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マツダが最新安全技術「マツダ・コ・パイロット・コンセプト」を解説、2022年投入のラージ商品群から搭載

2021年11月4日 発表

マツダ株式会社 商品戦略本部 主査 栃岡孝宏氏

「走る歓び」を損なわない安心安全な独自システムを構築

 マツダは、現在開発中の次世代安全技術のコンセプト「マツダ・コ・パイロット・コンセプト(MAMZDA Co-Pilot Concept)」について、報道陣向けにオンライン説明会を実施した。また、この安全機能は2022年に市場投入する予定の「ラージ商品群」から搭載する予定であることも明らかにした。

 まず商品戦略本部 主査の栃岡孝宏氏は「マツダのブランドの核となるのは『走る歓び』であり、クルマを運転することで、すべてのドライバーが毎日をイキイキと過ごしてもらいたいとの想いから、クルマ造りのあらゆる領域で人間の能力を最大限に引き出すという、人間中心の考え方に基づいた活動をしている」と企業としての考え方を紹介。また、安心安全なクルマ社会の実現は自動車メーカーにとって欠かすことのできない社会的責務であるとし、ドライバーが安全運転をできる状態を最大限確保して、事故リスクの発生自体を抑制するマツダの安全思想「マツダ プロアクティブ セーフティ(Mazda Proactive Safety)」に沿って技術を開発してきたという。

 このマツダ プロアクティブ セーフティについて栃岡氏は「段階的に進化を遂げている」と言い、第1段階の「基本安全技術」では、正しいドライビングポジションと視界視認性の確保により、疲れにくく、運転に集中できる環境作りと、万が一の衝突時に備える衝突安全性能の強化と緊急通報を自動で行なうシステムの採用を進めたという。

マツダ プロアクティブ セーフティの考え方
i-ACTIVSENSE
i-ACTIVSENSEのALH

 そして第2段階の「先進安全技術」では、ドライバーの認知や判断をサポートする技術となる「アイアクティブセンス(i-ACTIVSENSE)」などがあり、事故につながるリスクが発生した場合、それをいち早く察知してドライバーに注意喚起を行なうほか、眠気を検知して休憩を促すシステムなどを開発・採用。これらの技術は「ブロックのように積み重ねながら進化させてきた」と栃岡氏は言い、世界各国の安全性能評価で最高ランクを獲得していると紹介。デザインや走りだけでなく、安全性能に関してもしっかりと進化させてきたとアピールした。

第1段階の1つは「疲れにくく、運転に集中できる環境作り」
第1段階のもう1つは「衝突安全技術の強化、緊急通報システム」
第2段階では「i-ACTIVSENSEによるリスク感知、ドライバーへの注意喚起」を追加

 2014年以降、保有台数1万台あたりの死亡重症者数は減り続けているが、交通事故総合分析センターの調べでは、発作や急病に起因する交通事故件数は2014年以降増えているというデータがある。そこでマツダは、さらに事故を減らすためにはドライバーの体調急変や眠気に対応する技術が必要であると判断したという。また、体調変化による事故は60km/h以下で起きることが多いというデータもあり、「自動運転技術は高速道路だけではなく、一般道でも使えることが重要である」と栃岡氏は説く。そして、これは高齢化社会を迎えている先進国すべてに該当する社会課題の1つでもあるとしている。

 その課題解決に向けた技術の1つとして「いつもそばで見守ってくれる、頼れるあなたのパートナーのような存在」をコンセプトにマツダ・コ・パイロット・コンセプトを開発。コ・パイロットは飛行機の副操縦士を意味し、常に隣で見守ることによりドライバーから走る歓びを奪うことなく安心と安全を目指すという。

 具体的には、体調の急変や居眠りを検知した際はアラームで警告、それでもドライバーからの反応がない場合はクルマを停止させて安全を確保してくれる機能。栃岡氏は「もう1人の優れたドライバーが、いつも隣で寄り添ってくれていることで、常に自信と安心を持って運転できるようになる」と解説する。

常に隣で見守ってくれる存在のコ・パイロットをイメージした機能となっている

 マツダでは、安全技術においてもブランドの核となる走る歓びに貢献できるシステムを目指し、完全に人間から変わって運転するのではなく、あくまで人間の運転をサポートするスタンスを維持するという「人間中心の開発哲学」に基づき開発を行なってきている。栃岡氏はこの技術のポイントを「安全に運転が楽しめることにある」と説明し、基本的な運転能力を有していることが前提となるが、ドライバーを選ばない点、特別な操作も不要である点、インフラの整備されていない一般道でもしっかりと作動する点の3つのメリットを挙げている。

 実際の運用では、通常走行時はドライバーをモニタリングしバックアップとして機能、眠気に襲われたり意識を失うといったドライバーの体調異変を検知したらアラームで警告と注意喚起を行なう。ドライバーが運転できないと判断したら、代わりに運転操作を行ない、安全に停車させ、必要があれば緊急通報も行なってくれる。このシステムには「ドライバーの状態を検知する技術」「コ・パイロットHMI仮想運転技術」「ドライバーの異常時に退避・停止させる技術」の3つのコア技術が使われていると栃岡氏は言い、ドライバーの姿勢の崩れや視線や頭部の挙動、ハンドルやペダル操作をセンシングして総合的に判断するという。

マツダでは安全技術をブロックのように積み重ねながら進化させている
通常の運転状態ではドライバーをモニタリング
ドライバーに異変を感じたらまずは警告からスタート
ドライバーの反応がない場合は運転を交代して車両を停止させる
MAZDA CO PILOT2 0(一般道シーン、1分41秒)

 また、マツダ・コ・パイロット・コンセプトは「運転への不安を抱えたドライバーだけでなく、家族や周囲の人の心配をなくすことによって、より多くの人に走る歓びを感じてもらえると信じている」と栃岡氏は説明しつつ、2022年にマツダ・コ・パイロット・コンセプト1.0を導入予定であると紹介。1.0ではドライバーの異常を検知した場合、ハザードランプとホーンを作動させて周囲に異変を知らせながら車両を停止。高速道路では車線維持または路肩への退避も行なうという。そして2025年以降は、体調不良などさまざまな変化を事前に検知できる技術と、より精度の高い退避技術へと進化させた2.0バージョンの完成を目指すという。

 最後に栃岡氏は「運転を辞めてしまうと介護が必要になるリスクが2倍になるというデータもあり、運転が心と体の健康維持につながる可能性がある」と紹介。さらに、「過疎化による交通サービスの空白化など、移動手段の不足も社会課題であり、マツダ・コ・パイロット・コンセプトにより、安心していつまでも運転できる楽しさを支えることに貢献したい」と結んだ。

マツダ・コ・パイロット・コンセプトのロードマップ

マツダの“人間中心の自動運転コンセプト”「コ・パイロット・コンセプト」とは何か 進化版2.0を体験してきた

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1363531.html

コ・パイロット・コンセプト1.0は2022年のラージ商品群から搭載する

 質疑応答にて、栃岡氏は「マツダ・コ・パイロット・コンセプト1.0に使われているセンサー類については、従来のセンサーを進化させたもので実現させる」と解説。姿勢崩れや頭の傾きの検知などドライバーの状態を検知するのは、現在市場に出ているセンサーとハードを使用して、マツダ独自のアルゴリズムで進化させて対応させているという。また、アクセルやステアリング、車両のふらつきなどは、「車両のCAN情報を分析することによって判定している」と解説した。周囲を探知するシステムは、既存のカメラ、レーダー、ソナーを最大限に活用し、その組み合わせを駆使して実現している。

 また、2.0への進化に必要な要素については、できるだけ早くドライバーの異常を察知できる「異常予兆検知」まで進化させようと開発を進めていると明かし、人を見るための基本的なセンサーデバイスは今と同じものを使用し、そこにマツダ独自のアルゴリズムでドライバーの予兆を見るようにするという。そこでは、医学や脳科学の研究の成果を適用し、「ドライバーが異常になった場合、さまざまな難易性疾患によって生じる症状などをベースデータに持ち、そのベースモデルからの逸脱量から判定できるようなシステムを構築する予定だ」と栃岡氏は語った。

開発中のコ・パイロット・コンセプト2.0を搭載するMAZDA3

 人間は飛び出しや光るものに対する無意識の反応と、常に安全を確保しておこうと視線を配るといった意識的な視線があり、その両方がバランスを取った状態で正常に運転できているが、脳の機能低下などで異常が生じると意識的な行動が不可能になり、無意識な行動に偏ることになる。こういった正常からの逸脱した異常な状態を素早く検知できることを目指しているという。道路状況や周囲の検知と確認については、既存センサーの仕様に加えて360°確実に見るためのカメラの追加、高精度地図、自車位置を判断するためのロケーターECUを追加し、マツダ独自のアルゴリズムで働かせていると説明した。ただし、これらが2.0に必ずしも必要であるとは考えてないとのことで、進化の過程でさまざまな可能性があることも示唆した。重要なことは多くのユーザーに使える価格帯で完成させることで、そのためにいろいろな選択肢を確認しているという。

 また、マツダ・コ・パイロット・コンセプトは日本以外での適用も考えているのかと問われた栃岡氏は、「国際法規としてドライバー異常時対応システムに類する法規が定まろうとしてる」と説明しつつ、すでに国内基準と国際基準との差分も把握していて、海外へ導入する際は現地の基準に合わせていく準備もしていると解説した。さらに、アメリカに関しては、道路交通環境や法規などさらなる調査が必要であるとの認識を示した。加えて、アメリカである一定時間ドライバーの反応がない場合に車両を停止させるシステムが存在していることも認知していると語った。

 その他に、ドライバーの反応がない状況をステアリング操作も判定の一部に含まれている点について、自動運転レベル2やレベル3でハンズオフが可能としている中、マツダとしてはハンズオンが前提と考えているのかと問われると、「ドライバーがステアリングを握っているのを前提にして開発している」と栃岡氏は明言。さらに「マツダとしては現状、ハンズオフといった製品も予定していない」とメーカーとしての方向性も述べた。

 このマツダ・コ・パイロット・コンセプトが2022年から採用されると示されていることについて、既存モデルへの搭載なのか、今後投入される新型モデルからの搭載なのかを問われると、常務執行役員 R&D管理・商品戦略・技術研究所・カーボンニュートラル担当の小島岳二氏は、「2022年に導入するラージ商品群から展開する」と名言。詳細については適切な時期に公表するとした。また、標準装備になるのかオプション設定になるのかという質問については「現在検討中だが多くの人に利用できるように量産したい」と回答した。

 その他に、搭載されるカメラやセンサー類の個数について問われると、栃岡氏は「2022年に導入予定の車両は決まっているものの、公表は控えさせていただく」とした。また、既存モデルとの適合(レトロフィット)については、新たなアーキテクチャを採用するため、最大限努力するが詳細は適切なタイミングに公表するとした。

質疑に対応したマツダ株式会社 常務執行役員 R&D管理・商品戦略・技術研究所・カーボンニュートラル担当 小島岳二氏(左)マツダ株式会社 商品戦略本部 主査 栃岡孝宏氏(右)