ニュース

トヨタ、約200万台の受注残解消へ 9月から11月は月平均90万台の増産体制に

約200万台の受注残を抱えるトヨタ、2022年下期へ向けて生産の遅れを取り戻していく。新型クラウンの生産も立ち上がっていくものと思われる

 トヨタ自動車は8月10日、9月の生産計画を公表するとともに9月から11月のグローバル生産台数を公表した。トヨタは8月4日の2023年3月第1四半期決算において、上海ロックダウンや南アフリカの洪水など想定外の案件により計画どおりの生産ができなかったことを公表しており、後半に向けて増産体制を敷くことを明らかにしていた。

 よく知られているように、コロナ禍以降パーソナル空間の見直しがされたことにより、とくに家族での移動の場合は公共交通機関での移動からクルマでの移動にシフトしている現象が見られている。欧州などでは、100年に一度のクルマの変革として、C(コネクテッド)、A(自動運転)、S(シェア)、E(電動化)の「CASE」が提唱されていたが、昨年からシェアのSを取り去り、パーソナルのPを加えた「PACE」という概念をプレゼンテーションに取り入れることが見受けられる。この世界的な流れにより、そもそも増大していた自動車への需要がさらに増え、自動車という商品の人気が高まっていた。

 そこに半導体不足や上海ロックダウンなどの影響が追い打ちをかけ、需要に生産が追いつかない、多くの自動車メーカーにとって納期が長期化、結果的に多くの受注残が出てしまうということになっている。

 とくに世界でもトップレベルのクルマ需要を受け止め、年間1000万台に迫る約970万台の生産を予定しているトヨタ自動車においては、その受注残が多く積み上がっている。

 トヨタの抱える受注残はグローバル全体で約200万台、国内のみでは約80万台と見られており、この受注残の解消のために2023年3月第1四半期決算では下期に向けて増産を行なっていくとしていた。

8月4日に発表された8月4日の2023年3月第1四半期の決算。増収でありながら減益となり、資材高騰などで利益率が悪化している

 9月の生産計画公表は、この増産を反映したものとなっており、9月のグローバル生産台数は85万台程度を見込む(国内約25万台、海外約60万台)ものの、9~11月のグローバル生産台数は平均で月90万台程度と、トヨタ自身が「高い生産計画の立案」というものになっている(通期生産見込みの約970万台は変わらず)。

 気になるのは、円安や需給の関係により原材料価格などが上昇していること。クルマを作るコストが上昇すると、クルマ本体の値上げも気になってくる。この点についてはトヨタは「商品と価格はセットで」という見方をしており、「今はお客さまに対して長納期、常識では考えられないほどお客さまをお待たせしている。待っている間にクルマが切り替わったりしていることも起き始めている中で、まずは我々の方の需給をなんとかしない限り単純な値上げというのは難しい。そのようなことは申し訳なくてできないと考えている」(トヨタ関係者)という。

 また、クルマはさまざまなサプライヤーからの部品納入を経て組み立てられているが、その部品の原材料費上昇分などはトヨタ自動車が負担する形で生産に注力している。生産台数見通しもこのように3か月先までだすことで、サプライヤーが生産計画を立てやすいように変更。

連結営業利益増減要因。左から3つ目のマイナス2750億円の部分に含まれる3150億円の資材高騰分。サプライヤーの資材高騰分の引き受けもこの部分に入っているという

 世界的にリーン生産方式として知られるトヨタ生産方式(TPS、Toyota Production System)は、「ムダ」「ムリ」「ムラ」を取り除いて効率的な生産を実現しようというものだが、増産にあたって長期の見通しを示すことでサプライチェーンの平準化をより進めようとしているのだろう。

 トヨタとして、増産を行なうポイントはコミュニケーションの改善にあるという。特別にすごいツールが開発されたなどということはなく、サプライヤーとともにサプライチェーンの改善を図ることで、「ムダ」「ムリ」「ムラ」を極力減らして増産につなげていくようだ。

 もちろん、計画したように増産できるかどうかは外部要因もあるため今後の世界の情勢が大きく関わってくるだろう。トヨタとしては新型クラウンなど新型車の生産も立ち上げる必要があり、その中で月平均90万台程度のグローバル生産に挑んでいく。なお、半導体部品が多く使われている車種は、納期が長めになっているようだ。ユーザーとしては、納期と価格を考えながら賢くクルマを購入する必要があるだろう。