試乗レポート
オーテック「セレナ マルチベッド」、車中泊OKで休日のお出かけがもっと楽しくなる1台
フロアパネルやベッドマットをセットにした「マルチベッドシステム」の使い勝手は?
2020年10月2日 06:00
もっとも便利なミニバンがベース
コロナ禍でも三密を避けて楽しむことのできるレジャーとしてオートキャンプの人気が高まっていて、それを受けてキャンピングカーの販売も好調だと聞いた。たしかにキャンピングカーが魅力的なのはよく分かる。ただし、なかなかそこまで思い切れない人も少なくないはず。それでも、こんなクルマだったらぜひ欲しい! という人は大勢いるのではないだろうか。オーテックジャパンが手がけた、「セレナ マルチベッド」だ。
こうしたクルマは一部の競合車やアフターでトランスポーターを手がけるショップには近い仕様のものが見受けられたが、セレナではパッと思い浮かばない。ところが、そもそもセレナというのは世に数あるミニバンの中でもユーティリティにかけてはピカイチだ。広々とした車内に豊富な収納スペース、多彩なシートアレンジなどではもともとライバルをリードしていた。そして2017年に登場した現行型は、さらに2列目シートの超ロングスライドや左右席とも横スライドができるようになったり、テールゲートのリアガラスが独立して開閉できるようになったり、スライドドアがハンズフリーで開閉できるようになったりと、開発責任者が「現時点でこれ以上できることはありません!」と胸を張るほど、より利便性が向上した。
セレナ マルチベッドはそんなセレナの3列目をいさぎよく取り払い、ハイブリッド車は5人乗り、2列目がキャプテンシートとなるe-POWERは4人乗りにするとともに、フロアパネル、ベッドフレーム、ベッドマットをセットにした「マルチベッドシステム」や、ベース車ではオーテック扱いメーカーオプションの防水シートなどが特別装備されている。なお、セレナ AUTECHにマルチベッドを架装することだってできる。
家族団らんがよい思い出に
「マルチ」と謳っているとおり、本当にマルチな使い方ができるのがうれしい。ベッドマットは下の写真のように分割されているので、2列目シートをどのように使いたいかに合わせて何通りかのアレンジが可能となっている。とても軽いのでアレンジするのがラクなのもありがたい。
海辺にクルマを止めてちょっとくつろいでみたところ、ベッドマットの寝心地がとてもよいことにも感心した。オーテックジャパンいわく、合板とウレタンを適宜組み合わせて心地よい硬さにこだわったというだけのことはある。最長で2150mmもの奥行きが確保できるので、カップル+α程度ならみんなでゴロンと横になれそう。4歳児と2歳児のいる岡本家のようなファミリーにもピッタリだ。
出先でこんな感じに家族団らんのひとときをすごせば、きっとよい思い出になることに違いない。クルマでどこかに出かけるだけでもうれしい子供たちにとって、クルマの中がこんなふうに変身するというのは、それはもううれしくてうれしくてたまらないってもんだ。
フロアパネルは汚れたものや濡れたものを気がねなく載せられるように、汚れや水滴をサッと拭き取れるような素材とされている。しかもかなり頑丈なので重たい物を載せてもクルマ自体のフロアを痛めてしまう心配もない。
さらに、試乗車に装着されていた追加オプションのサイドマルチパイプとロッドアタッチメントがあれば、使い勝手の幅がより広がるのは言うまでもなし。さらにさらに、ほかにもマリンスポーツをたしなむユーザーのために、サーフボードやロッド類を収納するためのアタッチメント類も用意されている。
見た目も走りも“普通”なのが助かる
それでいて、外見はいかにもキャンピングカーという感じではなく普通のセレナなので、日常の買い物や送迎にも何も気にすることなく使える。そのほうが助かるという人にもってこいだ。ベッドフレームを付けたままだと運転席と助手席のリクライニングや前後スライドに制約が生じるので、普段使いでは外したほうがよいだろうが、それ以外はいたって普通に使える。
見た目だけでなく乗った印象もそうで、重量増や重心が高まるためキャンピングカーは操縦安定性がよろしくないと言われるのに対し、このクルマならその心配もない。今回の試乗車は、スマートシンプルハイブリッド 2WDの「ハイウェイスターV」がベースだが、軽やかな走りと快適な乗り心地はそのまま。もちろんセレナなので、運転支援技術の「プロパイロット」のおかげでより安全で快適にロングドライブを楽しむこともできるし、必要に応じて4WDを選ぶこともできる。
購入にあたっても、普通に日産のディーラーで扱っているので、部品代を別に計算する必要もなく一括してローンを組めて、もちろんメンテナンスもディーラーで普通に受けられる。「ちょっといいな、という特装車を手に入りやすいようにするのがオーテックの役目なのかなと思っています」と広報の高木女史が述べるとおり、気軽につきあえて、たっぷり楽しめる1台。こんなクルマが手元にあると、休日が待ち遠しくてしかたがなくなってしまいそう。気分がアガること請け合いだ。