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ド・ディオンアクスル採用の新型バッテリEVピックアップ、トヨタ「ハイラックスRevo BEVコンセプト」 フレーム車ならではの巧妙設計
2022年12月19日 06:33
フレーム構造を持つハイラックスがバッテリEVに
トヨタ自動車がタイで開催したトヨタ モーター タイランド60周年記念式典で世界初公開された新型バッテリEV「ハイラックスRevo BEVコンセプト」。トヨタがタイなどで生産しているIMV(Innovative International Multi-purpose Vehicle)である「ハイラックス」をベースに電動化車両として作られたものになる。
IMVは新興国など現地での地産地消を目指して作られたシリーズで、IMV-IピックアップB-cab(シングルタイプ)、IMV-IIピックアップC-cab(エクストラキャブ)、IMV-IIIピックアップD-cab(ダブルキャブ)、IMV-IV SUVタイプ、IMV-V ミニバンと5タイプの車型を用意。このうち、IMV-I/II/IIIがハイラックスとして知られている車種になる。IMVシリーズの現地調達率は現在では96%に達し、年間の生産台数はコロナ禍で下がったものの、年間で約80万台~90万台を記録。一時は100万台以上生産しており、トヨタの生産台数の約10%(年によって異なる)を支えている。
その特徴は、なんといってもフレーム構造を採用していること。フレーム構造を採用していることでタフなクルマとなり、新興国ならではの道路事情やメンテナンス事情に対応。IMVシリーズの開発に携わる中嶋裕樹CV Company Presidentによると、「壊れても直すことができる、壊れても部品を単体でお届けできる」クルマがIMVであるという。
イーアクスルならではのド・ディオンアクスル構造
60周年記念式典で初公開された「ハイラックスRevo BEVコンセプト」は、そんなIMVシリーズの設計を活かしたバッテリEVとなっている。まずは、IMVとしての生産ラインに乗るフレーム構造をしていること。そして、リアサスペンションをド・ディオンアクスルにしたことだ。
ド・ディオンアクスルは、リジットサスペンションの改良方式として生まれたもので、デフ部分を車体側に取り付けることでバネ下重量の軽減を狙ったもの。デフと後輪はジョイント(継ぎ手)で接続され自由度はあるものの、後輪のハブはリジットと同様に左右結合されているため強度は高い。
今回のハイラックスRevo BEVコンセプトでは、後輪の駆動にbz4Xに採用さているブルーイーネクサスのeAxle(イーアクスル)を採用。ただし、150kWの出力を得るために後輪用ではなく、FF仕様の前輪用イーアクスルを後輪用として使っているという。
このイーアクスルはモーターとデフ一体型のため、このイーアクスルから等長のジョイントで後輪を回している。
実際にド・ディオンアクスル部分を見ると、イーアクスルがボディ側に取り付けられ、左右後輪のハブは太いパイプで接続されているのが分かる。そのパイプ部をリーフスプリングで支え、ショックアブソーバーで動きをコントロールしているという構造になっていた。
開発を担当したJurachant Jungusuk Ph.D氏に設計ポイントを聞いてみると、ピックアップトラックとして1トンを積載できることを前提に余裕を持って強度設計してあるとのことだ。
特筆しておきたい点として、左右後輪のハブを接続する太いパイプに「HILUX」とデカデカと描かれていたこと。これ、絶対クルマの下に潜り込んでこの場所を撮影すると予測されていたようで、なんとなく負けた感じがした。
ちなみにバッテリ類はフレーム中央部の上部に置かれ、後輪駆動のためフロントは通常の設計となっていた。
つまり、この新型バッテリEVピックアップであるトヨタ ハイラックスRevo BEVコンセプトは、IMVのフレーム設計を活かし、リアサスペンションまわりをモーターとデフ一体型のイーアクスルを使って電動化。バッテリ類もフレーム車のため取り付けが容易になっている。
航続距離を伸ばすためにはモノコックボディなどの軽量化が大切だが、いつでもどこでも働くクルマの電動化にはフレーム設計の汎用性は高いなと思わされた。もちろん航続距離を増やすためにはバッテリの大容量化が必要となるが、商用車のため用途によるバリエーション展開をすればよいということだろう。何より、これまで作り続けてきたIMVを、その根本であるフレーム設計を変更せず、容易に電動化できていることに驚かされた。