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デンソー、2019年3月期決算説明会。売上収益5.0%増の5兆3628億円も営業利益23.4%減の3162億円に

安城製作所と廣瀬工場を電動化のグローバルマザーに

2019年4月26日 開催

株式会社デンソー 経営役員 松井靖氏

 デンソーは4月26日、2019年3月期(2018年4月1日~2019年3月31日)の連結決算を発表。同日、東京において決算説明会が開催され、同社経営役員 松井靖氏と同経営役員 加藤良文氏が説明を行なった。

 発表によると2019年3月期の連結業績は、売上収益は5兆3628億円(前年度比5.0%増)の増収となったものの、営業利益は3162億円(同23.4%減)、税引前利益は3560億円(同20.9%減)、当期利益は2796億円(同18.6%減)となった。親会社の所有者に帰属する当期利益についても2545億円(同20.6%減)の減益となっている。

2019年3月期 通期決算
所在地別のセグメント情報
2019年3月期 第3四半期公表数値の差異
設備投資・償却費・研究開発費の推移

 2019年3月期の業績は、欧州や中国で市場の減速感があったものの、グローバルな車両生産の増加や拡販、及び2017年11月に子会社化したデンソーテンの影響などにより売り上げは増加。一方、営業利益は将来の成長領域への投資の加速や、2018年度に発生した一過性の収益がなくなったことによる影響、当第4四半期連結会計期間での品質費用の引き当てなどにより減益となった。

得意先別の売上収益

 説明会に登壇した松井氏からは、決算の概要とともに得意先別の売上収益について説明があり、トヨタグループの売上収益2兆4847億円について「デンソーテンの影響や中国での車両生産の増加、日本での予防安全装備の装着率拡大で11%増収しました」と報告。

 トヨタグループ以外の売上収益2兆2776億円について、松井氏は「3.8%の増収で、ホンダは北米でのディスプレイ製品の拡販や日本での生産車両の増加で売り上げが増加しました。日本メーカー向けの売り上げが軒並み増加する一方で、海外メーカーを中心にヨーロッパや中国で市場減速により売り上げが減少しています。フォードの落ち込みはほとんどが中国市場で起きています。また、フォルクスワーゲン・アウディは欧州のWLPTの影響で大きく落ち込んでいる状況です」と解説した。

製品別の売上収益

 製品別売上収益では、予防安全製品を中心としたモビリティシステムの売上収益が前年比26.9%増の9140億円となり、松井氏は「モビリティシステム製品は日本での予防安全製品の装着率拡大や、日本および北米でのディスプレイ製品の拡販で売り上げが増加しています。予防安全製品は従来の想定どおり着実に売り上げを拡大していて、電動化製品とともに当社のトップラインを引っ張っていく傾向は続いていくと考えています」と話した。

営業利益3162億円の増減要因

 また、前年度比で965億円減と減益幅の大きかった営業利益3162億円の増減要因についても松井氏から説明があり、前年度2018年3月期の営業利益4127億円については、TDモバイルを子会社化したことなど前期に一過性の収益261億円があったとし、一過性の増益要因を除いた営業利益の実力値は3866億円であるとした。

 一方、2019年3月期の営業利益3162億円は、一過性の減益要因として日本地域での品質引き当て計上で330億円、ヒュンダイの不調による韓国拠点の事業減損67億円の計397億円があったといい、一過性の減益要因を除いた営業利益の実力値は3559億円であると説明。これら一過性の増減要因を除いた減益幅としては307億円であるとした。

2020年3月期 通期予想は売上収益2.6%増の5兆5000億円

2020年3月期通期予想。前提となる為替レートは1USドル=110円、1ユーロ=125円

 2020年3月期(2019年4月1日~2020年3月31日)の連結業績予想については、売上収益は5兆5000億円(前年度比2.6%増)、営業利益は3800億円(同20.2%増)、税引前利益は4290億円(同20.5%増)、当期利益は3330億円(同19.1%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は3050億円(同19.8%増)と予想した。

 来期は、予防安全製品の拡販や車両の電動化が進むことなどにより、車両生産台数の伸びを上まわる成長が見込めるとの見通しを示した。

安城製作所と廣瀬工場を電動化のグローバルマザーに

株式会社デンソー 経営役員 加藤良文氏

 同説明会に登壇した加藤氏からは、直近の技術開発の取り組みについて説明があった。

 トヨタ自動車から電子部品事業を集約し、電動化領域の開発・生産体制の強化に向け1800億円を投資することに関して、加藤氏は「安城製作所と廣瀬工場を、電動化のグローバルマザーとして開発生産体制の強化を行ない、グローバルで供給体制を構築していきます。次世代のインバーター、モータージェネレーターの開発生産を加速していきます」と説明。

 自動運転領域では、Uber Advanced Technologies Groupに出資して自動運転ライドシェアサービスの開発と展開へ向け協業をすることについて、加藤氏は「北米で多くのユーザーを持つ配車サービスのUber、トヨタ、デンソーが連携することで高品質で信頼性の高い自動運転車両ならびに自動運転キットを開発して、レベル4のMaaS車両の実現に貢献していきたい」と話した。

 さらに、電動化、自動運転の普及を目指す新会社として「BluE Nexus」「J-QuAD DYNAMICS 」を2019年4月1日に設立したことを報告。電動化領域の新会社であるBluE Nexusについては、トランスアクスル、モータージェネレーター、インバーターといったキーコンポーネントをパッケージにした駆動モジュールの開発販売を行ない、自動運転領域の新会社J-QuAD DYNAMICSについては、ソフトウェアを開発して付加価値の高い車両統合制御システムの実現を目指すという。

 加藤氏は「いずれも幅広い全世界の自動車メーカーのニーズに合わせた開発を加速させ、世界各地での電動化・自動運転の実現を目指していきたい」との意気込みを話した。

参考資料