試乗レポート

BMW 2シリーズ グラン クーペの最上位モデル「M235i xDrive」、その実力やいかに?

なにせスタイリッシュ

 4540×1800×1430mm(全長×全幅×全高)という日本の市街地でも扱いやすいサイズであり、見てのとおりかなりスタイリッシュ。2シリーズにもついにラインアップされた待望のグランクーペ。これを待っていた人も少なくないことだろう。

 一方でFFになった現行1シリーズの売れ行きが芳しくないらしい。とりわけ日本では、これまでもセグメント唯一のFRだからこそ選ばれていた面が小さくなかったことが浮き彫りになったと言えそうだ。

 ところが2シリーズ グランクーペは、むろん1シリーズと中身の共通性は高いわけだが、受け取られ方がだいぶ違って、駆動方式がどうかよりも、手ごろなサイズのルックスが魅力的なBMWとして目を引くことに違いない。

 なにせスタイリッシュだ。とくに斜め後方からの眺めが印象深い。ワンモーションで描かれたなだらかに落ちるルーフラインが美しいプロポーションを際立たせている。よりアグレッシブな外観をまとう「M235i xDrive」ならなおのことだ。BMWの最新デザインコンセプトを採用したというテールエンドも印象的で、見慣れたBMWのL字型ランプとはまた違った妖艶な雰囲気をただよわせている。

今回試乗したのは、2019年10月に受注を開始したBMW初のプレミアムコンパクト 4ドアクーペとなる「2シリーズ グランクーペ」の最上位モデル「M235i xDrive」(665万円)。ボディサイズは4540×1800×1430mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2670mm
M235i xDriveではメッシュデザインのキドニーグリルをはじめ、専用の台形型デュアルエキゾーストテールパイプを採用。キドニーグリルやエアインテークトリム、ミラーキャップなどはセリウム・グレーで統一され、よりアグレッシブな外観に仕上げられた。足下はダブルスポークの18インチホイールにブリヂストンのランフラットタイヤ「TURANZA T005」(225/40R18)の組み合わせ

グランクーペならではの利便性

 リア部分の作りは、一見すると4シリーズのようにリアウィンドウも一緒にテールゲート状に開きそうにも見えるが、トランクフードを単独で開閉するタイプ。閉じたときの引き締まった感じの音も好印象だ。

 トランク容量が430Lというのは、旧型比で20L増の380Lとなった1シリーズや、390Lの2シリーズ クーペと比べてもだいぶ大きい。フロアが大きく掘り下げられているほか、向かって右側がえぐられているのでゴルフバック大の荷物も横向きにラクに積める。

 リアシートは4:2:4の3分割可倒式となっていて、ハッチバックではないので天地方向の制約こそあれ、真ん中が単独で前倒しできて積みたいものに合わせてフレキシブルに対応できるのは便利。ついでに述べると、アレンジしてみるとシートの作りがかなりしっかりしていることがよく分かる。そのあたりも抜かりはない。

 上級機種のグランクーペと同じくサッシュレスドアを採用しているのも特徴。後席に乗り込んでみたところ、頭上が絶妙にえぐられていて、平均+αの成人男性の体格である筆者が座ってクリアランスがかろうじて残る広さが確保されている。膝前は広くはないものの、狭いというほどでもない。

ブラックを基調にした精悍なインテリアでは、10.25インチのフルデジタル・メーターパネルや10.25インチのコントロール・ディスプレイなどを採用。AI技術を活用し、音声で車両の操作や情報へのアクセスが可能となる「BMWインテリジェント・パーソナル・アシスタント」を標準装備
リアシートは大人が座ってもそこまで狭さは感じない広さ。4:2:4分割可倒式なのでフレキシブルにシートアレンジできる
トランクスペースはFRの2シリーズ クーペから約40L拡大した430Lを確保

 ついでヘッドレスト一体型のフロントシートに収まると、BMWの新しい流儀でデザインされたコクピットには、オプションの10.25インチのデジタルメーターパネルとコントロールディスプレイをはじめとする装備が先進的な空間を演出している。4ドアクーペながら、6ライトウィンドウであることも効いて、全方位にわたり概ね良好な視界が得られている。直感的な操作が可能なAI技術を活用した音声会話システムももちろん標準装備される。

走りはどうか?

 306PS、450Nmを発生する直列4気筒2.0リッターエンジンの加速はやはり強力だ。ただし、パワフルでも下がないエンジンや少々気を使うブレーキのタッチ、太く重いステアリングは、市街地を走るのが本来の姿ではない感じもするし、サイズのわりに小まわりが利かないなど、普通に走るにはあまり向かない印象もある。そのあたりはそのうち最適化されていくことと思うが、ワインディングに持ち込むと水を得た魚。このクルマに込められた意図がうかがい知れる。

 M235i xDriveには先進的な4WDシステムであるxDriveや新開発の機械式トルセンLSDが標準装備されるほか、1シリーズで導入されたアンダーステアを抑制するARB(タイヤ スリップ・コントロール・システム)も搭載される。これらも効いて、俊敏でスポーティな走りを楽しむことができる。

M235i xDriveが搭載する直列4気筒DOHC 2.0リッター「B48A20E」型エンジンは、最高出力225kW(306PS)/5000rpm、最大トルク450Nm(45.9kgfm)/1750-4500rpmを発生。WLTCモード燃費は11.9km/L

 Sモードを選択するとさらに走りが活き活きとして、アクセルレスポンスが鋭くなり、野太いエキゾーストサウンドもより低音が強調され、より刺激的な走りを楽しませてくれる。アクセルONでの瞬発力だけでなく、アクセルOFFでもダイレクト感が増してコントロール性が高まり、タイトコーナーの出口ではリア外輪がグイグイと押し出してくれて、小さな舵角のまま立ち上がっていける。これは楽しい! 車速が高まるにつれて、より本領を発揮する印象で、太いステアリングホイールもずっしりと手応えを増す。FRでなくなったことをとやかく言わせないようにという、BMWの意地がヒシヒシと伝わってくる。

 このクルマのことを3シリーズの弟分として興味を持つ人も多いだろうし、「M235i」(現在は「M240i」にグレードアップ)というと、まだ現役バリバリの後輪駆動の2シリーズ クーペに対してどうかという視点で見る人も少なくないことだろうが、味はかなり異質だ。それは駆動方式の違いよりも、与えられたキャラクターそのもの。お互い車両重量は1.6t近いが、2ドアクーペの方が軽快で、手の内に操れる感覚があったのと比べると、グランクーペは意外やそうでもない。よい意味で、よく高性能車でパフォーマンスが先走っていることを表現する際に用いる“乗せられてる感”らしき感覚がある。こんなにコンパクトで見た目もスタイリッシュとはいえ普通のクルマなのに、なんだかすごいクルマに乗っているような感覚だ。

 日本の道路事情でも使いやすいサイズ感で、利便性も高く、先進的な装備も充実し、なによりスタイリッシュで、さらには走りも一級品。コンパクトなボディにBMWの魅力が凝縮されたニューモデルの登場を大いに歓迎したい。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一