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トヨタ 長田准CCO、ロシア現地生産終了について「現地の従業員のみなさまにきちんと保障をしていく」ために決断
2022年9月24日 10:10
カムリ、RAV4を生産するサンクトペテルブルク工場の生産事業終了
帝政ロシアの首都として、そしてソビエト連邦時代はレニングラードとして知られるロシア第2の都市サンクトペテルブルク。トヨタ自動車とTME(トヨタ・モーター・ヨーロッパ)は9月23日、サンクトペテルブルグにあるロシアトヨタ有限会社サンクトペテルブルク工場(以下、TMR-SP)での生産事業を終了することを発表した。
直接の原因となるのは2月24日にロシア-ウクライナの紛争(日本ではロシアのウクライナ侵攻、ロシア側からは特別軍事作戦)が発生したこと。これ以降、ロシアへのさまざまな経済措置が採られたことで部品供給が滞り、生産に必要な部品調達ができなくなったTMR-SPは3月4日創業を停止した。
トヨタの発表によれば、「その後も、稼働再開に向けて生産ラインの保全を日々実施するなど準備を継続してきました」「半年が経過しても生産再開の可能性は見い出せず、このままではトヨタが目指す製品づくりができないこと、また、現在の状況が続けば共に良いクルマづくりを目指してきたロシアの従業員に対して十分な支援ができなくなることから、ロシアでの生産活動を終了すること以外に選択肢がないと判断しました」と、トヨタならではのクルマ作りができなくなったことと、従業員への十分が支援ができるうちに、という決断だったようだ。
この発表についてトヨタ自動車 執行役員 長田准COO(Chief Communication Officer)は、「このタイミングは現地ルーブルもまだありますので、こういった形で従業員のみなさまにきちんとした保障をしていく、あるいは現地のサプライヤー、それからディーラーですね、このみなさまにもきちんとしたことをしていくというのは、まさにもうこのタイミングじゃないと難しいと思った」と語る。
ロシアトヨタの問題については、豊田章男社長との間でも常に経営課題として上がっており、さまざまなことが話し合われてきたという。
部品調達などサプライチェーンが機能しなくなり、トヨタとしてのクルマを生産できないままだといずれ会社のキャッシュ(ルーブル)がつきてしまう。「一生懸命私どものために人生を捧げていただいてる従業員のみなさまにとって、何も回収ができない状態で会社を離れていただくというわけにはいかない」(長田COO)と、トヨタとしてきちんとできるうちに決断したということだ。
トヨタのロシアにおける生産拠点は、Limited Liability Company "TOYOTA MOTOR" in Saint-Petersburg(TMR-SP)のみで、生産事業終了により、新車販売も終了する。この工場は、2007年12月から生産能力年5万台でカムリの現地生産を開始。現在は、カムリとRAV4を生産しており、ロシアでは高所得者層に主に売れていたということで、「経営的なインパクトはある」(長田COO)とのことだ。工場生産や新車販売は終了するが、サービスやサポートなどのディーラー業務については、「サービスメンテナンスは、基本的には継続をしていきたいと思います」とし、部品が入手できる限り購入者に対応していく。
サンクトペテルブルグ市長とも面談
この生産事業終了についてはロシア側とも話をしており、「工場のあるサンクトペテルブルグの市長と面談をし、市長のほうからも『撤退は残念だ。トヨタが15年サンクトペテルブルグ市でやってきた貢献というのは大変感謝したい』とのお話をいただいた」(長田COO)と述べた。ロシアトヨタの従業員は2350人、約500人がモスクワの拠点に勤務し、モスクワの拠点は規模を縮小した上で再編成しサポート業務などを行なっていくという。
また、日本時間で22時30分の発表になったことについては、ロシアとの同時発表のため。ロシア時間に合わせての発表であるということだった。