ニュース

デンソー、2019年3月期 第2四半期決算説明会。将来の成長領域への投資などにより営業利益は前年比521億円減の1524億円

通期の営業利益予想は前回から30億円増の3930億円に上方修正

2018年10月31日 開催

 デンソーは10月31日、2019年3月期 第2四半期決算を発表。2019年3月期 第2四半期連結の売上収益は2兆6250億円(前年同期比11.1%増)、営業利益は1524億円(同25.5%減)、税引前利益は1702億円(同24.9%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1141億円(同26.0%減)となった。

 同日に開催された説明会では、同社 常務役員 松井靖氏が決算概要について説明。売上収益は自然災害による影響があったものの、グローバルでの車両生産の増加や拡販、2017年11月のデンソーテンの子会社化などにより前年同期比で11.1%増となる2兆6250億円になったこと、営業利益は前期に発生した一過性の収益がなくなったことによる影響や、前期との費用回収タイミングのずれ、将来の成長領域への投資の加速などにより前年同期比25.5%減となる1524億円になったことなどが報告された。

株式会社デンソー 常務役員 松井靖氏

 得意先別の売上収益では、トヨタグループにおいてはデンソーテンの子会社化や中国での車両生産の増加、日本での予防安全製品の装着率の拡大により前年同期比14.0%増の1兆1952億円となり、トヨタグループ以外では本田技研工業が北米でのディスプレイの拡販や日本での車両生産が増加したこと、FCAは北米での車両生産が増加したことなどにより、8.3%増となる1兆1307億円となった。

 製品別の売上収益では、アジアや日本での車両生産の増加によりパワートレーンシステム製品が前年同期比5.0%増となる6347億円となり、日本で予防安全製品の装着率が拡大していること、北米でのディスプレイ製品の拡販によりモビリティシステム製品が前年同期比50.1%増となる4096億円となった。加えて、松井氏は「2017年4月のTDモバイルと11月のデンソーテンの子会社化に伴い、電子システム製品や非車載事業などの売上も大きく増加した」と紹介した。

 営業利益の増減要因では、CASEに対応するための開発費の投入強化に加え、世界各地での生産体制の増強といった将来への成長領域に向けた投資、前期の一過性の収益がなくなった影響、2017年度との収益(費用)発生タイミングがずれたことによる影響などでの減収が大きく、生産の増加や拡販により前年を上まわる操業度差益となったことや、コストダウンなどによる増収では取り戻せなかったことが説明された。

 地域別のセグメント情報では、日本以外では車両生産の増加や拡販によりすべての地域で増収。利益については車両生産の増加や生産制度の向上、合理化が進んでいることにより、欧州およびアジアでは増益となった。松井氏は「当社にとって利益率の高いアジアが大きく伸びており、北米については合理化努力があるものの、ADASや生産能力の増強の投資をしているため、今回は減益となった」と各地域の状況について述べた。

2019年3月期 第2四半期 決算のポイント
2019年3月期 第2四半期 連結決算
2019年3月期 第2四半期 売上収益(得意先別)
2019年3月期 第2四半期 売上収益(製品別)
2019年3月期 第2四半期 営業利益増減要因(前年比)
2019年3月期 第2四半期 所在地別セグメント情報(前年比)

 通期予想では、第2四半期決算の業績と為替の実績などを踏まえて、売上収益については5兆4000億円で前回の予想から変わらずとしたものの、営業利益は30億(0.8%)増の3930億円、税引前利益は30億(0.7%)増の4300億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は20億円(0.7%)増の3050億円と、それぞれ上方修正とした。

 これについて松井氏は「将来の成長に向けた投資の加速などによって経費、償却費、労務費の増加や、為替の影響などによるマイナス1015億円がありますが、操業度差益や合理化努力などにより818億円がプラスとなります。今回は上期に期ずれがあって335億円のマイナスが出ていたその他の要因をすべて潰し込んで、年間では全体でほぼゼロまで持ってきているということを評価していただきたいと思います。外からの要因はすべて吸収して、稼ぐ力は付いていると思います」と期待感を示した。

2019年3月期 通期予想
2019年3月期通期予想 営業利益増減要因(前年比)
株主還元

“生きるか死ぬかの待ったなしの状況”でスピード感のある開発を行なうには、各方面との連携が重要に

株式会社デンソー 取締役社長 有馬浩二氏

 続けて、デンソー 取締役社長 有馬浩二氏が今後の目標達成に向けた取り組みについて説明。

 冒頭で2017年秋に策定したデンソーグループ 2030年長期方針に付いて触れ、長期方針に込めた想いを実現するべく、より具体的な実行計画として2021年中期方針を策定したと述べ、成長に向けた取り組みをしていることをアピール。

 また、「自動車業界は、自動運転や電動化、コネクテッドという100年に1度の大変革時代のまっただ中にあります。取り巻く環境はすさまじいスピードで変化しており、“勝つか負けるか”ではなく“生きるか死ぬか”という待ったなしの状況にあります」と話し、「トヨタグループのサプライヤーで能力を結集し、新たな1歩を踏み出す決断をいたしました。各社の強みやノウハウを持ち寄り、新たなものを作ろうという取り組みでございます」と、トヨタグループ内での連携を強化していることを強調。

 その具体的な取り組みとして、アイシン精機と共同で電動化のための駆動モジュールの開発・販売を行なう合弁会社や、アイシン精機、アドヴィックス、ジェイテクトと共同で人の命を守るために走る、曲がる、止まるに関わるセンサーやステアリング、ブレーキを高度に組み合わせて判断する、信頼性の高い統合ECUソフト開発を行なう合弁会社の設立を2019年3月に予定していると紹介した。

デンソーグループ 2030年長期方針
デンソーグループ 2021年中期方針
共感 -トヨタグループ連携強化-
共感 -トヨタグループ連携強化 電動化-
共感 -トヨタグループ連携強化 自動運転-

 その他にも、環境分野の取り組みとして、今後も内燃機関のニーズが継続するであろうことから、内燃機関の高効率化、クリーン化が必要になること、多様化するパワートレーンに対応するインバーターのコア部品を共有化することに取り組み、パワートレーンシステムにおいては2016年度比で約1.2倍、エレクトリフィケーションシステムにおいては2016年度比で約2倍の成長をしていくと今後の展開を示した。

「環境」分野 -環境認識-
「環境」分野 -取り組みの重点-
「環境」分野 -共通化による開発効率向上-
パワートレーンシステムと、エレクトリフィケーションシステムの今後の成長

 安心分野の取り組みでは、運転支援システムや予防安全システムの開発に力を入れ、「安全性や利便性を向上させていく」と紹介。車両システムで価値を提供する組織の立ち上げを行なったことを述べるとともに「システムの開発にあたっては、すべてを自社で開発するのではなく、先端技術を持つ多くの会社とのパートナーシップを通じ、スピード感のある開発を行なっていく」と、自動車業界の急激な変化に対応しながら開発を行なうことを強調した。

「安心」分野 -環境認識-
「安心」分野 先進安全・自動運転 -取り組みの重点-
「安心」分野 -技術獲得の取り組み:実証による課題抽出-

 さらに、さまざまな環境に対応できる自動運転の実証実験として、網走で行なった公道走行テストについて紹介した後、同日に発表した東京での先進モビリティシステムの開発と実証を行なうことができる、テスト路を備えたモビリティシステムの開発棟とオフィスを2020年6月に羽田空港跡地第1ゾーンに開設することと、サステナビリティへの取り組みについて紹介して、説明を終えた。

デンソーの自動運転車両公道走行テスト
「安心」分野 次世代モビリティ社会の実現に向けて
テスト路、開発棟、オフィスのイメージ
サステナビリティへの取り組み
参考資料:前提となる為替レート/車両生産台数
参考資料:得意先別売上
参考資料:製品別売上
参考資料:所在地別セグメント情報
参考資料:設備投資・償却費・研究開発費の推移
参考資料:地域別 設備投資/償却費、研究開発費