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日産、新型「セレナ」について開発陣がプレゼン 「疲れにくくて酔いにくい」を目指して第2世代e-POWERや先読み充放電制御など採用
2022年11月28日 14:00
- 2022年11月28日 発表
- ガソリン車(2WD):276万8700円~326万9200円
- e-POWER車(2WD):319万8800円~479万8200円
新型セレナの商品コンセプトは「みんながおでかけを快適に楽しめる、家族との遠出を最大限楽しむためのミニバン」
日産自動車は11月28日、「セレナ」をフルモデルチェンジしてガソリン車を今冬から、e-POWER車を来春発売すると発表した。まずは2WD車の価格が発表され、ガソリン車の4WDの価格、発売時期については追って発表される。2WD車の価格はガソリン車が276万8700円~326万9200円、e-POWER車が319万8800円~479万8200円。この新型セレナについて、開発陣からプレゼンテーションが行なわれたので紹介する。
セレナは1991年に初代(C23)がデビューし、1999年に2代目(C24)、2005年に3代目(C25)、2010年に4代目(C26)、2016年に5代目(C27)を発売。代を重ねるごとに着実に販売を伸ばしており、日本事業を支える重要なコアモデルに位置付けられるモデル。ここ5年の販売構成比を見ても約15%をセレナが占めており、モデル別ブランドランキングでも「GT-R」「フェアレディZ」「スカイライン」に続き、日産ブランドをけん引している存在になっている。
そして先代セレナについては、e-POWERやプロパイロットを搭載するなど技術にまつわるイメージが飛躍的に向上し、常にセグメントトップを争うモデルとなった一方で、セレナとして最も重要な「家族と楽しめる」というイメージが低下している点が課題だったという。そこで新型セレナでは、“限られた家族時間を思い切り楽しめるミニバン”として、歴代セレナのDNAである「BIG」「EASY」「FUN」という価値を徹底的に磨き上げたという。
その新型セレナの商品コンセプトは「みんながおでかけを快適に楽しめる、家族との遠出を最大限楽しむためのミニバン」。室内では有効室内長2720mm、ミニバンNo.1の各席ニールームを確保するとともに、インパネ前方の形状をフラットにすることで前方視界を見やすくした。また、e-POWERで8人乗りを追加したことがトピックとして挙げられるほか、荷室長(サードシート後端~バックドア)では先代セレナが329.3~449.3mm(スライド120mm)だったところ、342.3~462.3mm(スライド120mm)へと拡大し、ゴルフバッグを縦積みで4個、Lクラススーツケースを2個搭載することを可能にしている。
ウォークスルーについては特にコンソールの形状などを見直してタテにもヨコにも簡単な移動を実現したほか、2列目シートは形状を見直してフルフラットにした時の寝心地にこだわって開発したという。インパネまわりでは日産として初めてスイッチタイプの電制シフトを採用するとともに、エアコンにもタッチパネルを用いて操作性を高めた。
加えてナビリンク機能付のプロパイロットまたはミニバンクラス初となるプロパイロット2.0、NTTドコモの車内向けインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」、ラゲッジとコンソールに100V AC電源(1500W)を用意するとともに、バックドア全体を開けずに荷物の出し入れが可能な「デュアルバックドア」、キーを持って車両に近づけばアンロックし、離れればロックする機能、コネクテッドサービスの一環として車両温度を音声で設定できる機能、汚れが染み込みにくい撥水シートや生地そのものに防水性のある防水シート(ネオソフィール)をグレード別またはオプションで設定するなど、徹底してミニバンとしての安全性、快適性、利便性のよさを追求している。
また、新型セレナのコンセプトである「家族との遠出を楽しむためのミニバン」を最も体現する最上位グレードとして「LUXION(ルキシオン)」を設定したのも新しい。LUXIONはe-POWERのみの設定とし、ミニバンで初めてプロパイロット2.0を標準装備するなど、上質で特別なグレードとして位置付けられる。なお、LUXIONは「上質な」という意味のluxeと、「神の国」を表すzionを組み合わせた造語で、最高級感を表現したものとなっている。
「急な頭の動きをさせないこと」「視界を広く取って平衡感覚を働きさせやすくすること」が重点項目
プレゼンテーションでは新型セレナのチーフ・ビークル・エンジニアである黒田和宏氏も登壇し、新型セレナの技術について説明を行なった。
黒田氏は「ロングドライブも毎日する送り迎えも楽しめるミニバンNo.1になりたい、絆をより一層大事にする令和の家族にロングドライブを楽しんでいただけることを目指して開発してまいりました」とコメント。このロングドライブを楽しむには「疲れにくくて酔いにくい」が前提となり、車内がうるさいと会話するにも疲れるし、ハンドル・アクセル操作に違和感があるとこれもまた疲れる要因の1つになる。また、「酔いにくい」という項目はそもそもどう計測して表現すればいいのかというところから開発が始まったが、実験部の研究により発汗量を測り、疲れ・酔いへの影響因子を徹底的に抑え込むことでロングドライブの快適性を実現したという。
具体的には「急な頭の動きをさせないこと」「視界を広く取って平衡感覚を働きさせやすくすること」の2点を重点項目とし、静かに滑らかにクルマを動かすことを目指した。これを前提に、まずパワートレーンでは新開発となる直列3気筒DOHC 1.4リッター「HR14DDe」型エンジンに、「EM57」型モータを組み合わせた第2世代e-POWERを採用。エンジンでは従来から出力が16%向上して最高出力は72kW(98PS)/5600rpm、最大トルクは123Nm(12.5kgfm)/5600rpmを発生し、モータは出力20%向上の120kW(163PS)、最大トルクは315Nm(32.1kgfm)となる。
この新開発エンジンについて、黒田氏は「会話が弾む圧倒的な静かさのために低速でのEV走行頻度を増やして、低速では静かに、エンジンがかかっている高速時でも圧倒的な静かなクルマになっています。1つは静かなエンジンでもなるべくエンジンをかけない、そして車体そのものを静かにすること。エンジンの回転そのものを下げ、エンジンにはバランサーシャフトやフレキシブルフライホイールを採用し、また各構成部品の剛性を高めることによってエンジンそのものを静かにするということに徹底的にこだわりました。それから発生する音を徹底的にキャビンに入れないということにもこだわりました。ダッシュインシュレーターの強化や遮音ガラスの採用のみならず、部品の取付け部とインシュレーターの間にある細かな隙間を徹底的に塞ぐことにより静かなクルマを作り上げました」と解説。
また、ノートやノート オーラでも採用している最先端のエネルギーマネジメント技術を活用しており、ロードノイズが高まった時に積極的にエンジンを回して発電するというロジックを採用するとともに、新型セレナで初めて採用するルート上の充放電を先読みして発電制御するというロジックを投入。これは目的地周辺で静かに走行できるように、目的地に着く前に充電量をあらかじめ増やしておくという制御で、例えば下り坂になることが分かっている時は積極的に電気を使い、バッテリの充電量を減らして下り坂での回生を取り切るという制御が可能になる。
そして滑らかにクルマを動かす点については、「なめらかな前後の動き」「なめらかな左右の動き」「頭部への揺れの伝わりにくさ」に重きを置いて開発。これを実現するべくアクセルペダルだけで車速を自在にコントロールできる「e-Pedal Step」に専用チューニングを施して操作性を向上させ、アクセルを急に戻してもなめらかに減速させることが可能になった。また、新開発ショックアブソーバー、ロール剛性を20%向上させたスタビライザーなどからなる高剛性サスペンションの採用によりおだやかなロール挙動を実現するとともに、頭の揺れを抑え、ロングドライブの快適性を支える新ゼログラビティシートを1/2列目シートに採用。
さらに高速走行時も抜群の安定感が必要ということで、新型エクストレイル譲りのラックアシスト式電動パワーステアリングを採用して安定してカーブを走行できるようにしたほか、横風によるふらつきやすさを抑えるためフロントバンパーサイドに空気の流れを整えるエアカーテンを採用。エアカーテン採用により、先代セレナと比べヨーモーメント量を20%減らすことに成功したという。
インテリアでは前席ではセンターコンソール、後席ではセンターシートになる「センターマルチシート」を新開発し、e-POWERの先代モデルでは7人乗りだったところ、8人乗りを実現。また、運転席の見晴らしのよさだけではなくセカンドシートからの見晴らしのよさについてもこだわって開発。セカンドシートからも外がよく見えるようにすることで平衡感覚を働きやすくしている。
一方、先進の安全装備については「プロパイロット」を全車に標準装備するとともに、「e-POWER LUXION」では「プロパイロット 2.0」を標準装備。状況に応じて同一車線内でステアリングから手を離すハンズオフを可能にし、車線変更と分岐の支援、追い越し時の車線変更の支援なども行なう。また、一度駐車した場所を駐車枠として記録することができるメモリー機能付きの「プロパイロット パーキング」を日産車として初搭載。白線のない場所や道路から離れた奥まった場所でも記録した駐車位置に近づくと、ボタン1つでステアリング、アクセル、ブレーキ、シフトチェンジ、パーキングブレーキのすべてを自動で制御し、多様な駐車シーンをサポートするといった特徴が語られた。