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トヨタ、今週末のWRCで水素GRヤリスをデモランするほか水素燃料電池車「MIRAI」の電気でサービスを運営

富士24時間レース時に公開された水素GRヤリス

チャンピオン決定も期待できる第9戦「イープル・ラリー・ベルギー」

 WRC(FIA世界ラリー選手権)に参戦中のTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(チームオーナー:豊田章男氏、チーム代表:ヤリ-マティ・ラトバラ氏)は、8月19日~21日に行なわれる第9戦「イープル・ラリー・ベルギー」のプレビューを発表した。

 ベルギーの舗装路で行なわれるターマックラリーに、トヨタは33号車 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組、69号車 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組、4号車 エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム組の3台のGR YARIS Rally1 HYBRIDで参戦する。

 前戦ラリー・フィンランドで総合2位を獲得し、ポイントランキングトップを走る69号車 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組は、このイープル・ラリー・ベルギーで優勝した場合、チャンピオンを獲得する可能性があり、トヨタにとっても重要な1戦となる。

 また、サファリラリーで表彰台を獲得し、前戦ラリー・フィンランドで総合6位を獲得し、ドライバーズランキング5位に位置する日本人WRCドライバーの勝田貴元選手は、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team Next GenerationからGR YARIS Rally1 HYBRIDで参戦。フォーミュラドライバー出身でもあるだけに、ターマックラリーでの好成績に期待がかかる。

WRCに参戦中のハイブリッド車「GR YARIS Rally1 HYBRID」

水素GRヤリスをWRCでデモラン

水素GRヤリスに搭載される水素燃焼エンジン。水素を燃料として使用する内燃機関で、主にインジェクターの変更で水素を燃焼させている。出力はすでにガソリンのGRヤリスを超えている

 WRCシリーズ戦の1戦としても見所の多いこのラリーだが、トヨタはこのラリーに水素燃焼エンジンを搭載する「GR YARIS H2」(以下、水素GRヤリス)を持ち込む。水素GRヤリスはスーパー耐久などで活躍する水素カローラの試験車両となったクルマで、水素GRヤリスで水素燃焼エンジンの先行開発を行ない、水素タンクなどを増量して水素カローラとしてレース投入を行なっていた。

 この水素GRヤリスはヨーロッパでの発表も行なわれており、今回実車の走行もイープル・ラリー・ベルギーで初披露する。ステアリングを握るのは、かつてトヨタのWRCチームで戦ったユハ・カンクネン氏で、いよいよトヨタの水素燃焼エンジン技術がヨーロッパでデビューする。国内ではモリゾウ選手のドライブなどにより当たり前の風景になりつつあるレーシングシーンでの水素燃焼エンジンだが、世界的に見ればとんでもなく最先端の技術。それゆえに海外では同じ水素を使う燃料電池車と勘違いされている報道もあるなど、海外へのアピールが待ち望まれていた。200kW以上のパワーを絞り出し、音も煙(といっても水蒸気)も出す水素燃焼エンジンがWRCのコースを駆け抜けることになる。予定されているのは、競技開始前にテストカーとして毎日1本のステージ走行だが、日本のカーボンニュートラルカーがヨーロッパで大きな話題となることを期待したい。

 トヨタはさらに燃料を同じくする、水素燃料電池車「MIRAI(ミライ)」もWRCへ持ち込む。こちらは、富士24時間レースでも見かけられた発電機(V2H)としての利用で、チームのサービスエリアでミライの電気を使用して、カーボンニュートラルへ向けたチーム運営をデモしていく。

 水素燃焼エンジン車である水素GRヤリスと、FCEVであるミライをWRCという世界的な舞台に持ち込むことで、同じ水素燃料を使う内燃機関と燃料電池のクルマの違いを理解してもらう趣旨だと思われる。