体的な数字は申し上げられませんが、北米で約50万台ほど販売している中で新たに15万台を売る計画ですので、その中の位置付けをご想像いただけるかと思います」。
「北米専用ということで、CX-5などこれまでの商品はグローバルに適用させるモデルとして導入してきました。CX-50は北米向けとして、ユニークなデザインコンセプトとか多様性に富むカーゴルームなど、北米のお客さまのご要望を重視して開発した商品です。かなり大きな期待をしているとご理解ください。詳細については現地時間の11月15日にアメリカから発表しますので、ぜひ見ていただければと思います」とコメント。11月15日(現地時間)にアメリカでCX-50を発表すると明らかにした。
今後は世界的にもBEVシフトしていくトレンドがあり、マツダでも注力している部分だが、これを受けて国内産業の雇用などはどうなるのか、また政府に対して雇用に関する支援策を求めるかという質問には、丸本氏が「BEVの比率が増加することを想定してどのような影響が出るか、また、雇用に対してどのような影響が出て、それに対して業態の変更などをする必要があるのかなどのところの検討を始めたところです。社内での検討が終わり次第、近い将来に地元のお取引先の皆さんとも協議を進めたいと考えていますので、今しばらく時間をいただければと思います」。
「それに係わる領域について、やはり業態の変更が必要になるかと思います。そういったところに対して政府からの支援を期待したいと思いますし、まとめ次第、われわれとしても要請していきたいと考えています」と回答した。
減産の影響は半導体不足以外でもアジアのロックダウンや中国の電力不足などでも影響すると思うが、外部環境の不安要素でマツダにとって一番大きいのはどの要素かという質問に対しては、「さまざまなリスクがございまして、考えていると切りがなくなるぐらいですが、われわれとして一番大きなリスクとして捉えているのは半導体の供給問題です。半導体の供給問題がいつ終わるのか、今後どうしていくのかという質問をよくいただくのですが、マーケット全体で需要がひっ迫していますので、当面は不安定でしょうねと考えています。いつ解消されるのかという具体的な時期はなかなか見通しにくいなと思っていて、そういった中で開発と調達でできる限りの対応を行なっていきますが、最も重要なことはこれまで同様、リスクを想定した経営を行なって、危機レベルに応じた対応を迅速に決定、実行すること。加えて正しい情報を関連部門、各市場と共有して『覚悟を持ったオペレーションを行なうこと』かなと思います」。
「今月からは日本とメキシコの工場で残業も始まって、8~10月と比べれば改善はしています。ただ、上期の減産を下期で取り返すところまでの見通しは立っていませんので、リスクを引き当てている状況だとご理解ください」と述べた。
原材料価格の高騰が営業利益に対して与える影響が下期はどうなると試算しているかについては藤本氏が対応し、「原材料価格と半導体のコスト増を含めた金額になりますが、上期の対前年度で400億円レベルの悪化があり、通期では900億円レベルの悪化になる想定です。従いまして、下期では約500億円レベルの影響が出ることは回避できないということです。その中で、貴金属についてはロジウムの価格も落ち着いてきています。逆に鋼板や鋼材、あるいはアルミや銅、樹脂類といったあたりの影響が大きいということです」と説明した。
これに関連して、世界的なインフレ基調によって一部で車両価格の引き上げも行なわれているが、これについてどのように対応するかという質問も投げかけられ、この質問にはマツダ 取締役 専務執行役員 青山裕大氏が回答。「需要などがひっ迫して原材料価格や鋼板、鋼材の価格が上がっている中で、やはり1台あたりの収益を高めていくころにフォーカスして取り組んでおります。車両価格については、今年の後半から新しい商品対策を施したマイナーチェンジ車種が出てきますので、そういった機会を捉えて価格をアップしたり、あるいはより収益の高い国、収益の高い車両、収益の高い機種にフォーカスするといったこと、さらにインセンティブを抑制するといった国ごとの特徴を把握して最適な取り組みを行なって、1台あたりの収益をできる限り改善していく取り組みをグローバルで展開しています」と答えている。