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ブルーイーネクサス、アイシン、デンソー、3社共同開発の「eAxle」オンライン説明会 新型バッテリEV「bZ4X」の電費効率に貢献

2022年4月13日 開催

BluE Nexus、アイシン、デンソーの3社で共同開発した新型「eAxle」の主なスペック

5月12日発売の新型バッテリEV「bZ4X」に搭載

 BluE Nexus(ブルーイーネクサス)、アイシン、デンソーの3社は4月13日、共同開発した「新型eAxle(イーアクスル)」のオンライン説明会を開催した。

 eAxleはモータ、インバータ、トランスアクスルなどを一体化した、車両の電動化で必要とされる電動駆動モジュール。3社で共同開発の新しいeAxleは、FWD車向けの150kW仕様(フロント)、4WD車向けの80kW仕様(フロント/リア)で計3機種を用意しており、5月12日に発売されるトヨタ自動車の新型バッテリEV「bZ4X」に搭載されることも合わせて発表されている。

 これまで培ってきたデジタルシミュレーションなどの技術により、eAxle内部で求められる最適な冷却、熱マネジメント技術を編み出したことに加え、インバータの積層両面技術を進化。これらの技術によって出力密度を向上させ、高トルクで長時間の出力を可能とする高い動力性能を実現する。さらにモータの最適磁気設計、コイルエンドを短縮する接合技術、eAxle向け低粘度オイル、新RC-IGBTといった損失低減技術により、電動車両の“電費”効率を大きく高めるという。

 電費向上以外の面では、インバータをトランスアクスルに内蔵するビルトイン構造の採用やモータの小型化、アウトプットシャフトの採用による軸間短縮などの技術によってモジュールサイズのコンパクト化を追求。フロントでは前後方向の長さ、リアでは高さの低減を図り、車内空間や荷室空間の拡大に寄与する製品となっている。

NEDCモードで従来品に対して約10%の損失低減

株式会社BluE Nexus システム開発部 主査 矢田裕貴氏

 説明会ではまず、BluE Nexus システム開発部 主査 矢田裕貴氏がプレゼンテーションを実施。2019年4月に設立されたBluE Nexusの会社概要に続き、BluE Nexusの事業内容を紹介した。

 BluE Nexusでは今回発表を行なったeAxleに加え、FF用2モータハイブリッド、FF用1モータハイブリッド、THS(トヨタハイブリッドシステム)などを商材として扱っていることを説明。トランスアクスル、モータ、インバータといったコンポーネントはアイシン、デンソー、トヨタから供給を受け、モジュール化やシステム開発などを実施。顧客となるOEMメーカーに販売し、バッテリEV、PHEV(プラグインハイブリッドカー)、HEV(ハイブリッドカー)、FCEV(燃料電池車)などの生産に利用されている。

BluE Nexusの会社概要
BluE Nexusの事業内容

 本題となる新型eAxleについては、フロント向けに最大出力150kWと80kW、リア向けに最大出力80kWの3種類をラインアップして、サイズはフロント向けが410×492×420mm(前後長×全幅×全高)、リア向けが444×427×303mm(前後長×全幅×全高)。

 小型化技術では、バッテリの電気を直流から交流に変換するインバータをトランスアクスルに内蔵するビルトイン構造とすることで取付部品を減らし、eAxleの小型化で車両の車室空間拡大に貢献。また、新たに採用したアウトプットシャフトによってモータとデフの軸間を短縮したことが、eAxle全体の小型化につながっている。

新型eAxleでは小型化、損失低減/動力性能向上についてさまざまな技術を投入

 損失低減/動力性能向上技術では、モータで磁気回路の最適設計、コイルエンドの短縮接合技術を採用。トランスアクスルには電動車向けの低粘度オイルを使い、インバータでは新RC-IGBTを導入している。これまでHEV向けに培ってきた技術をベースとしつつ、新たにバッテリEV向けの開発を実施したことで、NEDCモードで従来品に対して約10%の損失低減を実現。バッテリでの航続距離向上につなげているという。

 車両搭載時のイメージについても紹介し、フロント向けでは従来品から110mmの前後長短縮で搭載位置を前進させ、車両のキャビンスペースを拡大。リア向けもインバータ一体型ながら全高を303mmに抑えたことで車体後方に搭載しやすくなり、ラゲッジスペースの容量拡大も実現するとアピールした。

駆動用モータにデンソーのレーザー接合技術を初導入

株式会社アイシン PTモータ技術部 室長 中川善也氏

 矢田氏によるプレゼンテーションに続いて行なわれた質疑応答では、参加した報道関係者からの質問を受け、今回発表した新型eAxleはギヤ変速をしない1速のタイプであり、今後については変速するタイプについても考えていること、インバータのモジュール化によって別々にレイアウトする場合に使う接続ケーブルやケース、車体に固定するためのマウントやブラケット類が不要になることアウトプットシャフトを採用してドライブシャフトの大径部をモータの外に押し出したことが小型化実現のキーになったことなどの技術捕捉を実施。

 また、モータの電費を向上させるコイルエンドの短縮接合技術については、共同開発でモータを担当したアイシン PTモータ技術部 室長 中川善也氏が回答し、「今回の製品では平角線を使っており、コイルエンドの接合技術にはデンソーさんで開発されていた新しいレーザー接合技術を採用してコイルエンド短縮を実現しております。採用では2つの効果を狙って、1つは銅線自体が短くなることで損失を低減すること、もう1つはモータ搭載スペースが小さくて済むようになる小型化で、両方のメリットを得られています。駆動用モータにデンソーさんのレーザー接合技術が使われるのはこれが初めてで、その技術をアイシンの生産現場に技術供与いただいて共同開発したものになります」と説明した。

株式会社アイシン EV技術部 室長 井上亮平氏

 多段化などのラインアップ拡充とそれに関連する生産ラインの考え方などについてはアイシン EV技術部 室長 井上亮平氏が答え、「現状の製品は多段化の生産ラインには対応しておりません。今後、ニーズが出てくれば、ラインを改造するのか、新設するのかを考えていきたいと思います」と述べている。

 次世代製品に向けて改良すべきポイントについては、矢田氏が「新型eAxleにはこれまでハイブリッドカーの開発で培ってきた技術などを用いることで、損失低減による高効率化を図り、動力性能も改善できたと思っています。今後についてはお客さまのニーズが先にあるので、それぞれのニーズに合った開発を進めたいと考えています。それが効率側にいくこともあるでしょうし、サイズ側に寄ることもあると思います」と回答。

 続いて同じ質問に対し、BluE Nexus 経営管理部 部長 森村剛士氏が「基本的にバッテリEVは、航続距離を伸ばすためにまだ比較的値段が高めな電池をたくさん乗せなければならず、効率を高めることは間違いなく求められる方向性になります。また、サイズもお客さまが専用プラットフォームなどを開発する中で悩んでいる部分なので、搭載スペースに合わせたカスタマイズを、生産ラインの効率化、競合他社との競争に打ち勝つ低コスト化といったことも軸にして、お客さまから求められるカスタマイズに対応しつつ進めたいと考えています」と語っている。