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ストラドビジョン、ハードを自由に選べる自動車向けAIソフトウエアの説明会と試乗会を開催
2022年10月26日 16:12
- 2022年10月23日 開催
ソフトウエア・ベンダのストラドビジョン(STRADVISION)は10月23日、東京都内で記者説明会を開催し、新しいコーポレートロゴや同社の物体認識AIソフトウエア「SVNet」に関する技術的な説明、SVNetにより構築されたADASを搭載したデモカーなどを公開するとともに、試乗会を行なった。
物体検知ソフトウエアSVNetを武器にティアワンの部品メーカーや自動車メーカーへの売り込みを目指す
ストラドビジョン ゼネラルマネージャー 佐藤寿洋氏は、デモカーの試乗会に先立って、同社の概要、製品、そして今後のビジネスプランなどに関するプレゼンテーションを行なった。
佐藤氏によれば、ストラドビジョンは2014年に韓国で起業したソフトウエア関連のスタートアップ企業で、すでにグローバルに324名の従業員を数える企業に成長しているという。主な事業は、物体検知のAIソフトウエアのコードをティアワンの部品メーカー、OEMメーカーとなる自動車メーカーに提供するという事業。2022年には、そうした事業を象徴する新しいロゴマークを策定し、今後部品メーカーや自動車メーカーなどへの売り込みを強化するとした。
現在の事業に関しては、2017年にテキサス・インスツルメンツ(TI)およびルネサス エレクトロニクスのSoC向けに同社の物体検知ソフトウエア「SVNet」の最適化を行ない、2019年に中国で量産が開始された車両に採用されたほか、2021年にはドイツの自動車メーカーにも採用され、すでに量産が開始されているという。佐藤氏は「グローバルで13の自動車メーカーの、50車種以上の車両にすでに採用され、18を超えるSoCに対応している」と述べ、2014年に設立されたベンチャー企業としてはかなり順調に自動車メーカーへの採用などが進んでいると強調した。
佐藤氏によれば、そうした成果を出していることもあり、米Aptiveや独ZFなどのティアワンの部品メーカーなどを中心に多くの投資を集めており、これまでに1億2900万ドルの投資を受け、順調に成長をしているということだった。
SDV時代には自動車産業でもソフトウエア開発のアウトソース事業が成長する
そうしたストラドビジョンの中心製品となるのがSVNetだ。佐藤氏は「SVNetは弊社独自のアルゴリズムで作られている物体検知のソフトウエア。コンパクトで軽量なディープラーニングのネットワークを構築しており、各社のSoCに向けたコードを簡単に作成できるような形でティアワンの部品メーカーさま、OEMメーカーさまに提供することが可能だ」と述べ、SVNetの強みを述べた。
ストラドビジョンの関係者によれば、マシンラーニングベースの従来型のアルゴリズムに比べて、同社が提供しているディープラーニングベースのアルゴリズムはデータセットが多くなればなるほど性能が出るようになっており、同じSoCで走らせた場合に(コードの量などが)コンパクトでかつ、低消費電力で実行できるのが強みだという。また、単眼カメラとソフトウエアとを垂直統合で提供している競合ベンダーに比べて15~20%ぐらい低コストで提供できるというのも強みになるということだった。
佐藤氏によれば、SVNetの応用事例としてProDriver(ADASや自動運転などでの前方監視)、ParkAgent(駐車支援や物体検知)、ImmersiView(HUDなどを利用したAR表示機能)があり、今後は現在開発しているCompliKit(画像へのメタデータを付与するアノテーションを顧客が行なう場合にそれを支援する機能)を2023年にリリースする計画だと説明した。
今後のビジネス展開に関して佐藤氏は「自動車は今後SDV(Software Defined Vehicle、ソフトウエアにより機能などが定義される自動車のこと)化がどんどん進んでいくと考えられており、自動車メーカーもソフトウエアに関する事業を積極的に展開する時代になっていく。その一方で、GoogleやAmazonといったIT勢も積極的に自動車事業に参入している」と述べ、今後も自動車産業におけるソフトウエアの位置づけは上がる一方であり、そこに同社にとってもビジネスチャンスがあると説明した。
そうした中でも同社のビジネス展開としては、ソフトウエアのテーラーメイドを行なっていくという。佐藤氏は「ソフトウエア専業メーカーとしてティアワンさまにSoCを選んでいただき、そのSoCに向けたソフトウエアを構築して販売するという形になる」と述べ、OEMメーカーやティアワンの部品メーカーなどが自由にSoCを選択し、それに合わせてソフトウエアを構築していくことが今後同社のビジネス上の強みになると説明した。
佐藤氏は「自動車向けのソフトウエアは年成長率9%で成長するとみられている。現在われわれは56万台の車両に採用されているが、2027年までにはこれを1000万台超にしていきたいと考えており、2032年までには5600万台を超えるのが計画だ。それによりソフトウエア市場での市場占有率が50%を目指していきたい」と述べ、自動車メーカーやティアワンの部品メーカーに売り込みを強化して採用例を増やしていきたいと説明した。また、自動車以外にもIoTやロボットなど自動車以外の産業にも進出していきたいと佐藤氏は述べた。
TIとQualcommのレファレンスキット上でのデモ。低消費電力の環境でも高い認識性能を実現
プレゼンテーションの後には、本田技研工業「CR-V」に取り付けた同社ソフトウエア(SVNet)と単眼カメラ+SoCというハードウエアを利用したデモが行なわれた。
今回用意されたシステムはTI TDA4VM(2x Arm Cortex-A72+4x Arm Cortex-R5F、PowerVR Rogue 8XE GE8430 GPU)を搭載したレファレンスボード(SoCベンダーが提供している開発用の基板のこと)と単眼カメラ、Qualcomm SA8155P(8x Kryo CPU、Adreno 640 GPU、スマートフォン向けSnapdragon 855の自動車向けバージョン)を搭載したレファレンスボードと単眼カメラという2つの組み合わせで、いずれも同社のブランドではProDriverと呼ばれる前方監視(つまりADASのようなアプリケーション)のデモとなる。
なお、車両にはほかのデモのために、NVIDIAのJetson(NVIDIAのTegra SoCを搭載した開発ボード)を搭載した開発キットやWi-Fiルーターなども搭載されていたが、今回のデモでは利用されなかった。また、車両上部にはLiDARのユニットが搭載されており、Qualcommのキットにソフトウエア的に実現されているソフトウエアLiDARとデータの比較が行なわれていることなどが説明された。
今回は実際に公道を走り、まわりの車両、歩行者、信号や標識、さらには深度などが認識できている様子を確認できた。ストラトビジョンによればTIのシステムは8TOPS、Qualcommのシステムは1.8TOPSという処理能力でこれだけの機能が実現されているとのこと。消費電力が低く、処理能力がさほど高くないシステムでもこれだけの機能が実現できていることが同社ソフトウエアの強みだとした。